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美術館散歩-ルート・ブリュック【蝶の軌跡】

(訪問日:2020/06/12)

昨年、東京ステーションギャラリーで開催されていた時に「岐阜でやるから、そっちへ行けばいいや」と、後回しにしてしまったルート・ブリュック展。

コロナの影響で開催がどうなるかヒヤヒヤしていましたが、無事に開催されることになり、岐阜県現代陶芸美術館へ出かけてきました。

現在は電話による事前予約制となっているため、私もあらかじめ予約をしておきました。受付で名前を告げて、手の消毒と検温を行います。もちろんマスクは必須です。

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アラビア製陶の専属アーティストとして活動したルート・ブリュック。

国内初の回顧展です。

まずエントランスに置かれていたのは、彼女の娘マーリア・ヴィルカラの作品「心のモザイクールート・ブリュック、旅のかけら」。

母ブリュックの作ったタイルを使用した作品です。

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2枚の陶板を繋げた作品「ボトル」。写真は片側の一部分です。ボトルの緑の釉薬が澄んでいてとても美しいです。

この作品では、引っ掻いた表面に酸化金属を刷り込んでから施釉することでこのような古びた風合いを出したそうです。

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「母子」。聖母子像にも見える作品。

陶板の形が図柄に合わせてあり、個性的。そして母の髪形も個性的(笑)。

ブリュックは教会に関する作品も多く残しています。

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「ライオンに化けたロバ」。

ブリュックは型取りによる鋳込み成形の技術を使い、同じ型でいろいろな色遣いの作品を残しています。

この作品は、イソップ童話に基づくもの。胴体にロバがいますね。

一説には夫のタピオ・ヴィルカラがモデルであるとも言われています。

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こちらが別バージョンの「ライオンに化けたロバ」。

まったく違う印象になります。

ただ、どの作品も絵本の中からそのまま出てきたような表現で、これを陶板にしてしまうというセンスが素晴らしいなと感じます。

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「お葬式」。父のフェリクスを亡くした時の喪失感から制作したとも言われている作品。

6人の黒衣を来た人々が、花で装飾された柩を担いでいます。

柩の真ん中には大きなハート。その下には白い花リネア。リネアはブリュックのミドルネームだそうです。

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「都市」。元々は建築の道へ進みたかったというブリュック。いかにして空間を活かすか、という表現であるようにも見えます。展示する場所に合わせてパーツを組み合わせることで、様々な表現が可能に。都市計画そのものですね。

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父フェリクスは、蝶の研究者。

娘のブリュックにも強い影響を与えたようで、たくさんの蝶の作品が残されています。七宝焼きのブローチみたいな美しさ。

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「ヘキサゴン」。六角形の陶器を自在に組み合わせて作ることができる作品。ブリュックはテキスタイルも手掛けていますが、その色合いが絶妙です。この作品も、同系色でまとめられていますが、グラデーションの美しさから広がりを感じます。

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「レリーフ アダムとイヴ」。金の装飾も入ってきて、全体としては落ち着いた色調なのに荘厳さがあります。ちょっとクリムトに通じるものを感じました。

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「レリーフ イコン」。キリストの絵は転写紙を使ったようです。

ブリュックの作品は幾何学模様のタイルをうまく組み合わせて作られていますが、どことなくレゴブロックっぽくて、なんだかポップ。でも鈍い金色を使うことで荘厳さを醸し出しています。

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「水辺の摩天楼」の一部分。

晩年の作品はどんどん抽象化していきます。

近づいて見ると、ところどころに可愛らしい人が(笑)。

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「スイスタモ」。白い背景に釉薬を使ったタイル。色の発色がとても鮮やかで、まるで色見本を見ているようです。「この色の隣にはこの色を使うと映えるんだな」とか。

ちなみに、「スイスタモ」はフィンランドのカレリア地方の土地の名前。

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モノトーンなのに「色づいた太陽」。

タイルの一つ一つに太陽のようなデザインが施されています。それらを絶妙なバランスで配置することで、太陽のフレアのように、外へと向かうエネルギーになっているように見えました。

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最後の作品は「春の雲」。

細かい!タイルの凹凸で雲と雨を表現するなんて。

この人の発想力は想像を超えます。

ブリュックの大型作品は、フィンランドの市庁舎や銀行などにも設置されているそうです。フィンランドへ行った時に見ておけば良かったなあ。

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予約制のおかげもあり、空いている展示室でじっくりと作品鑑賞ができました。

初期の身の回りの具象的な作品から、晩年の抽象的な作品まで、ブリュックの作品の歴史がよくわかる内容でした。

日本の焼き物とはまた違い、なんとも可愛らしい形や色遣い。見終わったときにはほっこりとした気分になれました。


ルート・ブリュック展は、会期を変更して8月16日(日)まで開催しています。

現在は事前の電話予約が必要ですので、あらかじめ電話にてご予約を。

事前に美術館のHPにて情報をご確認ください。

岐阜県現代陶芸美術館公式HP 

それでは、ぜひ楽しい美術散歩を♪


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