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【#47】Dr.タカバタケと『彼女』の惑星移民【創作大賞2024参加作品】

【本編連載】#47

視点:アンジョー・スナー24歳
『西暦3230年 12月25日 エリンセ』

 西暦3230年12月25日(新星1年年末)エリンセ
ノボー地球出発の日


 政府専用ターミナルでの見送りは少数だった。
 大統領、コシーロ教授、ユミさん、ヤマバ、私。(マスターは来たがっていたけど一般人はNGだった)。
 じつは、みんな二日酔い。
 まさか、大統領まで来て「テッラ」で宴会をするとは思いもしなかった。
 
 大統領がノボーに声をかけた。
「ノボー、昨日は楽しい夜だったな。うむ。ここからはお前自身の人生だ。自分の目で事実を見つめ、自分自身で決断していくんだ」

「わかりました」
 2人はそう言って、握手を交わした。

 大統領と入れ替わるように、コシーロ教授がノボーの前に立った。
「ノボー君。君には私たちにない特別なひらめきがある。それは今後の君たちの未来を作る力強い武器だ。過去をしっかり受け止め、その上で未来に進んでほしい」

「はい」

 ユミさんがノボーの前に来ると、右手を伸ばし、その肩にポンと手を置いた。
「ノボー君。本当にありがとう。あなたのおかげでいろんな人が救われたわ。そしてあなたには、まだまだたくさんやるべきことがあるわ。ファイト!」

「ありがとうございます」

 ユミさんに続いて、ヤマバがノボーの前に立った。
「これで約束は果たせそうだな。なに、エリンセとアンジョーのおもりは俺に任せとけ」

「ああ」
 2人はコブシとコブシをぶつけた。

 次は、私の番だった。
 ノボーの前に立つと、ノボーは研究室にいたころと同じ優しい目で、私を見つめていた。
「えっと。ノボー。あなたは、バカで嘘つきだわ。
でも大切な仲間だから。また逢えたらいいね」

 ノボーは、うつむいてしばらく黙った後、そのままの姿勢で。
「ごめん」と言った。

 私が手を差し出すと、顔を上げその手をしっかりと握り返してきた。
 人のぬくもり、それを初めて感じた日。初めてユミさんと握手したあの日から、私はずいぶん遠くに来た。
 
 
 ノボーは船に乗り込んで、1人で宇宙の遠くに飛んでいってしまった。
 その機体が見えなくなるまで私は1人、最後まで見送った。

「まだよ、まだ。まだ私たちの使命は続いているはずよ」
 そう自分に言い聞かせて、私はみんなの後を追いかけた。

10章ー2 終

#48👇

7月9日17:00投稿

【語句解説】

(別途記事にしていますが、初回登場語句は本文に注釈してあります)

【1章まとめ読み記事】


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