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【#31】Dr.タカバタケと『彼女』の惑星移民【創作大賞2024参加作品】
【本編連載】#31
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『西暦3230年8月(新星1年10月 青日) エリンセ 大統領官邸にて』
ノボー、ヤマバ、アンジョー3人(+マスター)との会食の2日後
僕は質問の答えを聞いた後、握手をするために前にすすんだ。
大統領はゆっくりと立ち上がり、デスクの前まで歩いてきた。
大柄に見えたその体は、立ち上がると僕よりも小さく、見下ろす形となった。
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「大きいな」
大統領が呟く。
その時、大統領の手が僕の頭のほうに伸びてきた。とっさのことで目を瞑ってしまった僕の髪に、ふわりと柔らかな感触がした。
「よく頑張ったな」
大統領の優しい声が聞こえた。どうやら頭をなでられているようだった。
「お前たちはよく頑張ったよ。コシーロ、ユーリ、ヤマバ、アンジョー……。シー、そしてノボー、ありがとう」
大統領の手は、大きく、熱かった。
その手のぬくもりを感じながら、僕は自分の中からすでに政府に対するわだかまりがなくなっていることに気が付いた。
それから、僕たちはがっしりと握手を交わした。大統領は僕の眼をしっかりと見ながら、つかんだ手を強く握った。
「元気でな」
僕もそれに応え、その優しい目を見ながら、強く握り返した。
「大統領もいつまでもお元気で」
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大統領は目尻に皺を寄せて、嬉しそうににっこり笑った。
僕は政府専用自動運転機で送られながら、ぼんやりと今日の出来事を反芻していた。
なんだか狐に化かされたような気分だった。でも、この心地よさはなんだろうか?
AI新法を聞いて以来、ずっと体にまとわりついていた黒く重い泥が、すべて流れ落ちたような爽快感があった。
ヤマバが大統領を「あのおっさん」と言い、「好きだ」という気持ちがわかる気がした。
部屋に戻ると、「ヤマバさんから山ほど連絡きてまっせー。ヤマバさんから山ほど連絡きてまっせー。ヤマバさんから山ほど連絡きてまっせー」と、ボローが騒いでいた。
「そうだな、ヤマバに報告しなきゃいけないなぁ」
ヤマバに伝えよう。地球に帰れること、シーに会えること、そして大統領のこと。
嬉しかったことを聞いてもらえる相手がいることは、幸せなことだと改めて感じた。
ヤマバとの回線を切った後は、強烈な眠気がに襲われた。
アルコールをとらず眠るのは、この星に来て初めてかもしれない。
心地よい感覚の中、僕は眠りに落ちていった。
翌日、テキストアラームもなしに目が覚める。
白日の6:00、ちょうど朝焼けの時間帯だ。
僕は黒にしてあったウインドスクリーンを透過させる。
目の前の世界は朝焼けで琥珀色と赤色に染まっていた。
白日の朝焼けは地球と似ている。
「美しいなぁ」
美しい。
新しい星の希望の朝だ。
なんて美しいんだ。
自分の中から、これまで毎朝感じていた絶望感が消えていた。
『私たちは前に向かって進むしかないの』……か。
マスターの声が聞こえた気がした。
この星で残された時間。マスターの言っていたこと、聞いてみるのもいいかもしれない。
この星の恒星は人々に希望だけを届けていた。
僕は輝く朝日を見ながら、これからこの星で何をやりたいかを考えていた。
8章 終
#32👇
6月23日17:00投稿
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【語句解説】
(別途記事にしていますが、初回登場語句は本文に注釈してあります)
【1章まとめ読み記事】
【4つのマガジン】
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