お話を作ってみようの巻

発想から作劇まで。

承前


1. チャオチュールのCM見てた。

前にも書いたがほんとチャオチュールはなんか薬物入ってんのと違うかってぐらい食いつきがいい。なんか特別な成分が。

で、作ってる会社が「いなば」な訳だが、イナバと言ったら物置と白兎である。そういや因幡の白兎って皮剥がれた辺りしか知らねーな……と検索した辺りから話は加速する。

2. 有名なのに良く知られていない

世の中不思議なもので、ある程度有名な事件や人物に詳細不明な期間がある……なんて事はよくある話。例えばみんな大好き柳生十兵衛はその経歴の中に「何してたんだか分からない蟄居期間」があり、これを目にした伝奇作家という群狼が目を爛爛と輝かせたのは至極当然の事だった。

この手の空白時間は昔から作家が好き勝手して良いものと決まっている(暴論)


因幡の白兎、話の筋としては「大国主の嫁取り話」の中の一節であり、サメ(ワニ)を騙して島を渡ろうとした白兎がサメに皮を剥がれ、更に大国主の兄弟(八十神)に塩水で洗って風に当たって乾かすといい……なんで感じで騙される割と救いのない話である。大国主はこれに出会って真水で洗って蒲の穂の上をゴロゴロするソリューションをプレゼンしてウサギは元に戻るのだが……

3. この話を作った奴の血中にはパルプが足りない。


こんな仕打ちされたら復讐を誓い、封印してたデザートイーグルなりソーカットオフショットガン持ち出すなりして赤い目玉が怪しく光るシーン書くのは当然の帰結だ。毛が生えて元通りやったーだと? それで話が盛り上がると思ってンのか!

と、ここで私の脳内において化学反応が起きた。因幡の白兎とイナバのチュール。そして獰猛な祖先の血に目覚めたヴォーパルバニーの姿がフュージョンしたのだ。

つまり、こうだ。

因幡の白兎して皮剥がれて大国主に救われたウサギは月の光を浴びながら何者かの声を聞く。それは流した血の中に潜む父祖の声であった。月をバックに急再生する毛皮。顔はキリリと引き締まり、赤い目玉に強い意思の光が宿る。そしてシャキンと伸びる前歯(ヴォーパルウェポン)

因幡の白刃兎(ヴォーパルバニー)である。


ウサギは9里をひと駆けに駆け、惰眠を貪る八十神を急襲する! あのジャバウォックすら屠ると言われたヴォーパルウェポンは一閃で八十神達の息の根を止めて命を肉塊に、肉塊を細切れに、細切れを挽肉じみた何かに変えて、更にその血と共に滑らかな液状の何かへと変えた。

新鮮素材の新鮮さを損なわないように秘密のテクで素早く液状化! だからチュールは美味しいんだワン!

これが「因幡の血油流」の由来であり、それを見届けたいなばの創業者家が伝える「因幡の白兎異聞」である。この話が江戸期に出島のポルトガル人経由で大英帝国に伝わってルイス・キャロルの物語の原型となり、更にそれを孫引きしたモンティパイソン、ウィザードリィを経て現代の我々に認知されるとは。

4. どこが一番美味い800文字か?

さて、プロットが出来たので次は「つかみ」の選定と見せ方をどうするかって話だが……まず800文字書いてから解説するか。後で加筆する。

で、書いた。

 出だしにはインパクトが必要である。唐突な場面転換、バトルシーン、問いかけ、などなど。
 今回はどこぞの小説家のエッセイのようなタイトルとして「皆が知るようで実は知らない因幡の白兎異聞」という体裁を取った。(阿刀田高やぞ)

 まぁ、私自身神道のおうちに生まれながら記紀神話はあまり良く知らないつーか、中学時代に生徒会室に置いてあった本を雑に読んだ程度しか知識はなかったりするのだが、因幡の白兎が大国主の嫁取り話の中のエピソードであるなんてのは今回ググッて初めて知った。そして博覧強記系の私が知らんちゅーことは割と大半の日本人が知らないことであろう。知ってるようで詳しくは知らない。ここを明示するのはかなりインパクト強めではないかなと。

 そして冒頭800文字の中にはググって知り得た細かい話を散りばめた。調べれば白兎が海を渡り猟師に捕まったという話も、大国主が治療を司るなんて話も見つかるだろうし、大国主の嫁取り話も見つかるだろう。しかし因幡の白兎の異聞なるものは見つからない。

それは私の捏造だからである。


物語で上手に嘘をつこうと思うのであれば、肝心な嘘以外は丁寧に真実を描くべきである。片っ端から解像度の低いファンタジーを描いていては読者は「これはお話に過ぎない」と看過されてしまう。史実や傍証を可能な限り踏まえて「私の語っている話は誓ってしんじつなのです」という風体で一滴の「虚構」という毒を飲ませる。これを上手くやった司馬遼太郎は今では「歴史小説家」として認知されている。大嘘つきの伝奇衆の癖に(笑) あいつもまごうことなき大衆小説家でありパルプだかんな!(実際忍者小説書いてるし!)

4. くらえこれがおれのパルプだ!

逆噴射小説大賞はパルプの頭800文字までコンテストなので皆ここに全力を注ぐし、実際ここで読者を惹きつけないと続きを読んでもらえないから「読ませる為に、冒頭にガツンと1発食らわせとく」のは重要である。
が、しかし。プラモも小説も完成させて初めて「ものつくりの全ての工程をやった」ということになり、ケツまで書いて話を閉じる訓練しないと小説書きの地力が育たないのである。ていうか、書き出しはうまく行ってもケツや途中展開でダレるなんてのはモノカキあるあるだし、ちゃんと閉じる訓練として短編や中編(〜2万文字くらい?)書くのは良い修行になる。逆噴射小説大賞はあくまで「物語を書くパルプスリンガーが他者からモノカキと認識してもらうための最初の一里塚であってゴールではない」 

僕らのゴールは物理本でヒットを飛ばし、税務申告でヒイヒイ言ったのに所轄の税務署に踏み込まれて追徴課税される……


これだよ(ドヤ顔) ままれは良くやった。でもその金稼いで申告無しはちょっとNG過ぎねぇか(苦笑)
令和の日本におけるゴールドラッシュ。一山当てるために我々山師は幌馬車隊で西に向かいガンでドンパチするんやで。賞を取った、同人誌出した、ISBNコード付きの商業本出した……違う、

一回1〜2万部刷って即時完売! 発売から1ヶ月で重版3回! 年間10刷! わははかつる! 

これだよ。元税務署員の経理を委託して税務署対策が必要なくらい、来年以降の税金爆上げ対策で稼いだ金を塩漬けにせざるを得ない……ここに至るには必ず物語を完結させねばならぬのだ。

目指せ納税額8桁! 国税局も小説家の卵を側方支援し、税金ガッポリ取れば良いのに……

……という訳で続きを書こう(書いたら追記する)


方針変えて、noteでの収益は我が家の愛犬「ジンくんさん」の牛乳代やオヤツ代にする事にしました! ジンくんさんが太り過ぎない様に節度あるドネートをお願いしたいっ!