溺れた子供たち

ルイーズ・グリュック

分かるでしょう、彼らは自分で決めることができなかった
だから溺れたのは自然なこと
まず氷に飲み込まれ
それから冬全体とウールのスカーフが、沈んでいく子供たちの後ろに漂っていた
彼らがついに静かになるときまで
それから池はたくさんの暗い腕で子供たちを抱き上げた

でも死は異なった形で彼らのところへ来たはず
人生の初めに極度に近い形で
子供たちがずっと盲目で重さを持たなかった存在のように
だから残りのことは夢の中
ランプと上等な白い布地
それはテーブルを覆い、子供たちが身に着けているもの

でも子供たちは自分の名前を聞いた
それは池の上を滑る擬餌餌のよう
何を待っているの
帰ってきなさい、帰ってきなさい
水の中で失われて、ずっと青いままでいる者たちよ

今年ノーベル文学賞を受賞したルイーズ・グリュックの詩を訳してみました。Poetry Foundationというアメリカの詩のサイトに載っているものです。悲しくて重たい内容です。実際の溺死のことを描いているように見えますが、象徴的な意味もあるのではと思いました。池の中に沈んでいるのは、多くの人たちの本当の自分です。どんな人でも本当の自分を生かして生きるのが幸せな人生です。でも現代の社会はそれを許してくれません。親の思いや社会の規範に従って生きるように強いられます。でも本当の自分は消えたわけではなく、自分の心の深いところに残っています。それが詩の中に出てくる「ずっと青いままでいる者たち」です。これは一つの解釈で、間違っている可能性も高いと思います。でも私はこのように受け止めて、心を揺さぶられました。(下記のサイトに載っています)



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