【1日1事例】スポーツ栄養と油脂 #スポーツ栄養学 #脂質 #グリコーゲン

参考文献:スポーツ栄養と油脂
筆者:東田 一彦
発行日:2020年
掲載元:オレオサイエンス 20 巻 (2020) 4 号
検索方法:インターネット
キーワード:sports nutrition, lipid, glycogen, exercise performance

【抄録】
・脂質は重要な栄養素の一つであるにもかかわらず,スポーツ選手にとってはどちらかというと体重や体脂肪の増加を引き起こす悪役として認識されているだろう。
・脂質はエネルギー源としてだけ働くのではなく,脂質だけがもつ生体内での重要な役割があり,それを再認識させる研究成果が近年報告されている。
・本総説では,スポーツ栄養における脂質の役割についてこれまでに行われた研究と,最近の知見について解説する。
メモ
・糖質は主に骨格筋と肝臓にグリコーゲンとして貯蔵 されているが,内臓や皮下脂肪組織に中性脂肪として蓄 えられている脂質と比べると貯蔵量が極端に少ない。
・特に筋グリコーゲンの減少・枯渇が運動パフォーマンスを低下させる原因であることが明らかにされて以降,いか に運動前に筋グリコーゲン量を高めるか,運動中の糖質 補給をどのように行うか,といった糖質摂取と運動パ フォーマンスに着目した研究が盛んに行われた。
・動物実験で得られた結果と同様に,長期間の高脂肪 食摂取はヒトにおいても骨格筋脂質代謝関連酵素活性を 高め,運動中の脂質酸化量が高まることが明らかとなった。しかしながら,運動フォーマンスの向上はほとんど 報告されていない。むしろ,ヒトにおいてはパフォーマ ンスの悪化も報告されている
・高脂肪食摂取で運動パフォーマンスが低下する要因と してはいくつかの可能性が考えられる。
・一つ目は,運動 時の重要なエネルギー源である糖質代謝の低下である。 特に運動強度が上がるにつれてエネルギー源としての筋 グリコーゲンの貢献度が高まるため,運動を開始する前 の筋グリコーゲン量の低下が,運動パフォーマンスの低 下を引き起こしたと考えられる。また,長期間の高脂肪 食摂取は解糖系酵素活性を低下させる。
・他の要因としては,体重もしくは体脂肪量の増加が挙げられる。
・上述したように,高脂肪食摂取によって骨格 筋の脂質酸化酵素活性が亢進するには,長期間にわたり 高脂肪食摂取を続ける必要がある。その結果,体重や体 脂肪量の増加が引き起こされ,運動パフォーマンスに悪 影響を及ぼすことが考えられる。
・長期の高脂肪食摂取に よる体重増加を引き起こさないように摂取エネルギーをコントロールした研究では,高脂肪食を 4 週間摂取した 被験者の運動パフォーマンスは,高糖質食群と比較して 差がなかったことが示されている
・脂質の摂取は,糖 - 脂質代謝だけでなく,骨格筋のた んぱく質代謝にも関与する可能性が示されている。
・ギプ ス固定による廃用性筋委縮モデルを用いた動物実験で は,特定の脂肪酸(ここでは中鎖脂肪酸)を多く含む食 餌を摂取することで,不活動による筋萎縮が一部抑制で きることが報告されている)。
・この結果は,運動パフォー マンスの向上だけなく,傷害やオフシーズンのように活 動量が低下する場合に脂質を用いることで筋肉量の低下 を抑制できる可能性を示している。
・脂質自体にはインスリンを分 泌する機能は低いが,糖質と脂質を同時に摂取すること で Glucagon-like peptide-1(GLP-1) や Glucose-dependent inulinotropic polypeptide(GIP)などの消化管ホルモンを介してインスリン分泌を増強することが知られ ている。
・ヒトを対象に,糖質のみの飲料と,糖質に脂質 を含んだ飲料を摂取させた場合のインスリン分泌を比較 した研究では,糖質のみと比べて糖質に脂質を付加した 飲料を摂取したグループで,インスリン分泌が増強した ことが報告されている
・スポーツ現場では次 の試合に向けて速やかな筋グリコーゲンの回復を必要と する場面があるが,インスリン分泌の増強は筋グリコー ゲンの回復にとってプラスに働くと考えられる。
・このように目的に合わせた上手な脂質摂取の方法が,今後,ス ポーツ栄養学分野で開発され,普及していくかもしれな い。

参考URL:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/oleoscience/20/4/20_151/_pdf/-char/ja


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?