見出し画像

杉本博司『瑠璃の浄土』@京都市京セラ美術館

(訪問日:2020/06/26)

京都京セラ美術館がリニューアルオープン!

コロナウィルスの影響で、開館が延期になっていた京都京セラ美術館。
緊急事態宣言解除後も府内在住者のみへの開館となり、19日以降ようやく府外からの観覧も可能となりました。
さっそくHPから予約をして、母と従妹と車でGO!
(なるべく公共交通機関を使わないように、初めて車で京都へ日帰りしました。)

美術館の駐車場は、正面入り口向かって左側(平安神宮側)にありますが、台数が少ないです(10台くらい?)。
幸い今回は平日の10:30予約でしたので、空きがありました。
駐車場から正面入口へ向かう途中、北西エントランスから見える平安神宮の大鳥居。

画像1

北西エントランス自体、鬼頭健吾さんのアート作品。
正面入口へはスロープを下って、建物の地下1階へ。

画像2

2017年からの改修工事を経て再オープンし、名称も「京都市美術館」から「京都市京セラ美術館」に変更。
古き良き建築はそのままに、新しく現代アートの展示をメインとする東山キューブやカフェの併設など、新旧共存した形です。

画像3

入館方法

入り口で予約した内容のスマホの画面を見せて、検温(通路を通るだけで勝手に検温してくれるタイプ)を済ませて入館です。
入ってすぐ左側のチケットカウンターで、チケットを発券してもらいます。
今回は、『瑠璃の浄土』『京都の美術250年の夢』の2つを予約したので、2枚発行。それぞれバーコードの印字されたチケットです。
各展示室ではバーコードスキャンで入場する方法を取っており、スタッフと鑑賞者の接触を極力控えるためと思われます。

画像4

『瑠璃の浄土』展へ

今まで閉じられていた東側の出入り口から、新しく建てられた東山キューブへと繋がっています。ガラスに囲まれた通路は光が溢れていて外にいるかのよう。

画像5

こちらが『瑠璃の浄土』展示室入り口です。江之浦測候所にもあった、小田原文化財団のロゴが。

画像6

光学硝子五輪搭と海景シリーズ

最初の展示は「光学硝子五輪搭」が13基並んでいます。こちらは撮影不可。
全体をぱっと見ると、美しい硝子の五輪搭が整然と並んでいるのですが、近づいて見るとその一つ一つに杉本さんの「海景シリーズ」の作品がはめ込まれているのがわかります。正面、または真後ろからのみ海が見えるようになっていて、横からはわかりません。
下の写真は、展示室最後に展示されていた「光学硝子五輪搭 日本海 礼文島」です。この作品は撮影可。
五輪塔は下から四角・丸・三角・半円・宝珠、の順にそれぞれ地・水・火・風・空を表しています。「水」にあたる球体に海景をはめ込んで水を表現しているのでしょうか。
それにしても、どうやって写真をガラスの球体にゆがまないようにはめ込んだのか、私は根っからの文系なのでまったくわかりません(笑)。

画像8

「瑠璃の箱(無色)」
作品制作過程に出た、光学硝子の破片を集めて一枚の窓のようになっています。破片すら美しい。

画像7

ニュートンの「光学」に基づいた「OPTICS」シリーズ

「OPTICS」シリーズの展示室。ニュートンの「光学」に基づいて制作されたシリーズです。マーク・ロスコの絵のような色だけの世界。
驚くのは、これが写真だということ。ディスクリプションには、

”朝日を《プリズム》で分光した光の階調をポラロイドで撮影し、デジタル技術を一部導入して大型プリントに仕上げた”

とありましたが、ごめんなさい。私にはわかりません(汗)。
ただ、光の色そのものを撮影した、ということだけはわかりました。
光学硝子に精通している杉本さんだからこその作品なんでしょうね。

画像9

ちなみに、こちらがニュートンが作った装置を杉本さんが改良したもの。
展示室外廊下に置かれていました。

画像11

荘厳な「仏の海」

次の展示室は、最も楽しみにしていた「仏の海」。撮影不可です。
蓮華王院 三十三間堂の千手観音像です。中央に中尊である、千手観音坐像。中尊をとりまく千体の千手観音立像。
中尊の前には灯篭と、光学硝子と木で作られた結界。
実際の三十三間堂よりも暗い空間で、浮かび上がる金色の千手観音群像。
実物を拝観する時には、風神雷神や二十八部衆などの仏像も目に入るのですが、ここでは千手観音像にフォーカスをあてているため、より密に、より厳かに迫ってくる感覚でした。他に鑑賞者がいない贅沢な空間だったため、静かな仏の海から念仏なのか、音楽なのか、仏様たちの声が沸き起こってうねりになっているような、そんな不思議な体験でした。

杉本コレクション「瑠璃の浄土 宝物殿」


続いて「瑠璃の浄土 宝物殿」の展示室へ。
古美術商の経験もある杉本さん。ご自身でもたくさんの貴重な古美術を収集されています。
中でも硝子に関わるものが多いらしく、以下の写真は古墳からの出土品で、瑠璃色に輝く硝子の小玉「瑠璃の浄土」。
今回の展覧会のタイトル『瑠璃の浄土』は、平安時代の今様

「瑠璃の浄土は潔し月の光はさやかにて
  像法転ずる末の世に
  遍く照らせば底もなし」

から取られたそう。

画像12

末法の世に、瑠璃の浄土を思い描いた人々。
浄土へ行くために、仏に祈った人々。
古の人々の思いがこの地に残されていて、それを形にして見せていただいたような気持になりました。

護王神社模型と日本海 隠岐

「海景」シリーズ「日本海 隠岐」。
この作品の隣には、直島にある「護王神社模型」が展示されています。

画像12

実際に行かれた方はご存じかと思いますが、神社は瀬戸内海が見える丘の上にあり、光学硝子の階段が地下へと続いています。

画像13

以前、地下へ入ったことがあるのですが、とても狭くて暗い空間に光学硝子の階段が伸びていて、その先に水が溜められていました。暗い通路を戻っていくと、明るい日の光と瀬戸内海が目に入ります。その当時は杉本さんの「海景」シリーズのことも知らなかったのですが、こうして見ると繋がっているんだなー、と感動。

画像14

杉本博司の世界観

杉本さんのコレクションから、「高山寺印 神泉苑図」など。
仏教法具と三十三間堂の古材を使って床の間のように展示されています。
個人で集められるコレクションじゃないよね、と思うのですが、不思議と杉本さんの元に集まってくるそうです(笑)。

画像15

江之浦測候所やMOA美術館などでも感じたのですが、杉本さんのセンスは日本の古美術を見る確かな審美眼と、独自のアイディアと、それを実現するとびぬけた技術があってこそなんだなと改めて思いました。
硝子の使い方も、写真家ならではの発想なのかな、と。
カメラのレンズは光学硝子。杉本さんにとってはとても身近な素材なんでしょうね。

展示室の外に出ると、東側にある庭園に「硝子の茶室 聞鳥庵」があります。

画像16

池の上に作られた硝子の茶室。ちなみに、硝子の渡し板がありますが通常は池の周りの小道と繋がっていませんので、近づくことはできません。

画像17

夏にここで茶会をやったら無茶苦茶暑そう(笑)。
一旦庭に出てしまうと、館内へ戻るにはぐるーーーっと外を歩くことになりますので、ご注意ください。
私たちは次の展示室(隣)へ行こうと思ったのですが、戻れなくて大変な思いをしました(笑)。

開催情報と関連情報

『瑠璃の浄土』は、会期を変更して2020年10月4日(日)まで開催中です。
現在は予約のみとなっていますので、事前にHPからご予約、また最新情報をご確認ください。
ちなみに、今回の展覧会のチケットを提示すると、細見美術館で開催中の『飄々表具ー杉本博司の表具表現世界』が割引になります。

京都市京セラ美術館HP:

小田原文化財団HP:

細見美術館HP:

個人ブログ(旅行記)-直島:

それでは、ぜひ楽しい美術散歩を♪

この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?