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にたもんどうし

「これが大阪かあ」

滋賀の山の近くに住んでいる僕にとって、大阪は大都会だ。ビルだらけの街に夢中になっていると、隣のチフネに肩をつつかれた。

「観光に来たんとちゃうで。今日は壇上でスピーチせなあかんねやから」

そうだった。今日ここにやってきたのは、通っている書道教室が参加した展覧会で、僕らの作品が入賞したからだ。

近所の女子のチフネに誘われて習字を始めたのが小学3年生。当時は他に何人か友達がいたが、高校生になった今でも続けているのはチフネと僕だけだ。スマホで地図を見るチフネに、僕はなんとなく言った。

「なんで習字、はじめたん?」

「……覚えてない」 

………僕も。

福島区というところをしばらく歩くと、大きなホテルに着いた。表彰式の会場だ。 

「うわあ、こんな豪華なとこ、ウチ、入ったことない。ステーキとか出るんかな?」

「観光に来たんとちゃうぞ」

そういえば、入賞した書の「已己巳己」って、どういう意味なのだろう。

サウナはたのしい。