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すべての道は課金に通ず。ウイニングイレブンの"進化"から考えるeスポーツの光と影

キレてないっすよ。
いやあんまり人前でキレるタイプではないと思うんだけど、ウイニングイレブンに対してはかなりブチギレている。いや、ブチギレていた、が正解か。

小学校の頃のファミコンに始まり、スーパーファミコン、プレイステーション、2、3、4とかれこれ30年来はテレビゲームをしていることになります。
とはいっても一番やっていたのはおそらく中高時代で大学に入って以降はそこまでゲームゲームした生活はしていませんでした。

それが折しものコロナ禍ですよ。
各種イベントは開催を延期もしくは中止となり、思うように旅行に行くこともできず、友人知人との飲み会なども憚られ、というかお店自体も営業自粛でやっておらず、映画館もレイトショーがない、とあらゆる趣味嗜好を封じられてしまったと言っても過言ではない状況だったので、久方ぶりにゲームを起動してみたわけですよ。
この1~2年はさすがに中高時代のそれとは比べ物にならないけど、結構な時間をテレビゲームに費やしている気がします。

とはいってもやるゲームは基本はサッカーゲームかゾンビを倒すゲームぐらいなのでかなり限られてはいます。
そんな数少ないやるゲームの一つが件のウイニングイレブンなわけですが、

サッカー自体好きということもあり、ウイニングイレブンはかつてシリーズが発表年ではなくナンバリング時代からやっていました(一時FIFAサッカーに浮気したこともあったがそれはまた別のお話)。

まず目を瞠るのが圧倒的なビジュアル。
これはもちろんハード自体の進化もあるんでしょうが実写とも思えるぐらいの自然な表現が多いのは過去作からやってきた者として衝撃でした。
それから全体の操作性も向上している印象です。自分のイメージしたものとほぼ遜色ない動きをしてくれるのは特筆すべき点でしょう。

以上、良い点になります。
これ以降は悪い点の列挙が始まりますので、ゲームの大ファンの方はただちにページを閉じて読むのをおやめください。

ウイニングイレブン2020、21の問題点

ウイイレは2020が一昨年リリースされ、昨年はシーズンアップデートと称してゲームそのもののシステムはほとんど変わっていないのでその両作へのレビューと思ってください。
以降、シリーズの年表記は省略して単にウイイレと記載します。

1. あまりにも不可解過ぎるファール

 このゲームで修正できるのが1点だけしかないとしたら(そんなことでは困るのだが)、とにかくファール判定を見直してほしいと思います。
 ボールに行っているプレーはファールではないのですが、それであっさり笛を吹かれることも多いかと思えば、明らかにファール判定されるような倒され方をしてもノーファールだったりということが頻繁に起こります。というか毎試合必ず起こります。
同じようなことがペナルティーエリア内だとなぜかファールは取られなかったりもして、これはおそらくもし同じようにファール判定してしまうとPKが乱発してしまうのではと恐れているのではないかと邪推できるぐらいにはダブル・スタンダードと言わざるを得ません。
 それから相手を手で引っ張るのはファールになりません(笑)。引っ張るという操作ボタンはないのですが、スルーパスなどで抜け出した際に相手の守備の選手が後ろ側からくるときには明らかに手で引っ張りますが、それはファールになりません。それで倒れるとファールにはなります。
 他にも、ゴールキーパーをフェイントで交わしたあとでキーパーに明らかに倒されているのにノーファール(本来ならばファールでイエローは確実、状況によってはレッドが妥当)だったり、明らかに相手のファールなのに自分と一緒に相手も倒れ込んだ場合はなぜかノーファールという大岡裁きも真っ青の判定も多々あります。
 カードの基準もすごく曖昧で、ゴールキーパーと1対1になってペナルティーエリアで相手DFに真裏からスライディングで倒されてもイエローで済むとか。
 1つの考えられる要因として、選手のスキル「マリーシア」が関係しているのかもしれませんが、それで露骨にファール判定が変わってしまうのはいかがなものか。
 こうした不可解な判定はゲームをプレーする上でストレスになるだけでなく、全国規模で賞金もあるような大会で連発されては大きな問題となるのではないでしょうか?

2. オフサイドの脆弱性

 サッカーでは守備側の選手1人(殆どの場合はゴールキーパー)を除いた最終ラインを超えた位置にいる攻撃選手にボールを出すなど、その選手がプレーに関与するとオフサイドを取られ、守備側のボールとなります。
 このルールがゲーム内のキャラクターは誰も知らないのではないかと疑うレベルで脆弱になっています。
 まずは判定の問題ですが、オフサイドはパスを出した瞬間に受け手となる選手が最終ラインより手前にいるか超えているかというので判断をされるのですが、可視レベルではあきらかにオフサイドなのに取られない場合が多々あります。もちろんゲームなのでボタンを押してから実際にキャラクターが反応するまでミリ秒単位のラグが生じるのは仕方がないでしょうが、あくまでプレーするのは人間なので、その可視レベルの判定をしてもらいたいと思うのです。
 オフサイドを取られたときは試合の中継でもあるようにラインを示してそれがオフサイドであると伝えてくれるのですが、オンサイドの場合はそれがないので、どうしても正しく判定されていない印象を受けます。
 次に、オフサイドトラップの脆弱性です。オプションでコンピューターに自動オフサイドトラップをさせるかどうか選択できますが、これを選んだとしてもほとんど実行してくれている印象がありません。手動でオフサイドトラップを仕掛けることもできるのですが、これも過去作と比較すると全然機能していないレベルです。
 これらの問題とも関連してくるのですが、オフサイドに関連したAIによる選手の動きです。ウイイレではカーソルを合わせている選手以外は基本はAIによって自動的に操作されます。ムービングなどの指示を出したり、戦術の設定で多少はコントロールできますが詳細な動作まではコントロールできないのでAIによるところが大きくなります。ただこのAIの動きがどうもオフサイドというルールをあまり把握していないような感じがします。守備面ではラインを上げてオフサイドを取れるところを逆サイドの選手が全力で戻ってきてオフサイドにならない場面が多々あります。おそらくAIで守備の選手は自動的にカバーリングをするようになっているのかもしれませんが、本来はオフサイドを取れる場面でそれをやられると相手はフリーでゴール前に来ることになりそのまま失点につながってしまいます。攻撃側の選手でも明らかにオフサイドの位置にいるのになかなかラインを下げないでいることもあり、そうなると当然そこにはパスが出せずに攻撃ができなくなります。ひどいときは自陣からのゴールキックやフリーキックのときに、特に相手がオフサイドトラップをしているわけでなくてもオフサイドになるパターンもあります。

3. 必殺パターンの存在

 通称、開幕縦ポンです。キックオフしてすぐに前線に走るフォワードにロングボールを出すというもので、ディフェンスの対応が遅れるとそれだけで攻撃選手とキーパーが1対1になり圧倒的なゴールチャンスが訪れます。100%入るわけではありませんが、相手の攻撃選手の能力が高かったり、こちらのディフェンダーにカーソルを合わせるのが間に合わなかったりするとそれだけで失点になってしまうのは正直いただけないですね。ゲームだからどうしてもそういうパターンが生まれてしまうのは仕方がないのかもしれませんが、たまにやるのならともかく、執拗にこればっかりやってくる相手には辟易してしまいます。そもそも最初のロングボールの精度が高すぎるのと、ロングボールならば本来はディフェンスの対応も間に合うはずなのになぜか相手フォワードに抜け出されてしまうというのが問題で、ここにもAIによる動作が影響しているのかもしれません。
 なお、過去作ではサイドからのセンタリングにヘディングで合わせるというのが非常に強いシュートパターンとしてありました。なのでフォワードにチェコ代表のヤン・コラー(身長2m!)を入れてのパワープレーなんて戦い方もあったのですが、それは実際のサッカーでも見る場面ですしポジションさえ取れれば防げないこともなかったので、そこまで対応が難しい、というか無理というものではありませんでした。本作ではこのパターンの入りやすさは改善(善?)されているようで、フリーでサイドからのセンタリングを上げてもゴールキーパー側に流れたり、全選手を通り超えてファーサイドに流れたりすることが多々あります。対応ってそういうことではないと思う。センターライン付近からの縦ポンは異常に正確なのに、サイドからフリーのセンタリングが精度が低くなるというのも違和感を覚えます。このあたりも「ピンポイントクロス」のスキルの有無などで変わってくるのかもしれませんが・・・。

4. 異常頻度の股抜き、そして人体透過

 股抜きといえば意外性のあるプレーでやられた方はなんとも恥ずかしい、というのが現実のプレーのものなのですが、それが本作では頻繁に起こります。それが流れの中だったり相手がフェイントをかけたりした状況でならまだうなずけるんですが、しっかり相手にマークに行っていて相手のパスやセンタリングをブロックしようというタイミングで、なぜか図ったように股を開いてボールが通るということが頻繁に起こります。そんなに股をパッカパッカ開くなら・・・おっとやめておこう、これは下ネタか・・・。とにかく尋常ではない頻度で発生します。そして股を閉じるというボタンはないので股抜きされたらもう一切防げません。そもそも股抜きが必要なのかも疑問です。もちろん実際のプレーであるから、という言い分はあるでしょうが、こちらしたらしっかりディフェンスについているのにパスを通されてしまうのだからたまったもんじゃありません。ウイイレの世界ではハンドは一切ありません(起こりません)。これも現実のサッカーとは違います。ゲームにする段階でハンドがありだとするとこれが頻発することでゲームとして成り立たなくなってしまう可能性を考えてのことかと思いますが、だったら股抜きも完全になくすか、少なくとも発生頻度を下げてもらいたいと思います。
 股抜きはまだ良い(いや良くないが)。それ以上に不可解なのが人体透過です。しっかりブロックにいって、パスコースも塞いでいるはずなのにパスが通ってしまうという現象が非常に頻繁に起こります。厳密に言えば微妙にラインがずれている可能性もありますが、自分の家のテレビは100インチとかあるわけではないので、それだと普通にブロックしているように見えるパスがなぜか通ってしまうのです。ひどい場合はリプレイ映像でも明らかにブロックしているのにボールが通ってしまう場合もあり、これはもはやバグのレベルでは?と思ってしまいます。このあたりも選手の個人能力に依存する部分があるのかもしれませんが、崩されて失点をした際に、「やられた!」とか「うまい!」と思うことよりも「なんで???」と思うことのほうが圧倒的に多かったです。もちろん、これはゲームだからどうしてもそういうことは起こるんですよ、ということかもしれません、たしかに昔やったスーパーマリオで最後のクッパに体当りして、ちっちゃくなってしまうタイミングは一時的に無敵で相手をすり抜けられるからそれを利用してクッパを倒すということをやっていたので、それと同じと考えるべきかもしれませんが、それならばリアリティーにこだわっているというようなPRは一切やめたほうがよいでしょう。

5. もはや格ゲー?

 ウイイレ2020からあのイニエスタの監修のもとフィネスドリブルという概念が加わり、小幅のドリブルができるようになりました。まあそれはいいんですが、それ以外のテクニック、例えばダブルタッチやルーレット、シャベウ、エラシコなどはコントローラーのLスティックとRスティックを巧みに操作して繰り出すものとなりました。
 自分もキックフェイント(シュートボタンのキャンセルのみで出せる)やトラップスルー(トラップタイミングでR2を押すだけ)などは使いますが、上記のようなプレーはかなり意図的に操作しないと出すことができません。ただ、特にダブルタッチはかなり強力で上手い人でこれを連発してくるとわかっててもなかなか止められなかったりします。
 あくまでもライトゲーマーだと思っている自分からすれば、もはや格ゲーのようにコマンド入力しないとテクニックが出せないというのはいかがなものかと思ってしまいます。eスポーツという言葉が定着しつつあり、あとは裾野を広げていくことが重要だと思うんですが、そういう点ではこれはブレーキとなってしまうのではないかと思います。
 それと同時にサッカーらしさも失われてしまったと思っています。コマンド入力によるテクニックに頼らなくてもキャラクターのトラップの方向(ボールトラップのタイミングで方向キーを入れるだけ)だったり、ドリブル中にストップしてみたりと、通常のキャラクター操作だけでも十分にフェイントのようなことは可能で自分は今もそれを使っていたのですが、コマンド入力優勢になりすぎるとそれも使えなくなってしまうのではないかと心配しています。

6. ソシャゲ化しつづけてルンメニゲー

 myclubというモードでは自分が獲得した選手でチームを作成し、それでオンライン対戦ができるのですが、この選手獲得に必要となるのがmyclubコインというものでオンライン対戦でも報酬としてもらえますが、圧倒的に課金で手に入れるほうが効率が良くなっています。選手の強さはボールで表されており、白玉→銀玉→金玉→黒玉と順に強くなっていくのですが、この黒玉には、ノーマル黒玉、FP・チームセレクション黒玉、そしてIM黒玉とあるのですが、このIM黒玉がいわゆるガチャでいうSSRタイプのキャラクターになっています。IMはアイコニックメモリーの略で、レジェンド選手がもっとも活躍した時期の能力が反映されて作られています。このIMの選手はいずれも強力なのですが、特に強いのが元ドイツ代表のレジェンド、カール・ハインツ・ルンメニゲです。ポジションはフォワードなのですが、とにかくシュートを打ちゃ入る、という印象です。それ以外にもトラップ能力も高く、何故かいつの間にか相手のボールになっていることは多々ありました。それがルンメニゲーとも揶揄される要因で、持っているか持っていないかで戦力に大きな差ができてしまいます。他のIMの選手も軒並み能力は高く、ウイイレのステータスは各能力値とも99が最大なのですが、現役選手などと比べてたとえ数字上ではおなじでも明らかに能力差があるような印象です。オンライン対戦で相手の選手層だけ見て、もう明らかに課金勢かどうかがわかるレベルですし、あらゆる能力がブーストしちゃっているので、上手い下手は関係なく勝敗が決定してしまいます。

7. ウイイレからefootballへ進化するのか?

 ウイニングイレブンという名称はこの2021が最後で、efootball 2022としてローンチされます。細かな違いはこれからですが、大きな点でいうと、まずはマルチプラットフォーム対応ということ。今まではPS4版(PS5版と一緒なのかはわかりません)、パソコン版、スマホ版とそれぞれ別扱いで、違うプラットフォームでの対戦はできなかったのですが、これがefootball 2022では対戦が可能になります。そしてもう1点はソフト本体自身は原則無料になります。ウイイレ2021でもLiteバージョンは無料でしたしスマホ版はそもそも無料でしたが、efootballの方は無料が基本で別バージョンとして有料版もあるという形になっています。これまたソシャゲ化に拍車がかかるような気もしますし、所有選手の違いによるチーム格差がより広がっていく気がします。
 もっとも、昨今のソシャゲと呼ばれるたぐいのもの、特にスマホのゲームの大半は同様の形式で成り立っているようですし、ビジネスモデルとして成立しているのでしょうが、ユーザーの裾野を広げていかなければならないということは根本の部分では同じであるはずで、それはeスポーツの担い手を標榜するのであれば絶対実現しなければならない必要条件でしょう。別に課金ゲームを悪というつもりはありませんし、メーカーサイドもビジネスなのですから金儲けの姿勢については特段意見はありません。ただ、勝ち負けは抜きにしても無課金のユーザーでも楽しめるようなゲームシステムだったりゲーム内のイベントの調整だったりは必要な気がします。

8. 実際にプレイしてみての雑感

 と記事を書いている間にちょうどefootball2022がリリースされましたので、早速ダウンロードして小一時間やってみた感想です。
 まず、ウイイレ2021と比較して良くなっている点は、オフザボールの選手の動きです。前作では思うように動いてくれずこれがかなりのストレスだったのですが、efootball2022ではスムーズに動いてくれる印象です。以上、良くなっている点です。
 対して悪くなっている点は、まず操作性の悪さですね。全般的な選手の動きのスムーズさがあまりありません。これはもちろん自分がまだ操作に慣れていないということもあるでしょうが、それを差し引いても明らかに前作より劣っている印象です。この要因としては、本作がPS5を大前提として作られていることや、あるいはスマホ版も含めたマルチプラットフォーム対応にしたことによる影響かもしれませんが、正直一番劣化してほしくなかった部分が劣化したという気はしています。それからボールをキープする際に体を入れる動きも前作ではスティック操作で体の向きを変えるだけで良かったのが本作ではボタンを押す必要があったり、スルーパスを出すつもりなのになぜかキックフェイントになってしまったりということが頻発しています。これらは慣れれば解消される問題かもしれませんが、現時点では操作性の悪さに拍車をかけるものになっています。
 それ以外の点は、キャラクターのデザインの問題、バグの問題、相変わらずひどいファールの判定などは他のプレーされた方が指摘しているようで、自分としては今のところまで感じてはいませんがこちらは逆にやりこんだら生じてくる問題なのかもしれません。キャラデザインについても明らかに劣化でしょうねえ・・・。
 前作のmyclubモードのようなものがまだ実装されていない(自分が気がついていないだけかもしれませんが)ので、システム上のことはこれからになるでしょうが、基本的なゲームの時点で早くも問題が山積している印象なので、このあたりにどう対応していくかが重要になってきそうですね。とりあえず自分としては現時点では有料版の購入や課金はちょっと考えられない状況ですね。生暖かく見守りたいと思います。

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