祐実お姉さんが大人になったことを知った日
安達祐実さんが40歳だというのを知って、その風貌のあまりもの変わらなさに驚いたのと共に、秘めていたトラウマが脳内に溢れ出して、ひとりワイングラスを傾けて泣きました。
すみません、少し誇張しました。実際にはワイングラスではなく金麦の350ml缶だし、泣いてはいません。酔っ払っていただけです。
かつてドラマ『家なき子』で子役として人気を博し、その後のテレビCMで「私ももう中学生になりました」とおっしゃっていた安達祐実さんは、常に自分より先に成長しているお姉さんでした。
インスタントのカレーの具が大きいことを祐実お姉さんに教えてもらい、進研ゼミはチャチャチャであることを祐実お姉さんに教えてもらい、小学生はいつか中学生になることを祐実お姉さんに教えてもらい、子供はいつか大人になることを祐実お姉さんに教えてもらったのです。
しかし、うちは祐実お姉さんがCMしているものとは違うバーモントカレー派であり、進研ゼミはポストに送られてくる冊子を漫画だけ読んで捨てて入会せず、高校生になっても工藤新一になれないことを嘆いてブックオフで古いヴィジュアル系のCDを漁っている間に、世界は刻々と変化していきました。
自分もそれに伴って、それなりに成長していきました。少年が買うものとは別のヤングなジャンプを買ったりすることもありました。
まだあまり有名ではなかった頃の戸田恵梨香さんの水着のグラビアなども見てしまいました。
少年が買うほうのマガジンでは当時しょっちゅう小倉優子さんが表紙を飾っていて、実際はキャラクター付けのぶりっ子であることを疑いつつも、それでも一度はこりん星に行きたいと強く願っていました。
煩悩をぶら下げたままFラン大学のカレッジライフに身を投じ、それはそれとして楽しんでいたのですが、ある夕方、地元の書店の片隅で、久しぶりに祐実お姉さんの姿を見ました。
平積みされた雑誌の表紙には、幼い頃からほとんど顔の変わらない祐実お姉さんがいました。
そこまでは良いのですが、その下を見ると、祐実お姉さんは大きな女性的なものを称えた水着をまとっていらっしゃいました。間違いなく、お腹の上の部分にあるものは女性的なものでした。
ええ、よくあるグラビアなのですが、「オトナのボディ」的な何かそういう俗っぽい煽り見出しとともに写る祐実お姉さんを見て、何かとても汚らわしいものを目にしてしまったような気持ちになりました。
まるで頭の固いPTAのごとく、こんな低俗なものを世の中に出してはならぬ、といった理性の暴走が脳内に沸き起こり、しかしなおかつ、自分も男子としての煩悩がすでに目覚めていたので、「買ってみようかな……」という気持ちもまたありました。
結論からいえばその雑誌は買わず、祐実お姉さんの水着グラビアがいかなる内容のものであったかは今でも存じません。
でも、あの時の、エッチなDVDを借りて視たら知り合いが脱いでいたかのような複雑な感情は今でも覚えています。
これを書くにあたって改めてググってみたら、「安達祐実 ワコール」というサジェストが出てきましたが、怖くてクリックしていません。
いい大人の自分は、ワコールが何をつくっている会社なのか知っているからです。またトラウマがひとつ増えました。