パーキンソン病のリハビリテーション

こんにちは, ぴてぃです.

今日はパーキンソン病のリハビリテーションについてご紹介していきたいと思います.是非参考になればうれしいです!それでは行ってみましょう!

パーキンソン病(以下,PD)は,中脳という部分の黒質にあるドーパミン細胞が減っていってしまうことで,PDの各症状を表します.日本には15~18万人の患者がいるとされており,発症は50~70歳に多く見られます.その中で40歳以下の発症では若年性PDと呼ばれています.全世界でも患者は多く,2040年までに患者数は現在の2倍に増加することが研究報告されています.現在の科学では具体的な発症機序が解明されているわけではなく,根治的治療は現在の医療では行われていません.しかし,薬剤治療をはじめ外科的治療,リハビリテーションはPDの症状緩和に効果的である事は世界的に示されています.最近ではIPS細胞などを利用した研究(現在進行形)や細胞移植や遺伝子治療等の多彩な治療技術が進歩してきています.しかし,一般の方に治療手段として確立するまでは,治療を受ける患者の身体の安全や副作用,そして何よりも症状に対してどの程度効果があるのか等を何相にもわたる実験を行います.より効果的で患者の生活がより良いものになる治療法の早期の確立が待たれます.
PDは,身体症状や日常生活動作能力により重症度(が示されています.ステージ1~5まで示されています.


・Hoehn&Yahr(HY)の重症度分類
Stage0 症状なし.
Stage1 パーキンソン症状が一側に見られる,日常生活に介助は必要としない.
Stage2 パーキンソン症状が両側に見られる,日常生活に介助は必要としない.
Stage3 両側に軽度~中等度のパーキンソン症状がみられる.バランス不良が目立つ(姿勢反射障害),一部に近くに見守ることや小さな介助が必要な場合もある.
Stage4 症状が高度になり,日常生活に介助を要する.しかし,介助なしでも歩くことが可能な場合もある.
Stage5 更に症状が高度になり,日常生活は介助なしではベッド上や車いす.


・厚生労働省の生活機能障害分類
1度 日常生活,通院にほとんど介助を必要としない
2度 日常生活,通院に部分的な介助を要する
3度 日常生活が全面的に介助を要し,独立して歩行や起立が困難

この分類により患者の生活状態や運動機能を大まかに把握することができます.ここで重要になるのは「難病医療費助成制度」による公的支援を受けるためにこの分類を指標として評価されます.指定難病の認定にはHY分類でSTAGE3以上,厚生労働省の生活機能障害分類では2度以上が指定難病の対象となります.
PDには4大運動症状があります.以下に紹介します.
・固縮
筋肉に力が持続的に入り,関節を動かそうとすると針金を曲げるときのように抵抗がある(鉛管様固縮),車を回すようにガクガク抵抗をしてくる(歯車様固縮)などが良く見られます.
・安静時振戦
何もしていない時に指先や足の先をはじめ,身体の各部位が一定パターンで動くというものです.動作をするときにはそれが止まるのが特徴です.
・姿勢反射障害
人間は姿勢を維持するために脳が身体を自動で動かしてくれています.しかし,PDではその機能が低下し,転びそうになると無抵抗に転んでしまうのが特徴です.
・無動・寡動
運動を始めることが苦手になり,些細な動作を出来なくなってしまう症状です.自発的に動作することが出来なくなってしまいます.

このような症状が出ることが多く,特に動作中のバランスが悪くなることで日常生活に不自由を伴う場合も多く,バランス不良が大きく影響し動作中に転倒してしまうことで骨折をしてしまうことで入院や骨折治療のための安静により運動不足が長期化してしまい,筋力低下が進行し,結果としてさらに日常生活に不自由が生じてしまいます.更にPDでは運動症状だけでなく,非運動症状として抑うつ傾向になったり,認知機能に問題が生じることや自律神経機能の低下により便秘や血圧の不整により立ちくらみやめまいを生じることもあります.

現在リハビリテーションでは運動療法の効果が以前より示されています.
私が臨床で行っているリハビリテーションプログラムの一例をご紹介したいと思います.
・関節可動域訓練
→PDでは固縮という筋緊張の影響を受けて,関節が動く機会が少なくなってしまいます.人間の関節は関節の動く機会が減ることで,筋肉の硬さが生じていまし,結果として筋肉の長さが短くなることで関節の動きが制限されてしまいます.そして関節によっては,その他の組織(関節を包む膜,潤滑液の役割を持つ脂肪などなど)の硬さが出現することで,関節の運動がうまく起こらず関節が柔らかく動かず,時には痛みを生じてしまうこともあります.
 そのためストレッチを主として関節の柔らかさを維持,改善するためにアプローチを行います.ストレッチ方法は現在世間で行われているあらゆる方法が適応になりますが,まずは痛みが伴わないレベルで筋肉を伸ばしていきます.目的によりストレッチの時間を変えることも重要です.運動前などには反動を利用する形で複数回伸張刺激を加えます.もう一つは筋の柔軟性を増加する方法です.柔軟性を向上させるためには持続的な伸張刺激が必要となります.科学的には10秒~30秒程度持続的に伸ばし,それを3~5セット行うことが推奨されています.

・運動療法
→運動療法は以前よりPDの運動症状の改善や抑うつなどの非運動症状にも効果的であると報告があります.運動の方法は環境やその方の体力によってそれぞれ方法を変えているのが現状であり,以下にご紹介する運動方法は一例としてご理解いただき,それぞれの条件に合わせてメニューを調整していただくことがより良い効果を得るために重要となります.運動を行う為の最重要点は,運動によってお怪我をしないことです.せっかく頑張ったのに痛めてしまったり,最悪の場合骨折などの大事故につながる場合もあります.手すりや体重がかかっても動かないようなものを支えとするようにしてください.
1. バランス訓練
→バランス訓練では,主に動作時の不安定感に対して行われる練習方法です.実際にリハビリでは片足立ちや継ぎ足歩きなどを練習メニューとすることが多いです.練習の中から動作時に自分がどの方向に不安定感が強いのかを探るいい機会にもなります.
2. 立ち上がり運動
→立ち上がり動作は生活の中で欠かせない動作の一つです.PDの場合後方へのふらつきが良く見られます.そして,ふらつきがないとしてもお尻が」浮かすことができないことや,何かに強くつかまりながら立ち上がろうとする等することがあります.練習としては,「お尻を浅くかけ」,「骨盤をしっかり起こす」,「お辞儀するように体をしっかり前に傾ける」,「お尻を先に浮かすように意識してから身体を起こす」という順番で意識しながら動作を行うと効果的です.
 立ち上がり運動では足全体の筋肉を使うことに加えて身体の傾きを利用することで,骨盤周囲の筋肉,腹筋や脊柱起立筋等あらゆる筋肉にトレーニングが行えます.
3. 歩行訓練
→歩行訓練は生活していると必ず行っている動作です.だからこそ日常の生活の中で練習を行うことは効率的で,工夫することで効果も得やすい運動になります.PDの方は歩行中に生じる問題として「すくみ足」,「小刻み歩行」,「突進歩行」などが良く見られる症状です.すくみ足では運動のきっかけを作りことが大事です.ご自身で1,2,1,2と声掛けをすることや,「よいしょ!」と掛け声を取ること,音楽などリズムに合わせて歩くことなどが効果的である場合が多いです.
小刻み歩行や突進歩行は多くはPDによく見られる前傾姿勢(猫背)が重心の位置を変えることで生じていると考えます.その為ゼ銭をいつもより遠くに置くことや姿勢をまっすぐによることを意識することも重要です.腰のみ反ると腰痛の原因となる場合も多いため骨盤をまっすぐに立てるようにすると腰痛を予防しながら姿勢を治すことができます.

4. 階段昇降
→階段の昇り降りは現在の日本家屋では多くのお家で設置されています.自分のお部屋や離文具のある場所などあらゆる生活環境によって利用機会があります.つまずきなどにより動作の不安定性から階段は使いづらくなることが想像されますが,PDの場合は反対に動作がスムーズになることが多いです.これは段差という目印がポイントとされています.しかし,それぞれの筋力により動作の安定性の基準は変わってきますのでつまづいたり,バランスを崩さないように手すりなどを使用することが推奨されます.
練習方法としては,手すりを使用し,まずはつま先が断裁に接触しないように大きく動作することを意識するように階段の上り下りをすることを意識しましょう.そして段差を実際に目で見て行うことも動作を円滑に進めるために重要であり,段差に接触する際に「足を上げるのがちいさかったかな?」などの気づきを得る大切な機会になります.


ここまで運動療法の一例についてご紹介してきました.繰り返しになりますが,運動によりお怪我につながらないようにあらかじめ準備をすることが重要です.そして,運動による必ずついてくる疲労(副作用)のコントロールも重要となります.運動は数日の介入では効果がなかなか得られません.そのため持続可能なレベルの運動負荷量を設定することが重要です.リハビリを行う際に基準としてもらうのは,翌日の疲労の度合いです.翌日に強い疲労によりやる気や痛みに伴う動作困難を生じてしまう場合は負荷量が多い状態です.翌朝までの疲労感,昼には消えていますなどの状況では適切な負荷量といえるでしょう.
 このように運動方法は多数ありますが,どの程度やるかは工夫が必要です.セラピストは上記の内容を考慮し指導すること,患者自身は運動後の自信の体調を見ながら運動負荷量を設定し,より効果的な運動機会を作りましょう.

~参考文献,資料~
・難病情報センター 診断・治療指針(医療従事者向け)>パーキンソン病(指定難病6)
・中山亮二 パーキンソン病の障害評価とリハビリテーション Jpn J Rehabil Med 2013; 50 : 658-670
・日本理学療法士協会 パーキンソン病 理学療法ガイドライン
・中馬孝容 パーキンソン病に対するリハビリテーション 神経筋疾患のリハビリテーション―Up to Date- Jpn J Rehabil Med 2016 : 53 : 524-528
・寄本恵輔 神経難病リハビリテーション 100の叡智 株式会社gene 2018

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