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18禁への目覚め(まだやるんかい)

前回は2次元に於けるエロへの目覚めについて書きましたが、今回は3次元、つまりは現実世界での目覚めです。ていうかまだやるんかい。ゾーニングされたいのか?

記憶が曖昧な2次元の目覚めと違って、現実での目覚めはわりと明確です。……『クレヨンしんちゃん』です。

え?クレしん?と思われるかもしれませんが、アニメではなく原作のほうです。今では国民的ファミリー向けアニメとしてお馴染みですが、原作の漫画はもともとは、青年向け漫画雑誌に掲載されていた、れっきとした青年漫画でした。

そして、最初の頃は、しんちゃんが主人公というよりは、しんのすけという変で下品な子供を持つ若い夫婦の物語、という視点で描かれていました。

なので、夫婦の夜の営みを行う場面とかが普通にあって、コンドー○が当たり前に出てきたりします。

当然ながら、まだ10代前半の読者だった自分にはこの○ンドームがいかなる代物なのか全くよくわからず、作中ではしんちゃんが誤飲しそうになってしまい、「ガムじゃないのよそれは」とたしなめられていたことから、漠然と、美味しそうな見た目なのだろうか……?という印象を胸に秘めました。

親にも友達にも話したことがなかったのは、具体的なことはよくわからないけど、夫婦間でのシークレットサインを作り、頑なにしんちゃんにバレないように努力しているので、とりあえず未成年は知ってはいけないこと、なるべく秘密にしておくべきだとということだけは理解したからです。

やがて幾年の歳月が経ち、保健体育の授業にて真実のすべてを知り、Bationをマスターし、めでたく煩悩にまみれた中学生になった、とある下校時。

校門の前に立っているおじさんから、何かをもらいました。

最近は、小中学校の運動会や音楽祭も家族しか入ってはいけないという規則があるらしく、今そんな人がいたら通報ものですが、校門の前に謎のおじさんが立っていて、下校時の生徒に何かを配るというのは、わりと日常的な風景でした。

謎のおじさんたちが配っていたのは、基本的には『ドラえもん』や『名探偵コナン』などのファミリー向け映画の割引券なのですが、中には消しゴムや鉛筆などの文房具を配る人や、○○○会の本や聖書を配る亜種のおじさんも存在しました。

あのおじさんたちはなんだったんだろうか。高校では一度もその手の人を見かけたことがありませんでした。

まあ、自分の通っていた高校は、川を越えた土手の向こうのゴミ処理場の隣という僻地(ちなみに現在は移転しており、その頃の校舎は現存しません)だったので、アクセスが悪すぎたため、めんどくさくて来なかっただけだろうか……?

さて、いつもどおりに帰宅部の活動に勤しむべく終業と共にダッシュで校門へと駆けたところにおじさんがいて、なんらかのビニール袋を手渡されたわけです。

ビニール袋に入っていることに少しは違和感を覚えたかもしれませんが、まあどうせ文房具だろとか思って、ろくに中身を確認せずにちゃっちゃと鞄の中に突っ込みました。

あんまりここでオタオタすると帰宅スピードが落ちてしまう。プロ帰宅部としてはいつでも最速を保っていないとならないので、余計なノイズに気を取られてはならなかったのです。

当時よく冷蔵庫に入っていたキットカットを食したり、すでに6億回くらいは読んでいた漫画『まもって!守護月天』を再読するなど帰宅後の活動に勤しみ、そういえば母上殿に空の弁当箱を献上せねばならないということを思いだし、鞄をひっくり返してみると、例のビニール袋が元気に飛び出してきたのでした。

そのビニール袋をピシャリと開くと、中には小さな紙片が。その紙片には確かにこう書かれていた。「コンドー○」と。

正確にいえば、たぶんどこかの団体の名前とか、そのコン○ームを製作した会社とか、用途に関する説明とか、お問い合わせ先とか、多くの情報が書かれていたはずですが、自分には「コンド○ム」という単語のインパクトが強烈すぎて、他に何も目に映りませんでした。

ひろしとみさえが夜の営みをする時に使っていた、あの伝説のアダルトグッズが、今まさに目の前にある。あのおじさんの意図はなんなんだ、と。

もちろん、校門でおじさんが○ンドームを配っていたのは別におじさんが変態だったからではなく、PTA経由の啓発活動の一環であったのだとは、後から考えたら理解できました。

しかし、なにせまだ13歳のイタイケなチェリーがいきなりこれをポンと渡されても、どう反応して良いやらわからず困惑するばかりでして。想像した以上に騒がしい未来が僕を待っていた。

コン○ームがいかなる時にどう使うものなのかということは、すでに保健体育の授業で学んで知っていました。

が、当然ながら使う相手などいません。当店の下半身のレジは完全セルフ式なわけです。

仮に相手がいたところで、xxxにろくに毛も生えていないクソガキがそんなことをしたらとんでもないことになる、という防災知識も持っていたので、これをどこにどうするべきかと。

机の引き出しに仕舞ってみたものの、こんな身近にアダルトグッズがあるというのはどうにも落ち着かず、なんというかこうなんというか。

『まもって!守護月天』を再び取り出して平静を保とうとするも、シャオ(作中のメインヒロイン。かわいい精霊。かわいくてかわいい)の無限大の魅力をもってしても、コンドー○は煩悩をグイグイと刺激してくる。

たとえ想像の中であってもシャオに対する冒涜はあってはならないと判断し、そっと本を閉じたのでした。煩悩に苛まれた自分のもとにはもう、永遠に守護月天が訪れることはないだろう、という絶望を抱えて(守護月天は心が綺麗な者のもとにしか現れない)。

とりあえず机の引き出しはまずい。しかも大きい引き出しはまずい。もう中学生だから、ここがタイムマシンの出入口じゃないことは知っているので、ドラえもんに見つかる心配はないが、親に見つかる心配はそれなりにある。

親に見つかったところで、学校で配られたと説明すればいいだけなのですが、そんな冷静な判断はできなくなっていたのでしょう。

逡巡した結果、コ○ドームはベッドの布団の下に収納しておくことにしました。ゼロ年代に生まれしヤングの方にはピンと来ないかもしれませんが、かつてはそういったアダルティーなものはベッドの下に隠すという、たいへん奥ゆかしい日本文化があったのです。

その後、○ンドームは使われることなく、何年もベッドの下に眠っていました。そのあいだ母上殿は何度となく布団を取り替えて下さったはずですが、一度も見つかったことはありませんでした。

いや本当はとっくに見つかっていたのかもしれませんが、今さら「あの時ベッドにあったコン○ーム知らない?」などと問うわけにもいかないので、真相は闇の中。 

いつのまにかコンドー○はベッドから消え、アダルティーなものは時代とともにデジタル化され、ハードディスクやクラウドにパスワードつきで(以下略)というのが主流になり、高校生の頃は河原でエロ雑誌を拾っていた自分もすっかり汚れた大人になってしまいました。

ヤングの方にはピンと来ないかもしれませんが、かつて日本の河原には、週刊少年ジャンプやマガジンとともに、エロ雑誌がよく落ちていたのです。あと、なに時代のものかさっぱりわからない、汚くて古そうなアダルティーなビデオテープなどというものもたまに落ちていましたが、それはなんか怖くて拾いませんでした。

幼児の時点からスマホでYouTubeを視るのが当たり前な、この令和の世に生まれしナチュラルボーンデジタルチルドレンは、いかにしてエロに出会い、いかにしてコン○ームの存在を知るのでしょうか。

たぶんHIKAKINさんやフィッシャーズの皆さんは教えてくれないでしょうから、意外と親の本棚にあった『クレヨンしんちゃん』の古い単行本がきっかけだったりするのかもしれません。

そして自分の家にはもうその単行本はなく、従姉の実家にあるのです。うっかり姪が読まないかどうか今からドキドキワクワクです(……ワクワク?)。

将来そういう時期になったら、初めて○ンドームを手にして丸1日ずっと悶々としていた若かりし叔父さんの、青臭くてイカ臭い話をしようと思っていますが、なぜか「ウザいから黙ってて」と言われる未来が今からわりと明確に見えます。

女の子は難しい。そして、男の子はアホだ。

P.S.

『まもって!守護月天』はその後いろいろありすぎて未だに完結しておらず、開始から20年以上が経った現在も連載中です。みんな読もう。

昔はアナログ作画だったのがタブレットになり絵柄はだいぶ変わっていますが、シャオはいつまでもかわいいです。姪の次の次の次くらいにかわいいです。

サウナはたのしい。