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YOASOBI「アイドル」考察

生きていくために、誰もが神を必要とする。
これは、宗教に限った話ではない。
無条件に信じ、愛する、そういう存在を持たなければ人は生きていくことができない、と思った。

YOASOBIの新曲「アイドル」は、アニメ「推しの子」の主題歌だ。まるで良質なミュージカルのようだ。
YOASOBIの楽曲は、小説など、何かの作品を下敷きにしたものが多いらしく、物語のエッセンスを歌詞に昇華するのが、天才的に上手なんだなと感じた。

もともとは、YouTuberの岡田斗司夫さんがアニメの「推しの子」を褒めていたので、それを4話全部観たのがこの曲を知ったきっかけだ。

アニメも漫画も素晴らしかった。
アイドルグループ「B小町」の絶対的エース、アイが、アイドルとしてファンに完璧な嘘をつく、というのが作品の底を流れるテーマだ。

「アイドルは偶像だよ?
嘘という魔法で輝く生き物
嘘は、とびきりの愛なんだよ?」

「推し活」は楽しい。
私ももう30年ほどスピッツを愛してるし、
アーティストは、ファンにとって神だ、という感覚はよくわかる。ひたすら尊く、崇高な存在。

アイドルは、ファンにとって、神様なんだ、と感じた。だから、好きな人が作る世界観なら、それがフィクションでも嘘でも、
ファンにとってはそれは真実だし、尊いし、命をかける価値があるはずだと感じた。

YOASOBIの「アイドル」の歌詞
「愛してるって嘘で積むキャリア
これこそ私なりの愛だ」
「等身大でみんなのことちゃんと愛したいから
今日も嘘をつくの」という逆説のリアリティ

歌詞には、上記のようなアイドル本人の想いも描かれているが、同時にエース以外の他のメンバーの想いとが交錯している部分があり、
愛と、尊敬と、嫉妬と憎しみと、表裏一体になっている複雑な心理を、歌い手のikuraさんがとても上手く演技し、表現しているなと感じた。

「はいはいあの子は特別です
我々はハナからおまけです
お星様の引き立て役Bです
全てがあの子のおかげな訳ない
洒落臭い
妬み嫉妬なんてないわけがない
これはネタじゃないからこそ許せない
完璧じゃない君じゃ許せない
自分を許せない
誰よりも強い君以外は認めない」

全体の明るい、元気で可愛い、真摯な曲調の中でのこのダークな闇がよく効いている(病み始めてから韻が「い」に変化している)
嫉妬しているのか、好きすぎて狂っているのか
最初の白けたようなどうでもいいような感じから
クッと急に闇を感じさせる表現
それが少しずつ執着心となって暴れ出す心理が
本当によく歌い分けられているなぁと
Ayaseさんとikuraさんの才能がぶつかり合ってできたら奇跡の名曲だな、と思いました。