【読書感想文】コロナ禍のシルバー川柳は一味違った (928字)
シルバー川柳のシリーズは大好きで、ときどき図書館で借りて読んでいます。本当に可笑しい句も多くて、読みながら大笑いすることがあります。同時にほろりとすることも多くて、人生の哀歓を感じずにはいられません。
特に意識していなかったのですが、今回借りた「太陽の季節編」はコロナ禍の時に出版された新しいもので、これまで読んだ他の巻と違う雰囲気を感じました。
いつものように笑えるものが多いのですが、それだけではなくしみじみとした気持ちになるものが、いくつもありました。川柳を詠まれるお年寄りの方々が、身近に病や死を実感されることが多かったのかもしれません。
以下に自分の特に気に入ったものを紹介します。
脳ドッグ
空じゃなかった
入ってた (24ページ)
これには笑いました。最近物忘れが目立つので、他人事とは思えません。すぐ前のことを忘れることが多いです。脳神経外科の先生に聞いたら、これは危ない物忘れの一つだそうです。まさか空とは思えないのですが(笑)、いつか脳ドッグに行かなければ。
この爺が
もとは他人とは
思えない (46ページ)
これも笑いました。夫婦が一緒に長い間暮らしていれば、姿形が似てくるのかもしれません。
ヘソクリの
場所をメモする
足の裏 (57ページ)
これには大笑い。良いアイディアですが、書いた場所を忘れてしまいそうです。消えてしまう危険性もあります。
若かった
度胸があった
家を建て (116ページ)
これは味わい深い川柳だと思います。胸の中の本当の気持ちを吐き出して、書かれたような気がします。
棺の中
生前よりも
良い顔に (128ページ)
この句には苦笑いしました。同時にしみじみとした気持ちにもなります。死は悲しいですが、生の悲しみや苦しみから解放されることでもあります。
父逝って
娘と分けた
シップ薬 (132ページ)
泣きたいような笑いたいような複雑な心境になる句です。この句が本書の中では一番好きです。お父さんが亡くなった悲しみを感じつつ、残された湿布を生きているもの同士で分けて、年を取るとあちらこちら痛いよね、と苦笑いしている親子の様子が目に浮かびます。
このシルバー川柳のシリーズは本当にお勧めです。読むと胸のつかえがとれます。またいつか近くの図書館で借りたいです。
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