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【読書感想文】「鹿の王 水底の橋」ー上橋菜穂子

私は読書は好きだが、あまりたくさん読むほうではない。気に入った本を繰り返し読むことも多い。私は一読者であり、ど素人なので、書評でもレビューでもなく感想文で。初回は、10年以上追いかけている上橋菜穂子さんの「鹿の王」の後日譚「鹿の王 水底の橋」の感想を書いてみる。思いっきりネタばれあり。

まえがき: 上橋菜穂子さん大好き

上橋菜穂子さんのファンタジーは「鹿の王」、「守り人」シリーズ、「獣の奏者」等、大好きで、新作が出たら必ずチェックする。

彼女の作品は、人の強さ、やさしさ、狡さ、はかなさ、そして多様さを、教えてくれる。いろんな考え方と生き方がある。それぞれの正義がある。人と人の人生は時に寄り添い、時に相容れない。

自分に見えていないことの膨大さに呆然とし、恐れを抱きつつも、まだ見ぬ世界や価値観への出会いを期待してしまう。

「人生にはいろいろあるが、必ず希望はある」。彼女のファンタジーは、そんな気持ちにさせてくれるのだ。

「鹿の王 水底の橋」の感想

「水底の橋」は、「鹿の王」のその後の物語である。「鹿の王」はものすごく情報量が多くて、キャラクターもエピソードも濃度が高い。それでも後日譚にはオマケ感は無い。(真那くんの生まれの詳細や、医学の起源は、本編の趣旨と外れるから削ったのかな)

1. 読後はとにかく「ミラルすげぇ」

終始ごっちゃごちゃ(あくまで私の主観)だった本作品だが、読み終わった瞬間の気持ちは「ミラルすごい…。めっちゃ好き」だった。結局ミラルが全部おいしいところ持って行った感すらある。

自分の信じるものを貫くことで、運命を変え、手繰り寄せることができる。

本書を書き終えたとき、私の中に鮮やかに残っていたのは、新たな道へと一歩を踏み出していったミラルの後ろ姿でした。(あとがき)

私も想像した。ミラルの、分厚い書籍を抱えて、背筋を伸ばして颯爽と歩いていく…ついていきたくなるような後ろ姿。

2. ホッサルとミラルの関係

身分が違うという理由で、形式的な結婚も、子供を作ることも考えられなかった二人。身分なんて…令和の時代に…と思わなくもないが、だからと言ってすべて投げ打つでもなく、互いに尊敬し合って一緒にいる、というのが素敵だった。「水底の橋」の最後で、身分がひっくり返ってなんの心配もいらなくなった。ぽん、と自分の気持ちが自由になって目の前に置かれて、戸惑うホッサルが面白い。

二人の関係も、ミラルがリードしていくのかな、なんて思ったり。ミラルの方がとっくの昔に腹くくれてそうだわ。

3. コロナ禍において

まだまだ世界の混乱は続くけれど、いまも、ホッサルやミラルたちのように、必死に命を救うために戦っている人がいる。直接病と戦えなくても、たくさんの人が自分や家族を守るために、そして感染を広げないために考えて行動する。生活をして経済を回していく。毎日、地道に。

その先に、「水底の橋」のエンディングのように、穏やかな新しい世界に行きついていたら、と願わずにいられない。

おまけ。

「鹿の王」は登場人物の名前が難しかった。(特に東͡乎瑠の偉い人たち) 一回ですべてを把握できないので何回も読んだ。初回は、私は初めての妊娠中、仕事帰りにカフェ併設の本屋で単行本を10回くらいに分けて読んだ。その後文庫になってから買ってめちゃめちゃ読み込んだ。(私はハードカバーより文庫の方が読みやすいんです…すいません) 何回読んでも、新たな気づきがあって面白い。「水底の橋」も何度も読むと思う。そんで、次回作もずっと待ってます。

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