【1日1事例】フランスの在宅医療視察報告(1)~在宅 入院制度と地域包括ケアシステム~ #在宅医療 #地域包括ケア #フランス

参考文献:フランスの在宅医療視察報告(1)~在宅 入院制度と地域包括ケアシステム~
筆者:小山歌子、宇田優子
発行日:2020年
掲載元:第18回 新潟医療福祉学会学術集会
検索方法:インターネット
【背景・目的】
・フランスの医療保障制度は、社会保険方式の医療保険制 度(強制加入)を基本とし、任意加入保険、基礎医療保険制 度があり、日本の制度と類似する点が多い。
・フランスの HAD(在宅入院制度)は、1970 年 12 月に医療費の抑制 策として入院医療の機能分化と在宅医療の充実に向けて、 入院医療と在宅医療を柔軟に提供する体制を構築するた めに導入され、2016 年にはフランス全体で 303 組織となっている。
・平均在院日数は、フランスが 9.1 日、日本が 31.2 日、急性期の平均在院日数は、フランスが 5.1 日、日 本が 17.5 日となっている
・フランスの HAD は、我が国にはない制度であるが、地 域包括ケアシステムにおける在宅医療を推進するための 示唆を得たので報告する。
【方法】
・2018 年 3 月 17~24 日までフランス在宅医療看 護視察に参加して情報収集した。
・視察先は、パリから TGV で約 1 時間半の距離にあるナンシー市とパリの 2 か所 3 施設である。ここではナンシー市の HAD の提供組織 A の 視察から得た情報を中心に述べる。
【結果】A(HAD)の活動
1. 概要:
1)組織;大学病院、がんセンター(非営利)、ク リニック(営利)で構成されている。HAD はネットワーク の中心となり在宅入院を後方支援する。
2)対象;ナンシー 市周辺の人口 52 万人、拠点施設から半径 40km 以内、患 者数;1,200 人、在宅入院患者 130 人/日、乳幼児から高 齢者まで
3)在宅入院日数;21 日~25 日
4)訪問するた めの車;20 台
5)かかりつけ医(制度として規定);516 人
6)スタッフ;医師・NS・PT・OT・ST・事務・経営 管理部門職員約 60 人で平均年齢は 36 歳
7)活動内容; がん・血液がんなどの悪性新生物に対する化学療法・疼痛 緩和、ガーゼ交換、在宅リハ、点滴等の医療処置が中心。
8)HAD の強み;①ケアの構築(患者のフォローによるケ アの継続性、地域に密着したケアの提供、多職種連携によ るケアの提供)、②社会保障財源の有効活用、③在宅環境 の整備等。
2. サービス導入の流れ:
①開業医(かかりつけ医) もしくは病院勤務医から在宅入院の申し込み。
②コーディ ネイト医師・管理看護師が協議の上在宅入院の可否を決定、 最終的には患者の同意を得てコーディネイト医師が決定 する。
③コーディネイト医師が在宅入院指示書を作成し、 かかりつけ医の同意を得る。管理看護師が在宅入院の準備 をする。
④関係者間で患者情報の共有、ケアプランに基づ き訪問する。
⑤急変時は電話で対応可能である。
⑥必要な 医薬品はコーディネイト医師から処方せんを薬局に渡し、 薬局が自宅へ配達を行い、家族の負担を軽減する。
3. 医師、看護師の役割とケアのプロセス:
①コーディネ イト医師は在宅入院の決定、治療方針を決める。
②管理看 護師は、医師の指示のもと関係職種と調整する。
③在宅入 院は医師(週 1 回)、担当看護師(毎日 1 回以上)、看護助手(毎 日)、理学療法士(週 3~4 回)等が訪問する。
④管理看護師 は適時担当看護師のケア提供内容を提供評価する。
⑤在宅 入院でも入院中と同じプロトコールを使用してケアを提 供する。
⑥週 1 回対象者全員について、多職種カンファ レンスを実施し、治療方針の確認を行う。
4. 在宅入院の退院:
①退院;退院の決定はコーディネイ ト医師と開業医(かかりつけ医)と相談して決める。退院と 判断した場合は、在宅入院の全関係者に退院日を知らせる。 退院後は開業看護師がフォローする。
②病院への再入院: 一時的に在宅復帰が可能な在宅入院を行った計画的な再 入院、介護負担による在宅入院の継続困難事例。
③死亡。
【考察】
・HAD は、患者の住み慣れた家で、入院と同程度 の医療が受けられる制度である。メリットは、
①病院の入院期間を短縮できる
②在宅で病院と同等の治療が受けられる
③住み慣れた環境・人との繋がりを継続できる等である。
HAD が機能しているのは、病診連携、訪問看護および多職種連携等によるところが大きい。HAD は、我が国の地域包括ケアシステムの目的に合致しており、参考となる。
【結論】
フランスの HAD からは、地域包括ケアシステム における在宅医療の推進には、
①病診連携の確立
②訪問看護の拡充と機能強化
③多職種連携によるサービスの提供が不可欠であることが示唆された。

参考URL:
https://core.ac.uk/download/pdf/162552859.pdf

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?