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「引きこもり」の心理についての考察ー「引きこもり」はなぜ引きこもるのかー

私は、23歳の「引きこもり予備軍」である。バイトをしているため、「引きこもり」の定義からは外れるが、バイトやコンビニへの買い物以外はほとんど外出しない。いわゆる「引きこもり」でない人からすると、「引きこもってないで外に出ろ」、「社会に出て自立しろ」等と思い、「引きこもり」について理解することは難しいのではないだろうか。そこで、「引きこもり予備軍」の立場から「引きこもり」の心理について内省し、「引きこもり」はなぜ引きこもるのかについて考察していきたい。

まず、「引きこもり」の実態について確認したい。今回は内閣府の実態調査を参照する。

内閣府では、これまで、平成21(2009)年度と平成27(2015)年度に、満15歳から満39歳までの者を対象にひきこもりの実態調査を実施してきているが、両調査の結果を比較したところ、ひきこもりの状態となってから7年以上経つ者の割合が増加しており、ひきこもりの長期化傾向がうかがわれた。

内閣府は、調査対象となる「引きこもり」の定義として、「ふだんどのくらい外出しますか。」との問いについて、下記の①~④に当てはまる者であって、「現在の状態となってどのくらい経ちますか。」との問いについて、6か月以上と回答した者を「引きこもり」とした。

①趣味の用事のときだけ外出する

②近所のコンビニなどには出かける

③自室からは出るが、家からは出ない

④自室からほとんど出ない

ただし、次のア~ウのいずれかに該当する者は、ひきこもりには該当しないとして除いている。

ア 自営業・自由業を含め、現在、何らかの仕事をしていると回答した者

イ 身体的な病気がきっかけで現在の状態になったと回答した者

ウ 現在の状況を専業主婦・主夫、家事手伝いと回答したか、現在の状態になったきっかけを妊娠、介護・看護、出産・育児と回答した者のうち、最近6か月間に家族以外の人とよく会話した・ときどき会話したと回答した者

この定義に基づいて、平成30年に「引きこもり」について調査したところ、結果は以下の通りになった。

広義のひきこもり群の出現率は1.45%であり、推計数は61.3万人であった。平成27年度調査の結果と比較すると、出現率は低いが推計数は多かった。
広義のひきこもり群の男女比率は、「男性」が76.6%、「女性」が23.4%であり、「男性」の割合が平成27年度調査の結果よりも高かった。
広義のひきこもり群の者が初めてひきこもりの状態になった年齢は、30歳代の者の割合が若干低かったものの、15歳から24歳までの者の割合が6割を超えていた平成27年度調査の結果とは異なり、全年齢層に大きな偏りなく分布していた。
広義のひきこもり群の者がひきこもりの状態になったきっかけは、「不登校」と「職場になじめなかった」が最も多かった平成27年度調査の結果とは異なり、多かった順に、「退職したこと」、「人間関係がうまくいかなかったこと」、「病気」、「職場になじめなかったこと」であった。

これらの結果を踏まえると、引きこもりは男性に多く、最近は全年齢に数多く分布しており、社会から離脱した者が引きこもりになる傾向があることが分かる。

さて、本題に入る。「引きこもり」はなぜ引きこもるのか。私は「引きこもり」の深層心理に「胎内回帰願望」が強く存在しているからではないかと考える。つまり、「胎児の頃に戻りたい」という願望である。実は「胎内回帰願望」は誰でも無意識的・本能的に持っているものであり、「引きこもり」だけにあるものではない。ただ、「引きこもり」の場合は、この「胎内回帰願望」が通常よりも強く深層心理に存在しているのではないだろうか。

「引きこもり」にとって、「家あるいは自室」は他者が干渉できない絶対的な空間である。この場合、「家あるいは自室」は「母体」のメタファーとなり、その空間にいることに安心感を覚える。逆に家族などの他者がその空間に侵入すると強い不安感を覚えるのだ。

また、「引きこもり」は精神的に自立できず、「社会に出たくない」、「大人になりたくない」等の思考を特徴とするピーターパン症候群に陥っている場合が多い。ピーターパン症候群はアメリカの心理学者のダン・カイリーが提唱したものであり、大人という年齢に達しているが精神的に大人になれない男性を指す言葉である。これは、「引きこもり」に男性が多いという傾向とも一致する。また、「引きこもり」が精神的に自立できていないのは、深層心理にある「胎内回帰願望」により、食事を含むライフラインを家族などの他者に依存してしまっていることも要因として考えられる。

加えて、内閣府の調査により、最近の「引きこもり」になる理由の傾向は「退職したこと」、「人間関係がうまくいかなかったこと」、「病気」、「職場になじめなかったこと」であることや、全年齢層に「引きこもり」が分布していることが明らかになっている。これは、誰もが「胎内回帰願望」を持っており、誰もが「引きこもり」になりうることの証左ではないだろうか。

この記事を読んでいる方の中には、既に「引きこもり」である方、「引きこもり」ではない方など様々だろうが、インターネットの普及により「家あるいは自室」にいる状態でも他者とコミュニケーションできるようになった現代において、「引きこもり」はますます増加していくと思われる。現代社会が「胎内回帰願望」という人間の性と、どのように向き合っていくかが、今後の「引きこもり」問題を左右するのではないだろうか。


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