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科学技術閑話 クローン人間 他

ちょっと怖い考えになってしまった。

水星の魔女絡みで似てるからクローンという頭の痛い主張を見かける訳だが、クローンなだけでは「似るが見分けがつかない程ではない」ぞ。並べば確実に違うし、似せて見せるにはそれなりにメイクその他を工夫しなきゃならん。

クローン人間ってDNA情報が同一の人間だって話なんだが、我々は身近に「DNAが全く同じ2人以上の人間」がいる事を忘れている。一卵性双生児や三つ子はクローン同様同一のDNA持ってるんよ。しかも一卵性双生児は一般的に同時期に同じ家の子となり、まぁまぁ現代日本社会では同等に育てられる。同じ飯食って同じ学校に通い、片方だけ飯抜きとか片方だけ折檻されることは先ずあるまい。つまり、ほぼ同一の生活を送る。それでも「似てる」程度で瓜二つで見分けがつかないとゆーことはない。DNAは全く同じなのに!(一卵性じゃなきゃ性別すら異なることもある)

同時期に生まれて同じように育てる。そこまでしても瓜二つにはならない。ましてや環境や境遇が違えば差は大きくなるばかりだ。発生の最初期段階で設計図が同一だからと言って同じには育たんぞ。そっから先は環境が育ちを決める。

多分みんなクローニングの詳細を知らなさ過ぎるのだ。じゃけん、実際のクローニングがどんな感じか、また人工授精やiPS細胞なんかの話をしてみよう。

1.細胞培養
ナマモノをクローニングする際にはまず「細胞培養」が必要になります。植物なんかだと成長点とか言う部分を寒天培地で栄養与えて培養するが、動物だと例えば指先の皮とか培養しても「細胞の機能分化が進んでいるため」皮からは皮にしかならんのだ。髪の毛とかからクローニングするのは「ちょっと前まで」無理だった。
所が、京大の山中伸弥教授が頭おかしい発明したの。それがiPS細胞だ。

動物も受精卵は一つだから、細胞分割の初期には全ての細胞が体の各部に機能分化する機能を持つ。しかしある程度分化していくとこの万能性が失われてしまい、肝細胞から腎臓を作るみたいな事は出来ない。
この「機能分化完了した細胞」から機能分化する前の細胞(多能性幹細胞)を作り出す技術を山中教授は確立したのさ。この人工多能性幹細胞をiPS細胞という。そらまぁノーベル賞も取りますわ。SF技術の実現だもの。

これが出来る前の考証しっかり目のハードSFでは、金持ちが自分の身体の「予備」を作る為にクローン人間作ってたりしたんだけど、人体のクローニングは生命倫理問題により「神に唾する悪行」なので、漏れなく金持ちはアババババと破綻する事になる。しかしiPS細胞後は胃が欲しいなら胃を培養したら良いので生命倫理問題をクリア出来る。人間丸々作るのが禁忌なだけで、別にパーツ単位ならオッケーというのが「現代社会の倫理基準」なのである。なんぞ水星の魔女でもやたらクローニングクローニングと人間丸ごと錬成して脳みそだけ使うみたいな数十年前の感覚の人おるが、iPS細胞で脳だけ培養したらえーんちゃうか、と思わんでも無い。(脳を作るのはまた倫理問題に抵触しそうな気もするが)

で、iPS細胞前の古典的なSFにおけるクローニングでは、仕方ないんで卵細胞いじくり回してDNAが対象と同じ受精卵を作り、人工子宮とか実際テキトーな母体に着床させてヒトとして育てる。

2.試験管ベイビー
現存する医療行為だが、別に試験管で赤ちゃん育てる訳じゃ無いぞ。
試験管ベイビーってのは「体外受精」とゆー奴でして、受精後は基本母胎に戻す。何故かっちゅーと「受精卵を子供まで生育させるシステムとして母胎がかなり効率的なシステムだから」だ。尚現代ではまだ母胎に戻さず赤子にするシステムは無い。代理母とか使えばいいから需要が無いんよな。個人的にはこのシステム出来ると妊娠や出産で女性が難儀しなくて済むからえーんやないかと思わんでも無いが、この世界は未だ中絶の可否を法律でどーすべかとウダウダしてる有様なので、母胎を必要としない出産システムは100年どころでは済まない倫理問題になるであろー

3.急速成長
これ、クローニング関係でセットの様に……むしろこれ込みでクローン人間作成と誤解されてるが

別技術ですからね!

もし今クローン人間作っても、受精後の成長は人間と同じだから「歳の離れた双子」にしかならない。つーか、人間は「老いない技術」は欲しがるけど「ガンガン加齢する技術」欲しがらないでしょ? 仮に身体がデカい……身長170cmの赤子を作ってもだな、歩行訓練時にデカ過ぎるが故に怪我が酷くなる未来しか見えぬ。赤子が転んでもギャン泣きで済むのは身体が小さく軽いからである。身長170cmの受け身も取れない赤さんが後ろに転ぶと最悪死ぬ(南無南無)
身体操作とか情緒などの学習……様々な要因から「まともな人間にするならまともに育てんのが一番だってはっきりわかんだね」と言う事だ。古典的なSFみたいに臓器を取るためだけの「素材」ならこの辺要らないが、それならそれでiPS細胞使う方が効率的だ。この21世紀では「急速成長して成人にする」技術要らんのだわー


その他、アホアホ妄想

アホ1 「脳内データを完全移植したら人格とかもコピー出来る」

そんな話は聞いたことが無い。出来の悪いSFかな? むしろ「意識や自我は何故生まれるのか?」と言うのは近代SFの主要な命題であり、それを前提とするのはかっ飛ばし過ぎるである。高千穂遙風に言うと「SFマインドが足りない」

アホ2 「生体パーツを兵器に組み込む」

なんで脳みそみたいな処理能力の低いデバイスを態々……(困惑)
試しに10万文字ぐらいの小説書いてWordの文章校正かけてみよ。あっと言う間に全文検索して表記揺れやタイポ、助詞の間違いやら何やら直ぐに指摘してくれるぞ? むしろ私は頭にi7入れて使いこなしたい。
脳の秀逸な所は処理能力部分には無いんだよ。ある意味では発想の飛躍や経験からもたらされる「予測、勘、連想」に特徴がある。例えば今あなたに「テキトーに数字一つ言ってみ?」と言うとあなたはテキトーな数字をあげられるが、コンピュータはこれができない。ランダマイズというコマンドはあるが、これもシードという数値入れないと乱数を生成できない(少なくとも私がプログラミング弄ってた30年前ぐらいまでは)
しかも電気流して冷却したら動くCPUとは異なり、生体パーツは生き続ける為の条件がものすごーく多い。水分、血液、細菌防護、温度、栄養、気圧……たまたま我々の持つ人体はそれらを自前で賄えるが、機械でこれなんとかしようとすると「現代技術」ではすごーくサイズがデカくなる。

人工透析機。ちみっちゃい腎臓の機能を代替する為にこんなデカい機器が必要になる。

NHKではないが、人体というのは脅威の小宇宙である。脳みそみたいなめんどくさいもん機械にぶち込むにはそれなりの理由と、卓越し過ぎて頭がおかしくなる程のテクノロジーが必要になるですよ。

アホ3 「脳にデータをアップロード・ダウンロード」

に……人間の脳はパソコンのメモリみたいな構造してなくてね……(しろめ
脳細胞の連結とかで記憶してんですわ。物理的な接続だからパソコンみたいにGHz単位で転送は出来ぬ。そんな都合の良い事が出来るのはテクノロジー舐めてんな感が出るからやめた方がいい。電脳化というギミックが下地に無いと無理なんじゃないかなぁ? SFの中でも独自進化を遂げたサイバーパンクでやろうね?

まぁ、こんな所で。

方針変えて、noteでの収益は我が家の愛犬「ジンくんさん」の牛乳代やオヤツ代にする事にしました! ジンくんさんが太り過ぎない様に節度あるドネートをお願いしたいっ!