【1日1文献】社交不安症状のある統合失調症患者に対する作業療法の効果#統合失調症#対人関係#精神科作業療法

参考文献:社交不安症状のある統合失調症患者に対する作業療法の効果
筆者:山本 敦子橋本 健志森本 優香加藤 正樹木下 利彦四本 かやの
発行日:20219年
掲載元:作業療法 38 巻 (2019) 2 号
検索方法:インターネット
キーワード:統合失調症(社交不安)精神科作業療法対人関係作業選択

【抄録】
・本研究の目的は,地域で生活する統合失調症患者の社交不安症状に対する作業療法の効果を検討することである.
・ケースシリーズ研究で,3症例に対する6ヵ月間の作業療法介入前後の社交不安障害尺度得点,陽性・陰性症状評価尺度得点,日常生活場面での対人交流の状態を比較した.
・結果,6ヵ月間の作業療法介入によって,統合失調症患者の社交不安症状に改善がみられ,対象者全員に精神症状の改善も認められた.
・社交不安症状が中等度の患者は,重度の患者と比較し,より大きな改善がみられた.
・作業療法介入が,統合失調症患者の社交不安症状の改善に寄与できる可能性が示唆された

メモ
・不安障害は多くの統合失調症で併存し,その症状の 経過は,統合失調症の転帰と関連があることが知られ ている1,2).
2011 年に Achim ら3) は,統合失調症における不安障害の併存率は 38. 3%で,このうち,社交不安障害(social anxiety disorder;以下,SAD)の 併存率は 14. 9%と,最も高いことをメタ解析で示している.
・しかし,統合失調症に併存する強迫性障害4) やパニッ ク障害5) などの不安障害と比較し,SAD に関する研 究は少ない.
・その理由として,重度の精神病性障害である統合失調症では精神病症状を重要視し,社交不安症状は統合失調症の症状の一部と考えられていた6,7) ことや,統合失調症と SAD は症状の重なりが多いために見逃されている可能性が高いと考えられていた8) ことが挙げられる.

・SAD を併存する統合失調症患者は併存しない統合失調症患者と比較して,自殺企図率や自殺による死亡 率が高く,社会適応や全体的な QOL が低く8,9),自責 感や自尊心の低下がより重度であり10),統合失調症患 者の社交不安症状に焦点を当てることの重要性が強調されている.
・SAD の治療は通常,選択的セロトニン 再取り込み阻害薬(SSRI)を主とした薬物療法11,12), 認知行動療法,森田療法が,単独あるいは並行して行 われ,重症度評価には社交不安障害尺度である Liebowitz Social Anxiety Scale 2,13) が用いられる.

・OTの治療・援助関係は作業を介して成り立つ.
・この治療構造は,言語を主な手段とする精神療法や認知 行動療法と異なる点であり,社交不安症状のある統合失調症患者に対して導入しやすい治療法であると考えられる.

参考URL:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jotr/38/2/38_213/_pdf/-char/ja

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?