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昆虫食が無理なら

3年ほど前に、神奈川県に行ったときのこと。

居酒屋の飲みの帰り、酔いざましがてらにちょっと水でも買おうかと思って歩くと、自販機が並んでいるのを見つけたので、さっそく近づいて行きました。

ビルの手前に設けられたその自販機コーナーをよく見てみると、奥にガラス張りの一室がありました。椅子はありませんが、雰囲気としては駅の待合室のような感じです。

なんとなくふらっと入っていくと、中は再び自販機コーナー。しかし、そこに置かれている自販機は、少なくとも自分は初めて見るタイプのものでした。

なにせ、でかでかと「昆虫食販売中」と掲げられていやがる。

ケースには「カイコ(醤油味)」やら、「チョコカバードスーパーワーム」やら、「(コオロギ100匹が練り込まれた)うどん」やらがずらりと並んでいて、それだけでもう目が痛いです。果ては「カブトムシ(雌)」「タランチュラ」などと、原材料そのまんまの商品名のものも。

駅から徒歩3分もかからない、人通りもかなり多い道路沿いに、こんなカオスな自販機が佇んでいるとは……。ちなみにいちばん売れていたのは「コオロギバー(抹茶)」という商品で、たぶん1本満足バーのコオロギver.を抹茶仕立てにしましたみたいなやつ。

昆虫食の中ではこれがポピュラーなのでしょうか。350円と、この自販機の中では最もお求めやすい価格です。

参考までにここに書いておきますと、最高値は2600円の「サソリ・タガメ・ゲンゴロウのMIX」という、名前だけでもうなんかドキワクしてくる商品。

生半可な好奇心では手を出しづらい。かといって、手が届かないほどの金額ではない。なんとも絶妙なところを突いてくるぜ。いやまあ、結局は買わなかったのですが。

とはいえ、抵抗を感じるのは実際に自分が食したことがないだけで、一度でも食べてしまえば、意外と平気なものなのかもしれません。

実際に、アジアやアフリカでは、日常的に昆虫を調理して食べる国もあるそうですし。外見の問題だけで食べないのは、もしかしたら損なのかも。

魚だって、目玉をひん剥いた状態のものに平然と箸を突き刺しているわけだし、ソーセージだってその製造過程において、かなり見た目的にきついことをしています(漫画『銀の匙』を読むと、見た目的にどうきついのかよくわかります)。

ちなみに、色々と調べていくと、このような実験的な自販機を導入したのは、何も話題性づくりのためではないようです。

いつか再び地球上に訪れる可能性が高いとされる氷河期への備えとして、昆虫食は世界的に注目されているらしく、なんと国連によって推奨されているのだそう。変な自販機つくって目立とうぜとなどという悪ふざけではないのです。

といってもやっぱり……。じゃあさっそく今日から、という気にはならんわなあ。

第二次氷河期が訪れて食糧危機が迫ってくるのがいつの時代かはわかりませんが、もう少しハードルの低い材料の非常食はないものか。草とか、砂とか、石とか……。

氷河期になればそんなものはすべてなくなるという話かもしれませんが、ならば草木に頼って生活している虫たちだっていなくなるはず。

とすれば、そこにあるものは空気のみ。空気を食べるしかなくなるのでは?つまり、霞を食べることのできる人しかサバイブできないのでは?

もはや仙人しか生き残れない世界。

昆虫食と霞食なら、技術的には霞のほうがよっぽど難しそうだけど、感覚的には霞のほうが美味しそうな気はする。

試しに空気を吸ってみました。春の風と花粉の香りがして、甘酸っぱかったです。ちょっと酸味が効きすぎているように思うので、一晩ねかせて煮込んだほうがいいですね。


サウナはたのしい。