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12.不妊で離婚。夫の再婚相手は18歳?な話


私はエリコ。40歳。
昨日離婚届を提出し、12年間連れ添った夫と離婚した。離婚の理由は、私の不妊に起因する様々な出来事。
もちろん今の時代、妻の不妊だけを理由に離婚はできない。だが妻の方も離婚を望めば問題なく離婚成立だ。この5年ほど、不妊治療やそれに対する夫の非協力的な態度、言動に心底疲れてしまった。離婚できて清々したというのが正直な気持ちだ。

私はコーヒーショップの店長をしている。本社を東京に置くチェーンのコーヒーショップで、本格的なドリップコーヒーを提供する人気店だ。
「店長ぉー!離婚したって本当ですか?だったら俺、マジで店長にアタックしちゃおうかな」
軽いノリでそう言ってきたのはチーフスタッフのマサト君だ。
一見軽薄そうな雰囲気だが、ドリップの技術は確かだし、よく気がつく信頼できるスタッフだ。なかなかのイケメンなので女性客の人気もある。
「別に落ち込んでないから気を使わなくて大丈夫よ。それに私、年下は趣味じゃないの」
マサト君は32歳。私の8歳下だ。さすがに恋愛対象として見たことはない。
それでも彼のそんな軽口に、疲れた心が少し癒される。

私が元夫のオサムと結婚したのは、お互いに28歳の時。彼はお店の常連客だった。
お店でやっていた映画とのコラボキャンペーンでベアチケットを当てた彼は、すごく喜んだ。
「映画お好きなんですか?」
そう話しかけようと思った矢先、
「あの…一緒に行ってもらえませんか?この手の映画一緒に行ってくれる友達とかいなくて…」
彼がそう誘ってきたのが仲良くなるきっかけだった。
話してみると映画の好みがピッタリで、それから一緒に映画を見に行くようになり、意気投合して結婚することになった。

結婚したら次は子供?ってなるのが普通だけど、その頃の私はまだ仕事が楽しくて仕方がなかったし、オサムも積極的に子供を望んではいなかったので、35歳くらいまでに子供が持てたらいいなぁくらいにのんびりと構えていた。
私は子供の頃から、なんとなく結婚したら子供が自然にできるのが当たり前と思っていたところがある。
早くに結婚した友人は結婚後すぐに妊娠出産しているし、授かり婚の友人もいる。だから特に意識しなくてもいずれ自分にも子供ができるだろうと考えていたのだ。

ところが結婚して1年経ち2年が過ぎても私が妊娠することはなかった。
そして、避妊せずに1年以上妊娠しなかったら不妊であるということを知ってショックを受けた。
どうしても子供が欲しいというわけではなかったけど、やっぱり気にはなる。
オサムに相談したが、
「どっちでもいいよ。そのうちできるんじゃない?」
と、軽く流されてしまった。
実際私もその時には、あまり深刻に考えてはいなかったのだ。
オサムの実家に行くたび、義両親にチクチクと「早く孫の顔が見たい」的なことは言われたが、さほど気にしていなかった。
私の両親からはその手のことを言われたことがない。もっとも妹が早くに結婚して、すでに孫が3人いるというのも大きかったかもしれない。だから私も気が楽だったのだ。

ただ毎日体温を測り、妊娠しやすい日をカレンダーに印をつけて意識するようになった。ところがオサムはこれが気に食わなかったらしい。
「義務って感じがして萎えるんだよなぁ」
と、ほとんど協力してくれない。
多分わざとだと思うが、その日に酒を飲んで帰ってきたりするのだ。今思えば、この頃から少しずつ不協和音が始まっていたのだと思う。

33歳の時、婦人科検診の際にお医者さんに不妊について相談してみたら、不妊治療をするなら1日も早く始めた方がいいと言われてしまった。
歳をとればとるほど妊娠しづらくなるし、出産リスクも高くなると言われ、ようやくそこで私は真剣に子供を持つことについて考えるようになったのだ。
多分男の33歳と女の33歳では感覚が大きく違うのだろう。オサムにとっては「まだ子供なんていなくても」だったのだろうが、私にとっては、すでにかなり崖っぷちだ。
「不妊治療を始めようと思うんだけど。あなたも協力してよね」
私がそう言った時のオサムの反応は、
「えぇっ?俺やだよ」だった。
「俺は健康だし。妊娠しないのは女のせいだろ」
ひどい言い草だと思う。彼の妊娠出産に関する知識は全くアップデートされていないようだ。しかしこれに関しては私も彼を大きな声で非難はできない。

33歳ともなればお肌の曲がり角はとっくに過ぎている。衰えるのはお肌だけじゃない。卵子も歳をとるのだ。若くて健康な方がリスクも少なく妊娠もしやすいのは当然のことだ。
しかも恐ろしいことに卵子の数というのは生まれた時から決まっていて、決して増えることはない。人によっては生まれつき卵子の数が少なく、30代半ばで排卵がなくなってしまう人もいると知ってさらにショックを受けた。
結婚適齢期なんて女性を馬鹿にしていると思っていたが、理由のないことではなかったのだ。
女性の、いや自分自身の体のこともよく理解していなかったことを反省した。

検査の結果、私に特に異常はなかった。それでも不妊状態が続いているのであれば、夫に原因がある場合も考えられると言われた。夫婦双方に問題はなくとも妊娠に至らないケースもあるらしい。
どちらにしても夫婦で協力して不妊治療に挑まなければいけないのは確かだ。
正月に義実家に行った時、また義両親から「孫の顔が見たい」的なことを言われたので、私はオサムが不妊治療に非協力的であることを訴えた。
もちろん私のほうに特に問題はないということも付け加えて。
義両親はオサムに、エリコさんに協力するようにとは言っていたものの、私は聞いてしまったのだ。義母がオサムにまさかのことを言っているのを。
「不妊治療しないと子供ができないなんて、あなたまだ若いんだから、離婚してもっと若いお嫁さんもらったらいいんじゃないの?」
えっ…子供ができないのは全部私のせいなの?
元々あまりそりの合わない義母であったが、ブルーな気持ちに追い打ちをかけられた気分になった。

オサムはかなり渋っていたが、嫌々ながらも不妊治療に協力することを決め病院へ行った。最初の検査を受けた時だ。
「あんな恥ずかしい思いをしたのは初めてだ!」
と私に文句を言ってきた。恥ずかしいのはこっちも同じだ。彼が真剣に不妊治療に取り組んでいないことがよくわかる。
結果は特に問題なしだった。私は35歳になっていた。
自然妊娠が難しいのではないかということになり、人工授精を試みたが成果がなく、その後体外受精も試みた。
これは精神的にも肉体的にもかなりきつくて、費用もかかる。さらにオサムが、
「こんな実験みたいので子供ができたとしても、自分の子とは思えなさそうだよなー」
とヘラヘラ笑いながら言うので、本当に気持ちがくじけそうになった。
「あなたは精子を提供してるだけでしょう?!私の方が何倍もきついのよ!!」
と怒鳴ってしまったことも何度かあった。
子作りのための治療をしながら、私たち夫婦にはすでに夫婦生活がなくなっていた。
この頃が精神的にも肉体的にも1番きつい時期だった。協力者のはずのオサムの、心ない言葉にもダメージを受けた。
「金ばっかりかかって、またダメだったのかよ」
「やっぱりお前出来損ないなんじゃないの?」
なぜこんなことまで言われなければいけないのだろう?
仮に妊娠したとして、この男の子供を愛して育てていけるだろうか?
ふとそんな思いが頭をよぎり、自問自答してみた。
きっと自分の子は可愛いだろう。けれど、すでに夫に対する愛情はなくなっていた。そんな夫婦のもとに生まれてくる子供が幸せだとは思えなかった。
私は急速に子供を作るということに対する情熱が冷めていくのを感じていた。

結局私が妊娠することはなく、38歳になった。
もう不妊治療はやめる。そう決めてオサムに話した。私にとっては一大決心だ。
オサムの反応は、
「ふーん。まぁいいんじゃないの。かかったお金は戻らないけど。ほんと勿体ないよな」
という他人事のようなものだった。
それからはお互いほとんど顔を合わせず自室にこもるという生活がしばらく続いた。
時折オサムの部屋から楽しげな会話が漏れ聞こえてくる。どうやらライブチャットで女性と会話しているらしいが、嫉妬の気持ちも全く起きなかった。
「離婚」と言う言葉は常に頭の中にあったが、それについて話し合うことさえも面倒臭く、今思えば時間を無駄にしたと思う。

私が40歳の誕生日を迎える少し前、オサムが切り出してきた。
「なぁ。俺たちこれ以上夫婦でいても仕方ないんじゃないか?子供もできないし、一緒にいる意味ないだろう?それにやっぱり俺自分の子供欲しいしさ。お前じゃ無理なのはわかったし」
この時憎悪に近い感情が芽生えたが、寂しいとか悲しいとかは思わなかった。別れることに関しては私もほぼ同じ気持ちだったのだ。
そのため驚くほどスムーズに離婚に至り、2人で暮らしていたマンションを引き払い、私は40歳の誕生日を実家で迎えることになった。
大体の事情を知っている両親は私に優しかった。父は、
「心も体もゆっくり休めるといい」
と言ってくれたし、母は、
「私もね、あなたを産む前に悲しい目にあっているの。産まれてこなかった子がいてね。いつの時代も妊娠と出産は大変なことなのよ」
と、今まで聞いたことのなかった話を打ち明けてくれた。
しんどかった日々を思い出し、両親の慰めに気が緩んで、思わず泣き出してしまった。

離婚届を提出した3日後、もう連絡することもないだろうと思っていた元夫から電話があった。
「離婚届け出してくれた?」
わざわざそんな確認をするために電話をしてきたのだろうかと思っていると、
「俺、若い彼女と結婚するわ。なんと18歳だぜ。2 〜3日中に籍入れるから、離婚届出してないと困るんだよ」
と、思わず「はぁ?!」と叫んでしまうようなことを言うではないか。
私が離婚届を提出して正式に離婚が成立してからまだ数日だ。
男性の場合は離婚後すぐに結婚しても問題はないらしいが、それにしたって離婚後1週間足らずで再婚は早すぎる。
しかも相手は18歳?元夫は私と同じ40歳だ。いくらなんでも歳の差がありすぎではないか?特にお金持ちでもイケメンでもない40歳の中年男になぜ18歳の女子が?そう思うのは不思議じゃないだろう。
頭の中で疑問符が渦巻いて、ろくに返事をしないで電話を切った。
「どうした?何があった?」
私の様子が普通じゃないことに気づいた父が心配そうに聞いてきたので、
「元夫が18歳の女の子と2〜3日中に再婚するって…」
と聞いたままを言うと、父が激怒した。
普段は温和で、めったに声を荒らげることのない父だが、
「なんだそれは!非常識にもほどがある!!」
と、怒りをあらわにした。
離婚して数日で再婚ということは、かなり以前から交際していたということだろう。つまり不倫だ。

私は薄々感じていたことだし、今さら元夫の浮気を追求して争うつもりはなかった。ただどうにも信じられなくて。別に彼が騙されていようが構わないけれど、本当のことを知りたいとは思った。
「本当にねぇ。オサムさんて特にイケメンてわけでもないし、最近はちょっとお腹も出てきて、髪の毛も薄くなってきた普通のおじさんよね?なんでそんな冴えない男と18歳の女の子が結婚することになったのかしら?」
母がしっかり私の気持ちを代弁してくれたのでちょっと笑ってしまった。
「確かにすごく気になるけど、もう別れた人だしどうでもいいわ。勝手に幸せにでも不幸にでもなればいいのよ」
私はそう言ったが、父は納得がいかないようだ。
なんと探偵事務所に調査を依頼し、調べあげてしまったのだ。

「浮気調査ではないんですね?」と探偵事務所では何度も念を押されたそうだ。
別れた元夫が再婚して、その馴れ初めを調べてほしいという依頼は確かに珍しいだろう。心なしか担当の探偵さんは面白がっているようだったと父が言っていた。
「私も調査報告が聞きたいわ。お父さん口ベタだから上手く説明してくれなさそうだし」
という母の希望で、調査終了後、実家にて調査報告会が開かれた。

「えーと。まずですね、これが別れた旦那さんの現在の奥さんです」
居間のテーブルの上に探偵さんが並べた写真を家族3人で覗き込む。
一瞬の沈黙の後、全員が笑い出した。
「嘘でしょう?この人が18歳のわけないじゃない!!」と、母。
「うん。どう見ても30過ぎに見えるな…」と、父。
一体何がどうして元夫はこの女性を18歳などと言っていたのだろう。
家族3人で探偵さんの説明を待つ。
「出会いはネットだったようです。女性のプロフィールに『18歳。結婚願望めちゃあります。年上大好き。優しいおじさまメッセください』とありました。プロフィール画像は相当加工したものですね」
そういう探偵さんの口元も、少し緩んでいる気がする。
こんな怪しいプロフィールに、元夫はまんまとひっかかったということなのだろうか?
「映像チャットでやりとりをしていたようで、信じてしまったのでしょう。今はかなりリアルタイムで映像を盛れますので、まぁほぼ別人レベルです」
確かに自室にこもって楽しそうに会話をしているのが漏れ聞こえていた。その相手がこの女性ということだろうか。

それにしたって現実で対面すればわかることだ。誤魔化すにしても限度がある。私のこの疑問に、探偵さんはまた別の写真を取り出して言った。
「こちらの女性ですね。18歳ではないですが20歳です。実際に会う時はこの女性を身代わりにしたんですね」
確かに髪型や顔立ちは似ているが、明らかに別人だ。そこまで手の込んだことをして、一体何がしたかったのだろう?
「何がしたかったのかと言うと、結婚したかったんですね。この女性本当の年齢は38歳です」
「38歳!!」
私たち家族が同時に声を上げたが、探偵さんは構わずまた別の写真を広げた。
そこにはいかにもガラの悪そうな男たちに囲まれた元夫と新しいお嫁さんが写っていた。元夫は怯えたようなひきつった笑顔だ。
どんどん登場人物が増える展開に、情報量が多すぎて混乱してきた。
「この女性の父親は、下町の小さな組事務所の親分さんです。まぁそんな環境なので、なかなか娘であるこの女性に近づく男性が今までいなかった。交際に発展しても実家の職業を知ると怖がって逃げてしまうんですね。そこで考えたのがネットでの恋人募集というわけです」
「いや、でも若い衆とか同じ職業の人なら問題なく結婚できるのでは?」
と、もっともな疑問を口にする父。
「いくら若い女性を身代わりにしても、実際に結婚するとなったら本人が登場しないわけにはいかないわよね?」
と、これももっともな疑問を投げかける母。
「そうですよね。もっともな疑問です。まずこの女性、同業者とは結婚したくないと昔から言っていたそうです。本当は白衣の似合うお医者さんとかが好きなようですが、それはさすがに難易度が高いので。メガネの似合うサラリーマン風で手を打ったということらしいです」
確かに元夫はサラリーマンでメガネをかけている。

「そしてここからがこの女性の凄いところなんですが、身代わり女性とのデートの際、あらかじめホテルの部屋を予約してそこに潜み、そういう雰囲気になったら明かりを消して入れ替わったそうです。毎回かなり酒を飲ませていたこともあり、元夫さんは全く気がつかなかったようですね」
もうなんだか朗読劇を聞いているような気分になってきた。両親も同じだったようだ。
続きが聞きたくて仕方がないといった顔をしている。もちろん私もだ。
「何度かそういったデートを重ねまして…それでですね…現在彼女妊娠しています」
「はいっ?!」
私は仰天した。あれだけ頑張って不妊治療をしていたのに授かることのなかった子供が、こんな馬鹿げた作戦で授かってしまうのか。
「そうなったらもうこっちのもんです。身代わり女性から、妊娠したから結婚してほしいと言われ、喜んで了承すると本人が登場して、怖いお兄さんたちに取り囲まれ、男として責任を取れと詰め寄られて、元夫さんは怯えながら婚姻届に判を押したというわけです」
こっちのもんって…弁舌冴え渡る探偵さんは、なぜか反社令嬢に感情移入しているようだ。
私に離婚届の提出を確認してきた時には、まだ真実を知らなかったのだろう。子供ができ、18歳の若い女の子と結婚できることになって、有頂天になっていたに違いない。
その後の展開を想像すると、おかしくて仕方がない。父も母も私も、腹を抱えて笑ってしまった。

それにしてもなんて有能な探偵さんなんだろう。ここまで詳細に事情を調べてくれるとは思っていなかった。すると探偵さんは頭を掻きながら、
「いや実は探っていたらこのお嫁さんに気づかれてしまいましてね。元奥さんのご家族がスピード再婚の理由を気にされていると説明したら、快くご本人が詳細を語ってくれまして。おまけに写真まで撮らせてくれて…」
前言撤回!ちっとも有能ではなかった。どおりでカメラ目線のよく撮れた写真だと思った。
「いや実際たいした女性ですよ。度胸が座っていてカンもいい。元夫さんのどこが気にいったのやら…あ。失礼!」
元夫を悪く言われても全く腹は立たないし、この女性に嫉妬も感じなかった。むしろグッジョブと言ってあげたい。
「多分あの怪し過ぎるプロフィールに引っかかった馬鹿な男が、元夫だけだったんじゃないですか?」
私がそう言うと、その場にいた全員が何度もうなずいた。
「いずれにせよ元夫さんは二度と離婚なんかできないでしょうね。ご実家のほうも関わりを持ちたくないみたいで、ほぼ勘当状態のようです。会社のほうにはまだバレていないようですが……これもどうなるかわかりませんね。怖いお嫁さんと怖いお兄さんたちに囲まれて、小さくなって生きていくんでしょう」
今度は探偵さんの言葉にみんながうなずいた。

「こちらももう関わりを持たないことです。万が一元夫さんが泣きついてきても無視したほうがよろしいかと思います」
もちろん探偵さんに言われなくてもそのつもりだ。イヤミのひとつも言ってやりたい気持ちはあるけれど。
そう。例えばこんなふうに。
「結婚おめでとう。奥さん妊娠してるんですって?私との間にはどうしてもできなかったけど、新しい奥さんとはよっぽど相性が良かったのね。さすが若い奥さんは違うわね。お幸せに」
もちろん実行にうつしたりはしないけど。
「楽しい仕事でした」
と言って、あまり有能ではない、饒舌な探偵さんは報酬を受け取り帰っていった。
探偵さんが帰った後、私たち家族はあれこれと元夫と新しいお嫁さんの話題で盛り上がり、そうしているうちに私の気分は随分とスッキリ晴れやかになったのだった。

人生何が起きるかわからない。
元夫だって、こんな展開になるとは思っていなかっただろう。
私がもっと早くから妊活をしていたら。元夫がもっと協力的だったら。もしかしたら違う人生があったかもしれない。
そんなことを考えても仕方がないけれど。

そんなこんなで元夫に笑わせてもらってから半年が経った。
人生何が起きるかわからない。
ある意味、元夫の人生も予想もしない大どんでん返しだったわけだが、私にもまさかのことが起きた。
ちょっと自慢したいので聞いてほしい。

実は私は今妊娠3ヶ月だ。
お相手はお店のチーフスタッフのマサト君。
「マジで店長にアタックしちゃおうかな」
と言っていたのは本気だったらしく、その後何度もアプローチされたのだ。
「ずっと好きだったんですよ。でも俺、結婚してる人とどうこうとかはダメって思ってるんで。でも離婚したなら遠慮はしないですよ」
年下の結構イケメンな男性にそう言われて、心が揺れない女性がいるだろうか。

彼と男女の関係になってすぐ、私は妊娠した。
こんなことってあるのだろうか?あの不妊治療に費やした日々は何だったのか。
よっぽど相性が良かったということなんだろうか。
いやむしろ元夫との相性が最悪だったのかもしれない。
妊娠を告げると、彼も両親もとても喜んでくれた。

出産する頃には、私は41歳になっている。自分の子供を持つことはほとんど諦めていたので戸惑いもある。
初めての出産で高齢出産になるので不安も心配もたくさんある。
でも、彼も両親も、何があってもバックアップすると言ってくれている。
つわりが治まったら、身内だけで小さな結婚パーティーを開く予定だ。

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