18禁ですが。

ちょっと真面目に書くぞ。ネタがネタだけに若い人が真面目に探してしまうと「見つからない話」ではある。

noteのサジェストでこんな記事を見た。

“先ほど挙げた『白い部屋のふたり』や『摩耶の葬列』が少女漫画であったことからも分かるように、百合というのは現在に至るまで少女漫画(少女小説)の中で揉まれてきた文化であると言える。”

で、百合文化を普通に見ていくと少女漫画文脈になるのは仕方ないのだが、この論には1980年代の百合・レズ文脈(つーか、豪速球の18禁エロ)である「エスカレーションシリーズ」が欠けている。

1980年代初頭、初代ガンダムのセイラのシャワーシーンに興奮する連中見て商機を見出した「フェアリーダスト社」はくりいむレモンシリーズという美少女エロアニメビデオで大谷のバックスクリーン直撃級のホームランをかっ飛ばした。そのシリーズ初作が媚・妹・Babyで、血の繋がってない妹(ロリ)とやってしまう兄を演じたのが後にカミーユ・ビダン役をやる飛田展男氏である。(Zガンダムでロザミィが「お兄ちゃん♪」とかやってる真意に気付いた時にワイは戦慄した。本放映時には(お子様だったので)気付かなかったンゴ……)

まぁ、やっぱり血が繋がってない妹(ロザミア)を「昇天」させるワケですが。違った意味で。

で、このシリーズ2作目が、全寮制のミッション系女子校を舞台にした「エスカレーションシリーズ」である。

端的に申し上げて、ロリでレズでSM

先の論で「マリア様が見てる」がその分野の祖であるような書き方されてるが、エスカレーションが1984年9月、マリア様がみてるは1998年4月だから、舞台設定的には一回り以上先行してるし、ガチレズはこっちでやっちまった後なのである。それに当時世間で変態扱いされる要素「ロリ」「レズ」「SM」を網羅した北海道のウニ・イクラ・シャケ丼みたいな豪華三点盛りだから、マリみてでレズってもエスカレーションの劣化版にしかならんかったと思います。むしろエスカレーションがあるからマリみては百合文脈強めになったのではあるまいか。

ロリという文脈は1988〜1989年の宮崎勤事件で大変深刻かつ大々的なバッシングが起こり、禁忌度が爆上げする訳です。そしてここにもう一つの暗部が……

実は1970年前後から活動してたレズビアン活動家に、写真家の清岡純子という人物がいる。聞いて驚け京都の華族、清岡家の裔である。
このおばちゃんが1970年代後半から美少女ヌード写真集売るわけだよ。当時日本のヌード写真の禁忌は「隠毛を出しちゃうこと」であり、隠毛がない「子供の裸」はエロでは無いから規制対象外だったの。(昔のドラマや映画で女児の裸がナチュラルに出てくるのはこの辺の意識の違いによるものだ)
そこを突いて清岡は(伝え聞く所によると)「隠毛がアウトなら陰毛剃ったら良くない?」と現代の尺度で言ったら寧ろアウトというか、球界除名クラスのミラクル作戦を繰り出したらしい。

隠毛はいやらしくないって話が出てきたのが樋口可南子のウォーターフルーツや宮沢りえのサンタフェとかの時期(1991年)だ。幼女の無毛の股間に欲情するって事例が惨劇(宮崎勤事件)に発展してから、エロの規制は急速に変化したんだね。

で、世間から急速にロリが排除されていく中、当然清岡辺りも批判されるのかなーと思いきや……なんと旧華族パゥワーか全く問題にならなかったのだ。ロリとエロとレズの間には1970年代から1990年代にかけて「奇妙としか言えない」不思議の縁があった。ただし、芸術名目だから手出ししにくかった清岡の少女写真集も1987年に警視庁から摘発されて、どんな大家がどれだけ芸術だと言い張っても通らなくなった。宮崎勤の事件はそれ程当時の社会に衝撃を与え、社会を変革してしまったのである。

この様にして、オタ系の男衆の間ではマリア様がみてる系の状況設定が「エスカレーションシリーズ」により事前共有されており、だから故に受け入れられ易かったと私は見る。プリキュアなんかも永井豪のけっこう仮面(月光仮面の正式パロ。月光仮面の原作者に許可取りに行ってる)やキューティーハニーという「戦う女主人公」先行作がある。


以前、オーラバトラーダンバインのOVA版を見た若い子が、くりいむレモンじゃんという名言を吐いていた。

中々に鋭い意見だ。くりいむレモンという時代の徒花は実は今のアニメ界にガッツリ噛んでいる。(特にエンディングテーマなんかはまんま、その……)

上記はWikipediaのくりいむレモン記事内のポップチェイサー担当スタッフ一覧だが……偽名や変名で結構今では名の売れたスタッフが参加している。シン・仮面ライダーの庵野秀明もおる!
(Wikipediaの原文リンク踏むと本人バレしてるという羞恥プレイ……)
うん、エロアニメというブルーオーシャンは実入りがいいので多くのアニメーターとかが参加しており、ある意味ではエロアニメが業界を下支えしてた時期もあるのさ。イクサー1とかゼオライマーなんかもロリコンエロ雑誌に連載されてたエロ漫画原作だし。

クトゥルフが混じるぜよ
エロは要らんかったのでは感が仄かに漂うゼオライマー

1980年代半ばから暫くの間、割とアニメや漫画という媒体内では「くりいむレモンショック」とも言うべきアトモスフィアが存在したのだ。エロが絡むから余り取り上げられない分野であるが、ここを見ないと現代に続くオタ文化は語れない。

ZZに出てくる

1986年のZZにエルピー・プルというロリ強化人間が出て来るが、この名前の由来がレモンピープル(Lemon Peaple)というロリ系漫画雑誌である事は当時のガンダムマニアなら良く知る所だろう。やたらシャワーや入浴シーン入るのはそれで数字取ろうというスケベ根性であろうし(ZZは、その……数字がネ!)、ロリとか「都合の良い女」を嫌悪どころか憎悪してる富野はこの「お色気サービスキャラ」を劇中で誅殺する。つうかTV放映アニメで全裸やるとするとロリにせざるを得ないのである(1986年段階では陰毛出せないから、隠毛がないロリしか裸に出来ない)

富野は自分の人生生きてる複雑な女性が好きなんで、一目惚れとかオタ小僧の求める「都合が良く、言うことを聞く女」を徹底排除する傾向がある。多分ガンダムで一番富野が好む女は……

ハマーン・カーン

であろう。

とりあえず知る限りの「当時のエロ界隈」の話を開陳しておく。実はこの辺の時代のエロに関しては宮崎勤事件により規制や意識が急激に変化したのと、本来文化方面でのアーカイブとなるべき図書館が「悪書追放運動」とかの関係で

文化資産として保存してない

分野なんですわ。エロだからって排除しちゃうと後世の人が文化的な文脈探る際に大変困るのだ。今、まだ当時の人間が生きてる内にちゃんと真面目にデータ集めておかないと、後々真面目な文化研究する際に詰むぞ。今回の水星の魔女文脈における百合文化論でエスカレーションシリーズが欠落しているのも、私の危惧が当たった結果かもしらん。

方針変えて、noteでの収益は我が家の愛犬「ジンくんさん」の牛乳代やオヤツ代にする事にしました! ジンくんさんが太り過ぎない様に節度あるドネートをお願いしたいっ!