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小学6年生の時、学年の3分の1が万引きしていた

僕の在籍していた小学校はとても荒れていた。正しく言うと、僕らの学年だけが荒れていた。

まず授業というものが成り立たなくなるほど、みんな教室をウロウロとし始める。
丸められた紙などが教室を飛び回り、そこから喧嘩が勃発するなんて事も日常茶飯事だ。
もしくはマンガを読み始めるといった、まさしく不良生徒を絵に描いたような空間があった。

唯一可愛げがあるのはその読んでいるマンガがコロコロコミックスのマンガなことくらい。

そのため、常に教室には2〜3人の先生がおり、それでなんとか授業が成り立つといった状況になった。

ちなみに授業中の僕は中学受験が控えていたため塾の勉強をひたすらにしていて、先生も環境が環境だったので応援をしてくれていた。

トイレットペーパーをライターで燃やしボヤ騒ぎになりかけたなんて事件もあったり、男子がテープでグルグル巻きにされ裸にされるようなこともあった。

僕も何度か男3人とギャル1人にズボンを脱がされそうになったことがある。
ウザすぎたので本気で顔面を殴ったら、僕のことは諦めるようになった。

とりあえずそんなヤンチャな学年だった。

そんな学年で起きた大きな出来事の一つが、集団万引きの発覚だ。

お年寄りの夫婦が営む、THE下町の駄菓子屋での出来事だった。

正直この駄菓子屋での万引きは有名な話だった。

実際に誰がしているか全員ではないが把握していたし、やり口まで知っていた。

小学生で万引きの現場が駄菓子屋と聞けば可愛げがあるかもしれないが、その行為は非常に巧妙でタチが悪かった。

その駄菓子屋は夫婦でお店を切り盛りしているが、お店に立つのはいつもどちらかだけだった。

なので、1人がお店の人と会話や会計をしている間にもう1人が実行に移す、もしくはお店の人が少し目を離して何かを取りに行っている間に実行に移すといった悪知恵を働かせて犯行に及んでいた。

所詮それでも小学生、口が軽く自慢げに話すアホがいる。

「そのお菓子どうしたん?」
「盗んできた」
と平気で話してきた。

だから、誰が万引きをしているとかの情報は普通に本人経由で入って来た。
小学生は基本的に財布を持って外に出ないので、大体変なところからお菓子が出てくれば「コイツやってんな」とその当時の僕は思っていた。

だが、それを毎日殴り合いが起きるような学校で報告するというのは、自身のことを考えればできる行動ではなかったし、自分が悪道に手を染めなければいいとだけ考え他人事にように日々を過ごした。

万引きをする人の数は、赤信号みんなで渡れば怖くないとばかりに増えていった。

今思えば、小学生の時はかくれんぼやケイドロのような「見つかるかもしれない!」「捕まるかもしれない!」みたいなスリルを少し感じる遊びが多かった気がする。
そのスリルが間違った方向へ向かった先が万引きという犯罪だったのかもしれない。

そしてある日どこかから情報が漏れ、校長や教頭といった小学校界の大御所たちが教室に集い、駄菓子屋で万引きが多発しているというプリントが配られる。
荒れていたクラスとは思えないほど静かに、殺伐とした空気を僕は全身で感じた。

(流石にこれはヤバいな)
と万引きに関与していない僕ですら思ったのだから当事者からすれば相当焦っただろう。

犯人探しをするわけでなく、あくまで自首を促すように、怒りと悲しみを込め校長先生が話す。

その言葉が届いたのか僕の知る限り万引きをしていたほとんどの人が素直に自首し、親と共に謝りに行くという事で事態は落ち着いた。

その駄菓子屋さんも優しく、笑顔で許してくれたらしい。
もしかしたら万引きを知りながらも見過ごしてくれてたのかもしれない。

その騒動があった次の日、クラスに丸刈り小僧が激増した。
僕と仲の良かった比較的ロン毛だった友達も泣きながら坊主で登校していた。
その友達を見て爆笑してしまったような気がする。
まあ、自業自得ではある。

彼らとは僕が引っ越してしまったこともあり小学校卒業以来会っていない。
10年と少しの時を経て彼らはどんな大人になったのだろう。
同じような過ちを起こしてなければいいなと今でも思う。

卒業後、僕らの世代は悪い意味で伝説の世代と呼ばれるようになったらしい。

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