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コーチとしての成長

数か月前、デイビッド・クラッターバック氏の講演を聞く機会がありました。
ヨーロピアン・メンタリング&コーチングカウンセルの創設者の一人で
70以上の著書を執筆し、CNNで「ビジネス界のスーパースターを育てる5人のメンター」の一人に選ばれている方です。

「コーチとしての成長」=「人間的成長」

講演のテーマは、「コーチとしての成長」。
コーチとして更なる高みを目指すには、どのように進めばよいのか?という問いをめぐるお話でした。

基本的な知識やスキルを学んだ後のコーチとしての成長は、その個人の人間的成長と相関がある、と彼は語ります。使っている言葉は違っても、普段自分が考えていることと一致する安心感と納得感がありました。

自分自身や周囲の人(世界)を、どうとらえているのか?

クラッターバック氏が主導して過去に実施したグローバルな調査によれば、コーチの能力の高さは、セッション料金の高さや実績時間数の多さとは関連がないとのこと。ちょっと意外でしたが、その先を聞いて合点がいきました。
 
クライアントから評価が高いコーチ達の共通点は、圧倒的な落ち着きと、それを支えるマインドの枠組み。「自分自身や周囲の人(世界)の捉え方」に特徴があるのだそうです。

成熟したコーチに共通する重要な要素は、4つ。

  • クライアントの苦しみと、その人を取り巻くシステム全体に共感する「思いやり」

  • 相手に対する「好奇心」

  • 無防備になる「勇気」

  • 多様な人・社会問題との「つながり」

痛みに共感できる「思いやり」を育てる

上記の4つの要素の中でも「思いやり」を通じた理解力が全ての土台だと、クラッターバック氏は語ります。こうしたコーチの前でなら、クライアントは素直になって、自分の痛みやその痛みの源をよく観察することができるようになるから。
 
そして、コーチ自身が自分の痛みに向き合い、内省を深めていくことが「思いやり」を育てることにつながるのだそうです。「クライアントでも、家族でも、人生で出会う全ての人との関わりの中で、誰かに自分がイライラする体験をしたら、それがコーチとして、人間として成長するきっかけだよ」と、微笑みながらアドバイスをくださいました。
 
相手を許せないという状態は、自分の中で無意識的に押し殺している「存在してはいけない自分」に気づいて、その痛みを通じて、同じ痛みを持つ他者に共感できる、より寛容な人へと人間的に成長していくための入り口。

あなたが、今この人に「思いやり」を持てたら、より一層寛容な自分になれるだろうと思う相手は誰ですか?

自分への「思いやり」

講演の最後に語られたのが、自分に対してもっと思いやりを持つことの大切さでした。

休みなく自分自身を評価している内なる声の不必要な裁きから、自分を守ること。
そして、その苛烈な裁きの声の主をも理解し、許すこと。

このことは、既によく知っているつもりで、もう20年近く実践して、実際に「捉え方」ばかりでなく、リアルに自分も世界も少しずつ変化してきているのですが、つい先日も、知らないうちに深くこの沼にはまっていたことに、新鮮な驚きとともに気づきました。
 
エグゼクティブコーチとしての付加価値を高めるために学んだ、とある360°フィードバックのツールと、それを元にしたリーダーシップ開発に関する講座でのことです。自分自身が受けた360°で、他者評価に比べ自己評価の著しい低さが洗い出されました。「自分劇場」の妄想の甚だしさに恥ずかしくなりました。フィードバックセッションを担当してくださったコーチの、「何が起きているんでしょう?」という問いから始まった支援で、全く無意識化していた「内なる声の不必要な裁き」を可視化でき、そして、それを理解できました。最後に自分で、「もういい加減に自分を許してあげてもいい気がします」と口にしながら、すっと胸が楽になる感覚がありました。
 
私の「自分自身と周囲の人(世界)の捉え方」が、また少しシフトしたように思います。

あなたの「自分自身と周囲の人(世界)の捉え方」は、どんな前提を含んでいますか?
 
今日、この状況にある自分自身に、あなたが示せる優しさは、どのようなものですか?


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