クライバーンコンクール:セミファイナル2日目の見どころ
クライバーンコンクール、セミファイナル2日目から3日間は、現地では午後と夜のセッション。午後にソロリサイタルを2名、夜にコンチェルトを3名、という配置です。日本では、6/10(金)の早朝4:30に始まるソロリサイタルの部と、朝9:30に始まるコンチェルトの部からなります。
コンチェルトの部、2人目に、日本/フランスの田所光之マルセルさんが出演です。6/10(金)午前10時頃。
6/10(金) リサイタル【2】
6/10(金) コンチェルト【1】
ここでは主に、リサイタル部分の聴きどころを総ざらいしておきます。
リサイタルに登場する二人、Clayton StephensonとChangyong Shinは、いずれもアメリカ東海岸の名門ニューイングランド音楽院で、Wha Kyung Byun ホァ・キュン・ビュン先生に学ぶ同門です。
ニューイングランド音楽院については、以下の記事で少し詳しく触れましたが、ジュリアード音楽院やカーティス音楽院と並んで、現在、アメリカのトップ教育の中心地のひとつとなっています。
たとえば、今回最年少18歳のセミファイナリストYunchan Limを韓国(韓国国立芸術大学 Korean National University of Arts)で教えているピアニストのSohn Minsooも、ニューイングランド音楽院でWha Kyung Byun教授に学んで国際コンクールに入賞した後、韓国国立芸術大に着任した方ですから、ニューイングランド音楽院とWha Kyung Byun教授が長年にわたって素晴らしい教育を続けていることが分かります。
Changyong Shinのほうは、カーティス音楽院・ジュリアード音楽院で名教授ロバート・マクドナルドに学び、そこからニューイングランド音楽院でさらに学んでいますから、東海岸の名門音楽院を渡り歩いてスキルアップしていることになります。
アメリカの音楽教育を背景にもつ二人のピアニストのリサイタルです。
6/10(金) リサイタル【2】
4:30am Clayton Stephenson(アメリカ、23歳)
ベートーヴェン:ピアノソナタ第21番 ハ長調 Op.53 「ワルトシュタイン」
リーバーマン:ガーゴイル Op.29
ブラームス:ピアノソナタ第1番 ハ長調 Op.1
地元アメリカのピアニストは、いよいよClayton Stephenson(23歳)ただ1人となりました。ベートーヴェンの「ワルトシュタイン」ソナタと、ブラームスの若書きの1番のソナタという重厚なプログラムのあいだには、アメリカのピアニストらしく、アメリカの現代ピアノ作品の定番、リーバーマンの「ガーゴイル」を持ってきました。国際コンクールで若いピアニストによって数多く演奏されるほか、ユジャ・ワン、スティーブン・ハフ(今回の審査員でもあります)ら世界的なピアニストもレパートリーに入れている佳曲です。スティーブンソン自身の過去の演奏を、彼のYouTubeチャンネルから。国際コンクールを聴くときに出てくる可能性のある作品です。
スティーブンソンは、ファイナルのコンチェルトでもガーシュインを選んでいました。アメリカのピアニストの面目躍如です。
5:50am Changyong Shin(韓国、28歳)
J.S.バッハ:トッカータ ニ長調 BWV912
シューマン:フモレスケ 変ロ長調 Op.20
プロコフィエフ:ピアノソナタ第7番 変ロ長調 Op.83 「戦争ソナタ」
Changyong Shin(韓国、28歳)のプログラムは、クォーターファイナルに続いて、ドイツ系の作品とロシアの作品との組合せ。非常にバランスの取れた、ヴァラエティに富んだ3曲を組み合わせたセミファイナルのリサイタルは、聞きごたえ十分です。
現地の夜の部は、いよいよコンチェルトがスタートします。4人ずつ、3日間にわたってオーケストラとの共演が行われます。モーツァルトの協奏曲については、こちらもご覧ください。
注目はやはり、6/10(金)10時、2人目で登場する日本の田所光之マルセルさん。第27番という最後の番号を持つ清冽なコンチェルトにどんな命を吹き込んでくれるか、期待が高まります。
6/10(金) コンチェルト【1】
9:30am Honggi Kim(韓国、30歳)
協奏曲第20番 ニ短調 K.466
10:00am Marcel Tadokoro 田所光之マルセル(フランス/日本、28歳)
協奏曲第27番 変ロ長調 K.595
11:00am Uladzislau Khandohi(ベラルーシ、20歳)
協奏曲第9番 変ホ長調 K.271 「ジュノーム」
11:30am Dmytro Choni(ウクライナ、28歳)
協奏曲第20番 ニ短調 K.466
それぞれのピアニストの魅力を存分に味わえる1時間のソロリサイタルに加え、アンサンブル能力や独自性が要求されるモーツァルトのコンチェルトがどのような影響を与えるか、ここからが本当に「クライバーンコンクール」の始まりです。
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