「恐怖」(谷崎潤一郎)

 主人公の独白形式で始まります。主人公は酒と夜ふかしが多く、生活習慣が悪いです。それが原因の1つで「鉄道病」という病気にかかっています。汽車に乗って、発車するとすぐに脈拍が上がり、冷汗をかき、手足が震えて恐怖を感じます。汽車から降りると不思議なくらいすぐに落ち着きます。症状は自動車や劇場でも現れます。今で言う閉所恐怖症のようです。
 恐怖をなんとかしようとして汽車から飛び降りようとしたり、酒で気を紛らわせようとしたりと、とても苦しんでいます。主人公が感じる恐怖はとても大きく、「断頭台へ載せられる死刑囚の気持ち」と表現しています。今から死ぬような気持ちというのは想像がつきません。

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