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アドリブソロのバリエーションの増やし方〜音楽理論を演奏特化にカスタマイズする〜

音楽理論を使いやすくカスタマイズすることって実は超大事って話

こんにちは、お茶の色大学ジャズ研部長のぴゅら子です。

突然ですが「音楽理論」というと完全無欠で正しいもので「音楽のルール」というよう印象を受けませんか?言葉の持つ印象とは大きく、強く正しく作用することも、誤解を産むこともあります。誤解を恐れずにあえて言いましょう。

音楽理論という言葉は誤解を産む不適切な言葉である!

音楽“理論”って字面的に完璧ぽく見えちゃいますもんね。しかしその実態は「音楽的傾向」といったものに過ぎません。そうつまり音楽理論にも欠点はあるのです。
考えても見てください。演奏者が提唱する理論と、作曲家が提唱する理論が全く同じな訳ありませんよね。理論というのは使用意図に応じて歪められて然るべきなのです。マイナーチェンジバージョンが無数に存在しているのです。
だとしたら、そういった欠点を認めて自分が使いやすいようにアレンジした方が絶対使いやすいと思いませんか?

この記事では、しばしばジャズやポップス界隈で取り上げられるアベイラブルノートスケールという考え方を例にあげて、音楽理論をカスタマイズする方法を紹介します。この記事では特にジャズ演奏に特化したカスタマイズを紹介しています。

ぴゅら子の動画ファンの方はすでにお気づきかも知れませんが、この記事はこちらの動画を、めちゃくちゃ深く堀り下げた記事となります!よかったら一度ご覧くださいませ。

※この動画を見なくても十分に分かりやすい記事になっています。もしよかったらどうぞご覧くださいませ。

アベーラブルノートスケールとは

さてこのテーマでは、まことしやかに正しいものとささやかれている音楽理論「アベイラブルノートスケール」が実は非効率的であることの一例を紹介いたします。(音楽理論にも穴はあるんだよなぁ。)

が、その前に簡単に「アベイラブルノートスケール」とは何か簡単に説明します。アベイラブルノートスケールは音楽理論を勉強していると高確率で見かけると思います。Dm7でDドリアン、G7でGミクソリディアン、CメジャーでCイオニアンスケールを使えるという、まさにこの考えのことです!
ある特定のKeyで使用されるコードに対して何スケールが使用できるかという考え方をアベイラブルノートスケールといいます。

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アベイラブルノートスケールの例

ジャズやポップスの理論を勉強していると、アベイラブルノートスケールは前提の知識として覚えるものとして紹介されることが多いかと思います。まずは、そんなアベイラブルノートスケールの欠点について紹介していきます。

アベイラブルノートスケールの欠点

アベーラブルノートスケールの欠点を「演奏面からみた非効率さ」と「作曲的な視点からみた矛盾」という2点のアプローチから紹介していきます。

アベイラブルノートスケールの演奏機能面から見た非効率性

まずは演奏面からみた非効率さを紹介していきます
アベイラブルノートスケールでは、先ほど例にあげた、Dm7でDドリアン、G7でGミクソリディアン、CでCイオニアンスケールを使いましょうと説明されています。ではドリアン、ミクソリディアン、イオニアンが何を表しているのかを改めて見てみましょう。
・イオニアンスケール
イオニアンスケールは名前こそ違えど、メジャースケールのことです。いわゆるドレミファソラシドです。
・ドリアンスケール
ドリアンスケールは、ドレミファソラシドというスケールを、レから始めたレミファソラシドレというスケールです。こちらは民族音楽でよく聞きます。
・ミクソリディアンスケール
ミクソリディアンスケールはドレミファソラシドを、ソから始めたソラシドレミファソです!実はこちらも民族音楽でよく聞きます。

つまり、これはどういうことかと言うと
DmではCメジャースケール(Cイオニアンスケール)の
第二音Dから始めたスケールを使用しましょう
G7ではCメジャースケール(Cイオニアンスケール)の
第5音Gから始めたスケールを使用しましょう
ということです。

あれ?ちょっと待てよ?
Dドリアンも、Gミクソリディアンも、Cイオニアンも
スケールの構成音は全部おんなじじゃない???
その通りなんですよ!
Dm7でDドリアン、G7でGミクソリディアン
CでCイオニアンスケールを使いましょうて言う説明は
言い換えると
Dm、G7、Cメジャーのコードでは、Cメジャースケールが使えます!
と言うのを、分かりにくく伝えているだけなんですよね。

実際に演奏するときに、わぁあぁドリアンだ、次はミクソリディアンだぁ、次はイオニアンスケールがいっぱい変わってるよぉぉぉ
あほちん!!全部一緒のスケールじゃわい!!
となるわけです。
気がついてしまえば何のこっちゃないんですけど、この説明だけでも初心者の人に対してめちゃくちゃハードルを上げていると思います。
構成音が全く同じなのに、わざわざ言い換える必要はないと思うわけです。

アベイラブルノートスケールのモード旋法視点での矛盾

お次は作曲的な視点(旋法)からみた矛盾
百歩譲って、Cメジャースケールではなく、DmではDドリアン、G7ではGミクソリディアンを使うとして、DmではドリアンぽさG7ではミクソリディアンぽさが表現されているのかという点を確認してみましょう。

先程の動画内では私が作ったメロディを紹介していますが、この記事では世の中にある既存の曲を紹介しようと思います。

ドリアンスケールで作られたメロディ

Simon & Garfunkelの演奏で有名な曲です!

ミクソリディアンスケールで作られた曲

映画タイタニックのダンスシーンで流れてた曲ですね

こういったメロディの運びのことを「ドリアン」とか「ミクソリディアン」“らしい”メロディといいます。
ではジャズやポップスにおいて、Dm7 G7 Cメジャーという流れの中でドリアン感とか、ミクソリディアン感て切り替わっているかというと、それはちょっと違うんじゃないかと思いませんか?旋法的な立場から、コードごとにミクロにスケールを選定する作業は、矛盾しているように見受けられます。
ふと疑問に思ったんですけど、アベイラブルノートスケールを説明している教材で、ドリアンスケールらしいメロディ、ミクソリディアンスケールらしいメロディを音や譜例で説明している教材を見たことありますか?私は1冊しかみたことないです。モード旋法のイメージが自明なので説明を省いているのか、もしくは案外みんなよく分かってないまま説明しているのか。
アベイラブルノートスケールを説明する時に、なんの断りもなくドリアンやミクソリディアンという、大昔からモードという別ジャンルで使用してきた言葉を使用するのは少し強引に感じてしまいます。

アベイラブルノートスケールの改善したいところまとめ

ここまで、つらつらとアベイラブルノートスケールの分かりづらい点を書いてきましたが、要点をまとめると

・スケール構成音が変わっていないのに、変わっているいるように見える
・モードの概念と名称が被っているせいで煩雑になっている
分かりにくい点は、この2つです。
私は、なにもアベイラブルノートスケールが、役に立たないと言いたいわけではないんです。こういった分かりにくい点をしっかり整理して、改めて演奏者が使いやすいようにカスタマイズした方がいいのではないかと考えているのです。

アベイラブルノートスケールの考え方を自分が使いやすいようにカスタマイズする

すっかり前置きが長くなってしまいましたが、ここからが本題です。
念の為断っておきますが、いわゆるバークリーメソッドと呼ばれる、コードシンボル表記と、アベイラブルノートスケール自体はとても画期的な発明であることは間違いないと思います。しかし、使いにくい部分や初心者にとって分かりにくい部分があるのは事実です。なので少しずつ自分が使いやすいようにアレンジといいますか、カスタマイズしていくべきだと考えています。
ここでは演奏に特化したアベイラブルノートスケールのカスタマイズ術を紹介したいと思います!

ぴゅら子流アベイラブルノートスケールのカスタマイズ方法

前提として私はジャズプレイヤーなので、コード譜面からジャズフレーズが広がっていく音のイメージを持つ必要があります。それでは従来のアベイラブルノートスケールの捉え方とぴゅら子のアベイラブルノートスケールの捉え方の違いを見ていきましょう!

既存のアベイラブルノートスケールの考え方

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※既存の考え方については、ここでは説明を割愛させていただきます。

ぴゅら子のアベイラブルノートスケールの考え方

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こうやってみるとぴゅら子の考え方と従来の考え方は全然違いますね。
それでは、こちらのメモの解説をしていきます!

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