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スコッチウイスキーの「グレン~なんちゃら~」

「グレン」と聞いたら、何のウイスキーを思い浮かべますか?
グレンフィディック?グレンリベット?グレンモーレンジィ?それともグレンファークラスでしょうか?

日本人が思い浮かべる「グレン」がつくウイスキーはスコッチウイスキーを想像する人が大多数でしょう。
スコットランドには「グレン」と名前のつく蒸溜所がたくさんあります。

「グレン」とはスコットランドのゲール語で「谷」「峡谷」の意味で、ウイスキー製造には清らかな水が必要ですから、川が流れる「谷=グレン」またはそこを水源とする地に蒸溜所が建設され、名付けられたことは実に自然な流れです。
スコットランドには、谷や山が非常に多く、その傍を流れる河川の近くに多くの蒸溜所が建てられていることから、ウイスキー名にグレンを冠したブランドが多い一因ともなっています。
つまり、スコットランド元来の言語であるゲール語で、蒸溜所近くのスコットランドの自然を表現すると、「グレン〜」と成立しやすかったため、グレンが多いと考えられます。
蒸溜所の名前は、スコットランドの美しい風景と豊かな自然の恵みを伝えているのです。

今回はその「グレン~」ブランドのシングルモルトスコッチウイスキー10種を簡潔に紹介&テイスティングしていきたいと思います。

【銘柄:度数】
グレンモーレンジィ・オリジナル(10年)
「GLENMORANGIE」
Alc.40度
【地域:蒸溜所名】
ハイランド地方「グレンモーレンジィ蒸溜所」
ゲール語で「大いなる静寂の谷」
【香り】
マンダリン、レモン、リンゴ、洋梨、ピーチの木で囲まれたイタリア の庭。バニラ・アイスクリームの香り、ゼラニウムとワイルドミントのハーブのアロマ。
【味わい】
クリーミーなバニラが舌を滑り、口の中でピーチとクリーム、マンダリンとレモンが溌剌と感じられる。
ウイキョウとナツメグの アロマ・エッセンスに続き、蜂蜜でやさしくなでるようにネクターの味わいが現れる。
クリーンでピーチのほのかな甘みとオレンジの酸味が余韻として残る。
【特記事項:特徴】
グレンモーレンジィ蒸溜所では元々、ジンの蒸溜に使われていた高さ5.14mの首の長いポットスチルを使用しているのが特徴です。
アルコールを含んだ蒸気が、ポットスチルのロングネックを通過することでフローラルな香りになるのがポイントで、同様の設計を施したポットスチルを複数使用して蒸溜することで、より独自性の強い原酒が蒸溜されます。
オーク樽で熟成したあと、マディラワインやシェリー酒を保存していた樽などで追加熟成することで、豊潤な香りをもつフルーティーな風味を生み出す工夫がされていることがブランドの特徴です。

【銘柄:度数】
グレンカダム10年
「GLENCADAM」
Alc.46度
【地域:蒸溜所名】
ハイランド地方「グレンカダム蒸溜所」
ゲール語で「灰色雁(ガチョウ)の谷」
【香り】
香り強く草っぽく、フレッシュでスパイシーな樽のトーンとレモン香。
鼻から少しぶどうっぽさのある青みがかった香り麦芽のクリーミィな香りとレモンや少し緑を感じさせる爽やかな香りが特徴。
【味わい】 「大麦のクリーム」と呼ばれるように、まろやかでエレガントなモルトのクリスピィな味わいとともに甘さとソフトな樽の味わいが絶妙。
軽めのレモンと薄手のマンダリン、アルコールの刺激と麦の素直なコク、ビターチョコレートや焦げの混じるカラメルソースを思わせる樽香を感じることが出来る。
【特記事項:特徴】
ブレンデッドウイスキー『バランタイン』を構成する7つの主要モルト「バランタイン、魔法の7柱」の一つとして有名で「大麦のクリーム」の異名を持っています。
グレンカダムは小規模蒸溜所でポットスチルも最小限の合計2基のみで生産を行い、あらゆる工程においてコンピュータ制御を行わず、今でも古典的な手作業でウイスキーを造っています。
蒸溜工程で特徴的なのが、再溜釜の方が若干大きいことで、大体の蒸溜所が初溜釜の方が大きいですが、グレンカダムはその逆となっています。
日本では宮城峡蒸溜所の蒸溜機と同じ上向きラインアームでアルコール度数約68%まで蒸溜されたニュースピリッツは主にバーボン樽で熟成されます。(ノンカラーリング,アンチルフィルターでボトリング)

【銘柄:度数】
グレングラント10年
「GLEN GRANT」
Alc.40度
【地域:蒸溜所名】
スペイサイド地方「グレングラント蒸溜所」
この蒸溜所名は創業者の名字なので、
ゲール語の谷+創業者の名字(グラントの谷)となる。 
【香り】紅茶や柑橘類、りんごを想わせる爽やかでフルーティな香りが特徴的。
樽の木の香りや新鮮な青リンゴ、そしてハーブのような香りも感じられます。

【味わい】飲み口はかなりライトで、最初に爽やかな香りと甘さが主体きて、その後から酸味がパーっと広がり、森のような木の爽やかさが鼻から抜けていく爽快感もあります。
酸味の後にスパイシー感もあり、カラメルのような苦味も微かに感じられ、はちみつの甘い香りが後を追います。
樽の香りとほのかな苦味、後に残るアルコール感がとても暖かく感じられ、その味わいは先にビターが乗って、甘さが後を追う印象。

【特記事項:特徴】
グレングラント蒸溜所ではモルトを乾燥させる工程で、ピートを使っていないことと、背が高くて細長い独自性の強い個性的な形状の蒸溜機を用いていることが特徴的です。
他に類を見ない独特な形状の蒸溜機から生み出された原酒は、ノンピート麦芽のクセの無さを最大限に引き出し、ライトでクリーンな酒質となります。
スペイサイドでは製造からボトリングまで全ての工程を行う唯一の蒸溜所で、かつてはシーバスブラザーズ社が所有し、シーバスリーガルの構成原酒の一つにも使用されていたこともあります。
2005年からイタリアのカンパリグループが保有し、イタリアで圧倒的人気を誇り「シングルモルトと言えばグレングラント」と言われるほどです。

【銘柄:度数】
グレンスコシア10年
「GLEN SCOTIA」
Alc.40度
【地域:蒸溜所名】
キャンベルタウン地方「グレンスコシア蒸溜所」
ゲール語で「スコット族の谷」
【香り】チーズやバターなど乳製品のニュアンスにココナッツ、メンソールやスパイス感もありオレンジやマンゴーの香味。
【味わい】乳製品っぽいフレーバーが強めで、ココナッツクリームやバター、オレンジと微かにマンゴーとチーズ、メンソールや白コショウと塩味のビターさを感じる。
甘さは控えめでドライかつスパイシーさが際立ち、ライトボディで余韻はクリーミィな甘みやメンソールのような清涼感とスパイシーさが続く、個性的な味わいの中にもフルーティさも一定数感じることが出来ます。
【特記事項:特徴】
2021年9月21日(火)から新発売の新定番品で、手軽に試せるキャンベルタウンモルトというのが、この「グレンスコシア10年」です。
ノンピートモルト原酒を1stフィルのバーボン樽で10年間熟成し、潮の香りとふくよかさが特徴である伝統的なキャンベルタウンモルトの特徴を随所に感じられます。
2014年にロッホローモンドグループが所有して以降は精力的なリリースが続いていますが、ポットスチルは初溜と再溜の2基のみで稼働しているため、生産総量はそこまで多くありません。

【銘柄:度数】
グレンアラヒー11年[ポートウッドフィニッシュ]
「GLEN ALLACHIE」
Alc.48度
【地域:蒸溜所名】
スペイサイド地方「グレンアラヒー蒸溜所」
ゲール語で「石の多い谷」
【香り】
香りは赤く熟した果実と甘いスパイス、ダークチョコレート、華やかなバラのアロマ。
【味わい】
味はプラム、ダムゾン(西洋スモモ)、ストロベリーといったポートワイン由来のフルーツにローズヒップ、ダークチョコレート
【特記事項:特徴】
[ポートウッドフィニッシュ]はバーボンバレルで熟成後、ルビーポートワインの樽で追熟した11年熟成ウイスキーです。
2017年、ペルノ・リカールが傘下のグレンアラヒー蒸溜所を余剰資産として売却し、ベンリアック、グレンドロナック、グレングラッサで成功を収めてきたシングルモルト界の伝説的仕掛け人ビリー・ウォーカー氏が「グレンアラヒー」ブランドを引き継ぐ形で独立を果たしました。
グレンアラヒーの習わしとなっている140時間余りに及ぶ長時間発酵は、酒質にボディとフローラルな特徴を持たせ、それがブランドの特徴にも繋がっています。
幅の広い4基のポットスチルは2つのペアに分けて稼働させることが出来、それぞれのペアに異なるスタイルで同時に蒸溜するスタイルが採用され、それら構成する工程の全てがブランドの味わいを創出しています。

【銘柄:度数】
グレンキンチー12年
「GLENKINCHIE」
Alc.43度
【地域:蒸溜所名】
ローランド地方「グレンキンチー蒸溜所」
ゲール語で「キンチー川がある谷」
【香り】
若草のように爽やかでフレッシュ。
その奥には繊細で複雑なフルーツ&ハーブ香がぎっしりと詰まっています。徐々にホワイトチョコ、柔らかなバニラのアロマ。
【味わい】
バニラやチョコの甘み、焼いたアーモンドや軽く焼いたトーストの香ばしさ、うっすらブドウや干し草、ローズマリーのハーブ感。
全体的に軽やかでドライな印象、主張のある甘みとハーブ感を楽しめる複雑な風味
【特記事項:特徴】
シェリー樽をメインにヴァッティングを行い、造られたものが「グレンキンチー12年」です。
ローランドを代表するエジンバラモルトであるグレンチンキー、その最大の特徴は「硬水」を仕込みに使用する点で、スコットランドでも日本と同様にウイスキーの仕込み水は軟水を使用するのが一般的ですが、これに相反するが如くグレンキンチーでは地元で湧き出る硬水が使われています。
ポットスチルはランタンヘッド型で初溜・再溜の合わせて2基しかありませんが各スチルのサイズは桁違いに大きく、特に初溜釜は30963ℓとスコットランド内でも最大級の大きさを誇ります。
グレンキンチーが無名なのは蒸溜所で造られるスピリッツの90%がディンプルやヘイグ、ジョニーウォーカーのブレンデッドスコッチ用原酒に提供されているからです。
結果、シングルモルトとしてのリリースは残りの1割程度に留まり、年間25万本程度の出荷に留まります。

【銘柄:度数】
ザ・グレンリベット12年
「GLEN LIVET」
Alc.40度
【地域:蒸溜所名】
スペイサイド地方「グレンリベット蒸溜所」
ゲール語で「静かなる谷」
【香り】
トロピカルフルーツと花の香りの調和が印象的。
青リンゴ、洋梨、乾燥した芝生、ほのかにスモーキーで南国フルーツの香りと夏の草原を想わせる花の香りも微かに広がり全体的にエレガントな印象。【味わい】
バニラ香とはちみつの甘さを伴い、ライトでフルーティ。
青リンゴやバニラ、蜂蜜の甘さが優しく広がり、湿った木の舌触りはややビター。
芳醇でソフトな風味はバランスが非常に良く、余韻は短いが柔らかく滑らかで、甘さの中にかすかなスモーキーさが味わえる。
【特記事項:特徴】
2022年3月7日よりオリジナルストーリーズ”の第2弾『ザ・グレンリベット12年ライセンスド・ドラム』が数量限定で発売されたばかり。
英国政府公認蒸溜所第一号となって合法的なウイスキー造りの道を切り開いたスコッチの先駆者的ブランド。
グレンリベットではピートを使用せず、スモーキーさを抑え、スペイサイドモルトの特徴でもある華やかな香りが重視されています。
管理に手間は掛かりますが、オレゴン産の松の木を使用した木製の発酵槽を使用し、歴史ある蒸溜機は150年以上同じ形のポットスチルを使用しています。
熟成樽はヨーロピアンオークとアメリカンオークから作られた2種類の樽をメインに使用し、この2種類のオーク樽から産まれる個性と特徴を活かすブレンドが持ち味です。

【銘柄:度数】
グレンファークラス12年
シングルモルト
Alc.43度
【地域:蒸溜所名】
スペイサイド地方「グレンファークラス蒸溜所」
ゲール語で「緑の草原の谷」
【香り】
シェリー由来のイチゴジャムやドライフルーツにプラム、香味は濃厚で芳醇。
一歩下がったピートとスモーキーさが奥から感じられ、フルーティーなシェリー漬けのフルーツを彷彿とさせるフレッシュで豊かな香りを引き立てる。
【味わい】
シェリー樽熟成の特徴がよく表れた、焦がしたカラメルにジャムやドライフルーツの甘み、ビターオレンジの落ち着いた酸味、トロリとした舌ざわりは甘みとスパイシーさが絶妙のバランスを保ち、ドライかつスモーキー。
スパイシーさもあり、余韻はフルーティーだが実に淡麗で一本筋の通った風味立ち。
【特記事項:特徴】
スコットランド最高峰のベンリネス山の中腹に独自の水源を持っていて、良質な湧き水を安定して調達・使用することが出来る環境を保持しています。
蒸溜工程で一貫して拘っているのが、グレンファークラスらしい個性を付与するガスバーナーによる昔ながらの直火炊き蒸溜で、現在もスペイサイド地区最大級の3対6基のボール型直火炊き蒸溜機が稼働中です。
直火炊き蒸溜と並ぶほどブランドの味わいを象徴しているのが、シェリー樽での熟成で、30年以上前から契約するスペインの生産者から、安定して良質なオロロソシェリー樽の供給を受けています。
熟成にはシェリー樽とスパニッシュオーク樽を混合で使用し、特に非常に高価なシェリー樽はフィニッシュ用途のみでの使用は一切行わず、1stフィルから4thフィルまでの樽を使い分けてシェリー樽熟成が続けられ、ブランドの味わいを醸し出しています。

【銘柄:度数】
グレンドロナック12年
「GLENDRONACH」
Alc.43度
【地域:蒸溜所名】
ハイランド地方「グレンドロナック蒸溜所」
ゲール語で「黒いちごの谷」という認識が一般的ですが、
「イバラの多い谷」という意味にも捉えられる為、諸説あります。
【香り】
温かみのあるベリーの香りはまろやかにして複雑。
ハチミツやミルクチョコレートの香り。
【味わい】
口に含むと濃厚なバニラ風味、干しブドウの甘みと酸味が広がる。
ボディはフルボディで厚く、ビターチョコレートのコクと苦み、フルーツ系の甘みと共にウッディーでクローブのようなスパイシーな味わいがフィニッシュに向かい広がっていく。
【特記事項:特徴】
グレンドロナックの原酒は日本人にもお馴染み、ブレンデッドスコッチ「ティーチャーズ」のキーモルトとしても使われています。
創業当時からヨーロピアンオークのシェリー樽で熟成をおこない、辛口のオロロソと甘口のペドロヒメネスを組み合わせ、他の蒸溜所にない味わいを追求しています。
原料は地元ハイランド地方産の大麦を100%使用し、ポットスチルはずんぐりとした形のボールヘッド型で初留2基・再留2基の全4基で稼働。
現在はスチームによる熱源へと切り替えられましたが、2005年までの原酒は日本の余市蒸溜所と同様に石炭直火焚き蒸溜によるもので、スコットランドで最後まで石炭直火焚きを行っていた蒸溜所でもあります。
冷却濾過無し(ノンチルフィルタード)、ノンカラーリングでボトリングしています。
近年では特に台湾での人気が高まり、需要が伸びているようです。

【銘柄:度数】
グレンフィディック12年
「GLEN FIDDICH」
Alc.40度
【地域:蒸溜所名】
スペイサイド地方「グレンフィディック蒸溜所」
ゲール語で「鹿の谷」
【香り】
ピート香は強すぎず、フレッシュで華のある香りです。
洋梨や青りんごといったフルーティーで華やかな香りと、蜂蜜やカスタード、バタースコッチといった甘い香りが両立しています。
【味わい】
アルコールの刺激は少なめで、蜂蜜やカスタードの濃い甘さのあとに、苦味が少し続きます。
果物を凝縮したような味わいがあり、癖のないシルキーな後味でフルーティーさが続き、優しい味わいと程良い余韻も楽しめます。
【特記事項:特徴】
日本では酒屋以外でもよく見かける雄鹿マークの緑瓶が印象的なグレンフィディックは世界中で売られているシングルモルトの総販売量における約3割のシェアを占めているとも言われる程の有名銘柄です。
当然、設備も段違いで、発酵においては10tのマッシュタン2基を24時間フル稼働させ、糖化させた大麦麦芽を深さ約5mある木製の発酵樽24基に入れて、約80時間ほど寝かせて発酵させます。
そしてスコットランド最多を誇る蒸溜機、その保有数は、初溜・再溜併せて28基もの膨大な数を誇ります。
蒸溜機の釜は創業当初と同じ形・サイズの銅製のものを使用して、加熱方法では蒸気と直火蒸溜で造り分けを行い、伝統の品質を守っています。
熟成には徹底管理されたアメリカンオークのバーボン樽、そしてヨーロピアンオークのオロロソ・シェリー樽をメインに使用しています。

他にも「グレンバーギーGLENBURGIE」「グレンエルギンGLEN ELGIN」「グレンキースGLEN KEITH」「グレンマレイGLEN MORAY」「グレンダランGLENDULLAN」「グレントファースGLENTAUCHERS」などなど、色々ありますが、今回はスコッチのシングルモルト「グレン~」を10種飲み比べてみました!