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ミッションドリブンなチームづくりをオンラインでやった話

2020年4月、新たに発足された組織に配属されました。4月下旬、部のミッション(活動方針)が周知。各々が自律的に業務遂行できるようにチームの活動計画や個人目標をメンバー全員で策定することになりました。

そこで次のような狙いを取り込んだワーク設計とファシリテーションを私が行うことになりました。

組織の活動計画と個人の目標(やりたいこと)を連動させる、チーム全員が互いを知り合う、それぞれの経験・提供価値を整理する・・・etc.

部員は10名、半数は会ったことがないメンバー。コロナ渦による緊急事態宣言下、全員がテレワークの中で臨みました。

はじめに設計の考え方と具体的な進め方について、その後オンラインでの工夫点、最後にまとめとしてミッションドリブンの必要性について書き留めたいと思います。

組織と個人のつながりをデザイン

Must(組織としてやるべきこと)、Can(個人が出来ること)、Will(個人のやりたいこと)をそれぞれが意識出来るようなワークを検討。次の3つのステージで進めることにしました。

Stage1:組織とそこに属する個人としてやるべきことを明確にする
Stage2:個人としてどう成長していきたいかを考える
Stage3:組織と個人が何を目指すかを明確にする

具体的に設計した進め方です。

図1

ワークシートも作成しました。

図2

それぞれのワークの意図とつながりを示した全体像です。

図3

ビジョンを具体化し施策へ落とし込む:Stage1

まずは組織ミッションをもとにMust(組織としてやるべきこと)を明確にすることから始めました。

5つの問いをつくり、それを各々が考え、互いに共有しブラッシュアップする進め方にしました。

(1)我々は何を目指すか?1年後具体的にどうなっていたいか?
 具体的なビジョンを共有できれば環境が変化してもビジョンに向けて方向転換を各々ができるようになる

(2)我々は何を基準に進んでいくか?何を大切にするか?
 ビジョン実現に動き出すにあたり、何を大切にするかという価値観に対する共通認識が持てれば、自律的に行動しやすくなる

(3)我々はビジョンをどのように実現していくか?その方向性は?
 ビジョン実現の方向感が定まれば、施策の一貫性が保てる

(4)我々はビジョン実現のために何をやるべきか?
 戦略をもとにビジョン実現の施策を立てれば、何のためにその施策を行うか、その意図が理解しやすくなる

(5)我々が優先すべき施策は何か?
 施策の優先度に対する共通認識を持つことで、新たな施策について優先度を自己判断しやすくなる

所謂ミッション-ビジョン-バリューのフレームワークを参考にしています。ただ、困ったのはミッション、ビジョン、バリューに明確な定義や相互の位置づけが存在しないことでした。書籍やWEBサイトでも粒度感や相互の位置づけはバラバラです。そこで今回は以下のサイトの定義を参考にしました。

ビジョンの粒度感については、メンバーにも戸惑いがありました。今回は、ビジョンの検討にあたって、出来るだけ具体的に未来の状態やそこに関わる自分をイメージできるように促しました。

ビジョンは具体的にイメージできる方が具現化しやすくなるからです。一方で、具体的にイメージすると既存の延長や今できることになりがちです。

企業全体や数年後のビジョンであれば、壮大で抽象的なものも必要だと思いますが、今回は組織の最小単位である部のビジョンです。チャレンジングかつ出来るだけ具体的に考えられるようにチームのイメージを合わせました。

以下はビジョンについてみんなで考えた際のワークボードです。

図4

経験を振り返り、自分のこれからを考える:Stage2

次に実施したことは、個人としてどう成長していきたいかを考えることです。

CV(履歴書)をつくることでこれまで各々がやってきたことを整理し、今のスキルやノウハウを棚卸しました(Canの洗い出し)。そして前述のビジョン実現を通して自分の強みを活かすためにできること、自分の強みの幅を拡げるためにできることを考えました(Willの抽出)。

(1)CVの作成
 自分は何ができるのか、チームにどんな貢献ができるかという棚卸になる

(2)ビジョン実現を通して私は何ができるか?何をしたいか?
 自分ができること、やってきたことから自分の将来を見据えることで、今の業務環境下でやりたいことが見えてくる

みんなCVをつくるのは入社時以来です。これまで企業内でCVをつくったことがなく、ましてや組織の中で共有することもありませんでした。戸惑いも多いと想定していましたが、そうなりませんでした。互いのことを知る良いきっかけになったという声が多くありました。

以下はみんなで行ったワークの様子です。

図5

Must、Can、Willを意識して目標をたてる:Stage3

最後に、これまで検討してきたことから組織と個人が何を目指すかを明確にしていきました。

(1)我々は何を目標にすべきか?
 組織としてやるべきこと、自分ができること、やりたいことから具体的な目標を導くことができれば、三方よしにつながる

(2)OKRの設定
 具体的な成果目標の設定により組織や自分の成長を可視化できるようになる。組織やメンバーの透明性が上がっていく

目標の設定はGoogleで使われているOKR(Objectives and Key Results)を採用しました。OKRとは、次の 2 つの問いを明確にすることです。

・自分は何を目指したいのか:この問いに対する答えが目標
・目標までの到達度をどのように測ればよいか:この問いに対する答えがマイルストーン(成果指標)

詳しくは以下をご覧ください。

私の所属する企業では半年に一度目標設定というものを行っており、それが人事評価につながります。悩ましかったのが、その目標設定とOKRの違いでした。

達成できるかどうか、ギリギリのチャレンジングな目標、指標を設定する(3~4割は達成できなくても仕方ない)OKRに対し、目標設定は達成できたか、組織に貢献できたかが評価につながります。

そこで今回は、OKRは個人のチャレンジ宣言と位置づけ、目標設定とは切り離しました。みんな記述慣れしていなかったので、記載内容の粒度感なども不問にしました。まずはやってみることを優先させました。

以下はみんなで行ったワークの様子です。

図6

そもそもなぜこんなことを行ったのか

今回、チーム全員で部のビジョンを決め、活動の軸となる戦略を考え、活動内容を具体化し、目標を設定しました。

企業パーパスの再設定、ジョブ型制度の導入、テレワークを前提とした働き方への移行、アジャイルな組織運営・・・。今(2020年)、トップのリーダーシップのもと企業一丸で変革に向け取り組もうとしています。

今後求められるのは、一人ひとりがプロフェッショナル性をもって、目的を遂行出来ること。組織の言われた通りに動くのではなく、自らの強みを発揮し、チームメンバー同士で相乗効果を発揮することです。また常に成長し続けないと生き残れなくなってしまうかもしれません。そういった将来を見据え、一人ひとりが組織と個人の成長を考えながら自律的に行動して欲しいという組織(上司)の意向がありました。

全員初めての経験だったようですが、チームメンバーからは「お互いのことを知るきっかけになった」「共通のビジョンを共有できて良かった」などの声が多くあがっていました。

なお、今回は緊急事態宣言下のため全てテレワークでした。ここからはオンラインワークを設計した際の工夫点について記述したいと思います。

オンラインワーク設計の考え方

参加メンバーは全員オンラインワークショップは初めてでした。オンラインだけでなく、ワークショップ形式で部のビジョンや活動内容を決めていくことも初めてだったようです。

本来であれば、普段と場所を変え、一日がかりで行う、もしくは合宿形式で行うような内容です。

しかし、今回はテレワークが大前提。そこでオンラインの特性を考えてみました。

・時間と場所に囚われない
・個の集中に向いている
 ただし集中力の持続には限度がある
・ツールを使えば時間が空いても連続性を保ちやすい
・ツールを使えば空間内を自由に移動できる

そこで、共創の中に独創を取り込むという方針を立ててみました。

具体的には以下のようなことを設計では意識しました。

・個人ワークとチームワークを組み合わせる
・チームワークの中にも個人ワークを入れる
・ワーク時間は最大30分程度
・インタラクションの切り替えはこまめに
・一緒にみると、互いをみるを組み合わせる
・全体を俯瞰できるようにする
・他の人のアイデアを自由にみれるようにする
・他の人からのフィードバックを得やすくする

実際のスケジュールは以下のようになりました。個人ワークはチームワークの合間に各自で行いました。検討が延び、当初想定よりもチームワークを2回増やしています。

4/28:部の方針共有 1h
5/13:具体的なワークの進め方を共有 0.5h
5/15:チームワーク① 1h
5/19:チームワーク② 1h
5/20:チームワーク③ 1.5h
5/22:チームワーク④ 1h
5/26:チームワーク⑤ 1h
5/28:振り返り会 1h

事前学習なしで使えるツールを活用

今回使用したのはZoomとGoogle Jamboardです。全員オンラインワークは初めての経験。当然オンラインホワイトボードなどのツールを使ったこともありませんでした。そのため、できるだけシンプルで、説明なしで使えるものを選びました。

もっと便利で色々できるツールもありましたが、無料で使えてサインアップやサインインなどもなく使えるものを選びました。

ワークをやっているともう少し機能が欲しいと思ったこともありますが、事前学習なしでやるにはJamboardはちょうど良かったです。実際、みなすぐに使えるようになっていました。

まとめ:ミッションドリブンはなぜ必要か

実際やってみて、チーム活動や自分の職務がどのように組織や企業に貢献していくかを理解するには良かったと思います。またそれが個人のスキルや今後にどう役だっていくかも意識出来たと思います。

ミッションドリブン(昨今はパーパスドリブンとも言われますがここでは明確な違いはないものとして扱います)は、なぜ必要か。本当の目的を見失わないためだと私は思います。

目的と手段は粒度によって変わっていきます。企業が掲げた壮大な目的を実現するための手段は、その下の組織では目的となり、その目的を達成するための手段は、さらにその下の組織では目的となります。抽象と具体のレベル感の違いです。

自分がやっていることがどの粒度にあるのか。それが理解できていないと、手段である組織の存続そのものが目的になる可能性があります。

具体的な目的(手段)は非常に重要であるものの、前提が崩れたときに方向転換しにくくなります。抽象的な目的は、前提が崩れにくく、方向転換の軸にはなるものの具体化できず終わってしまうということも多々あります。

また企業や組織に属する人によっても、認識しているレベル感は様々です。どちらが良い、悪いではなく、両方必要であれば、今それぞれがどのレベル感や前提で物事を捉えているかを認識し合うことがとても重要なことではないかと思います。

今回、部の中で実施したことが、その一助になれば良いなと思います。