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クライバーンコンクール:1次予選2日目吉見友貴さん登場。プログラムと聴きどころ

ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール、3日間ある1次予選の2日目も、午前・午後・夜の3セッションです。

第5グループ(現地午後=日本時間早朝5:15)に、日本の吉見友貴さんが登場です。吉見さんは高校2年の2017年、第86回日本音楽コンクールで史上最年少優勝を飾って以来の活躍は目覚ましく、最近では2021年にエリザベート王妃国際コンクールピアノ部門でセミファイナルまで進んでいます。

何といっても、吉見さんの1次のプログラムに驚きます。

ハフ:Fanfare Toccata(委嘱新曲)
リスト:ピアノソナタ ロ短調

なんという直球勝負。共通課題の新曲以外は、リストのソナタのみという潔さです。彼の全身全霊のリストソナタに期待特大です。

2日目の出場者・タイムテーブル・曲目(日本語)をまずは掲載します。注記がない限り【日本時間】での表記です。

第4グループ 6/4(土)0:00(現地6/3(金)10:00am)

0:00 Clayton Stephenson(アメリカ、23歳)
ハイドン:ソナタ ニ長調 Hob.XVI:37
ハフ:Fanfare Toccata(委嘱新曲)
ストラヴィンスキー=アゴスティ:組曲「火の鳥」
J.シュトラウス=ゴドフスキー:「こうもり」の主題による交響的変容

0:45 Yangrui Cai(中国、21歳)
ハフ:Fanfare Toccata(委嘱新曲)
リスト:「詩的で宗教的な調べ」より「孤独の中の神の祝福」
ブラームス:パガニーニの主題による変奏曲 Op.35 第1巻

(20分休憩)

1:45 Sergey Tanin(ロシア、26歳)
C.P.E.バッハ:ソナタ 嬰ヘ短調 H.37
ハフ:Fanfare Toccata(委嘱新曲)
リスト:巡礼の年第2年「イタリア」より「婚礼」
リスト:巡礼の年第3年より「エステ荘の噴水」
メシアン:「幼子イエスに注ぐ20のまなざし」より「喜びの精霊のまなざし」

第5グループ 6/4(土)朝4:30(現地6/3(金)2:30pm)

4:30 Albert Cano Smit(スペイン/オランダ、25歳)
J.S.バッハ:「フーガの技法 BWV1080」より「コントラプンクトゥス I, IV, II, XIIIb, XIIIa, V, IX」
アルベニス:「イベリア」第1巻 より 「エヴォカシオン」「港」
ハフ:Fanfare Toccata(委嘱新曲)

5:15 Yuki Yoshimi 吉見友貴(日本、22歳)
ハフ:Fanfare Toccata(委嘱新曲)
リスト:ピアノソナタ ロ短調

(20分休憩)

6:15 Vitaly Starikov(ロシア、27歳)
ハフ:Fanfare Toccata(委嘱新曲)
ドビュッシー:版画
ワーグナー=リスト:歌劇「タンホイザー」序曲

7:00 Xiaolu Zang(中国、22歳)
ハフ:Fanfare Toccata(委嘱新曲)
シューマン:フモレスケ 変ロ長調 Op.20
スクリャービン:ピアノソナタ第4番 嬰ヘ長調 Op.30

第6グループ 6/4(土)午前9:30(現地6/3(金)7:30pm)

9:30 Uladzislau Khandohi(ベラルーシ、20歳)
ハフ:Fanfare Toccata(委嘱新曲)
シューマン:交響的練習曲 Op.13
スクリャービン:マズルカ ホ短調 Op.25-3
プロコフィエフ:4つのエチュード Op.2

10:15 Francesco Granata(イタリア、23歳)
チャイコフスキー:瞑想曲 Op.72-5
ハフ:Fanfare Toccata(委嘱新曲)
シューベルト:ピアノソナタ第14番 イ短調 D.784
ストラヴィンスキー=アゴスティ:組曲「火の鳥」

(20分休憩)

11:15 Yutong Sun(中国、26歳)
ヘンデル:シャコンヌ ト長調 HWV435
ハフ:Fanfare Toccata(委嘱新曲)
リゲティ:エチュード第13番「悪魔の階段」
ベートーヴェン:ピアノソナタ第31番 変イ長調 Op.110

色々な注目ポイントはありますが、今回のクライバーンコンクールで特筆されるのが、アメリカの名門ニューイングランド音楽院に学ぶピアニストの躍進でしょう。ショパンコンクール等ではジュリアード音楽院やカーティス音楽院をご紹介しましたが、これらと並んで今もっとも注目を集めるアメリカの音楽学校といえます。

吉見友貴さんのほか、昨日登場したAndrew Li アンドリュー・リー、本日の最初に弾くClayton Stephenson クレイトン・スティーブンソン、最後に弾くYutong Sun ユトン・ソンらが在学しています。ハーバード大学との交流プログラム(ダブルスクール)にも力を入れており、LiやStephensonらのほか、ショパンコンクールの入賞者で前回のクライバーンの審査員特別賞を受賞したトニー・ヤンもこのプログラムで学びました。

ピアノ科主任は、2019年にピティナでも招聘したBruce Brubaker ブルース・ブルーベイカー。このときに亀井聖矢さんの才能を手放しで絶賛して惜しみないサポートを約束してくださいました。また、角野隼斗さんが尊敬する音楽家のひとりにあげるピアニスト、フランチェスコ・トリスターノの恩師でもあります。

主な教授は、Andrew LiやClayton Stephensonを教えるWha Kyung Byun ホァ・キュン・ビュン先生。そして、吉見さんやYutong Sunを教えるAlexander Korsantia アレキサンダー・コルサンティア先生。ほかに、HaeSun Paik ハエ・スン・パイク先生などです。

また、近年は、ショパンコンクール優勝のブルース・リウらも学んだダン・タイ・ソンや、今回の審査員にも入っているリーズ・浜松優勝経験者アレッシオ・バックスら、超一流の現役ピアニストも教授に着任し、ますます活気を帯びている注目の音楽学校です。

注目コンテスタントのひとりは、すでに他の記事でも紹介したYutong Sun ユトン・ソン(中国、26歳)。ショパンコンクールで日本にも多くのファンを得ました。おなじみ、飯田有抄さんによるインタビューも「ぶらあぼ」にてちょうど公開されました。

もう一人は、Vitaly Starikov ヴィタリー・スタリコフ(ロシア、27歳)。2021年のエリザベート王妃国際コンクールで、日本の務川慧悟さん・阪田知樹さんらに続き、第5位に入賞しています。セミファイナルで聞かせたこのJ.S.バッハなどでは、才能がほとばしっています。

モスクワ音楽院でヴェーラ・ゴルノスターエヴァやエリソ・ヴィルサラーゼ、イタリアのイモラ国際ピアノアカデミーでボリス・ペトルシャンスキーと、名だたる名匠の薫陶を受けています。

週末はじっくりクライバーン漬け。ライブとアーカイブを駆使して、2日目も視聴と応援に熱が入ります。

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