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飯田有抄のショパコン日記7〜ついにワルシャワ入り! ホールの響きに魅せられる

やはりこの時期の渡航は何かと大変で、国やタイミングによって出入国のハードルがなかなかなものだったりします。私は今回フランクフルトで飛行機を乗り換えましたが、乗り換え時の入国審査はピリピリでかなり緊張しました。審査は長蛇の列。1人5〜10分はかかっていたかな。ニコリともしない係の人からの尋問(!)を受けつつ、取材に関するありとあらゆるドキュメントを提示して、きちんと説明して、ようやくパスポートに「ガシャン!」とハンコをもらったときは緊張がとけて泣きそうでした。以前は海外取材でもテキトーに「サイトシーインング」なんつって「サンキュー」なんつって、ささっと通過できていたあの頃が懐かしい......

各国からのコンテスタントたちも、いくらコンクール事務局やポーランド政府が働きかけていたとはいえ、当事者としては少なからず緊張はしたことでしょう。こういうこともひとつひとつ経て、現地に着いて、圧巻のピアノ弾くって、やはり超人集団です。

と、前置きが長くなりましたが、1次予選最終日の10月7日午前、ようやくワルシャワ国立フィルハーモニーに到着できました。これまで可能な限り日本で配信を”リアタイ”してきたので、およそ15時間の長いフライト後とはいえ、「さっきまで画面越しで見ていた遠い国のあそこ」が目の前に現れたようで、このご時世だけになんともいえない感慨がありました。

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会場入口。いよいよだ〜
(写真:飯田有抄/ピティナ)

ホールで私を迎えてくれた(わけではない)素敵なコンテスタントは、韓国のJoo-Yeon Kaさんでした。バルコニー席(2階のステージに向かって左)だったので、椅子にまっとうに腰かけてしまうと、ぐっと身を乗り出さなければまったくステージは見えません。見えないのですが...

余計にその分耳に染みる美音!! すごい。ステージの方からふわ〜〜〜〜っと立ち上る響きがとても柔らかくて、すごいんです!!!これにはもう、いきなり驚きました。ずっと配信で聴いていたのとは、もうまったく情報の質と量が異なるというか...... 全世界の多くの方が配信を見守る中、こんなふうに言ってしまうのはなんだか申し訳ない気もするのですが....... ちょっと面食らうほど、「ホールの音」には異次元感すら覚えました。

このホールは、今年2021年でなんと120周年を迎えるそうです。ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団の拠点でもあり、さまざまなコンサートが日夜行われています。

ここで繰り広げられてきた過去の名演の数々、アーティストたちの息吹、ショパンコンクール奏者たちの熱量、そうしたものをホール全体が吸収し蓄積している。歴史はすごい。時の経過によってしか、生まれ得ないものはやっぱりある。ちょっとスピリチュアルな捉え方かもしれませんが、でも、そういうのって、響きにぜったい関係すると思う。


日頃、日本の素晴らしいコンサートホールでピアノリサイタルを拝聴する機会は多いけれど、このポーランド国立ワルシャワ・フィルハーモニーのホールの音は、これまで体験したどのホールの音とも似ていない。

まずまろやかで、深くて、それでいて煌めきもある。
もちろん、この国際コンクールに臨むほどの洗練された演奏と、スタインウェイ、ヤマハ、カワイ、ファツィオリの技術者たちの粋を凝らしたコンディションのピアノだけに、という部分はあるのでしょうけれども。
それにしても、奏者が繰り出すアタックの瞬間の音色、整理された声部、あえてペダルで滲ませる音の美しい混濁が、本当に耳に心地よく届くので、「あ〜幸せだ〜」と、思わず天をあおいで聴いてしまします。

すると、目が合う(?)んですね。この人と。

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天使に見下ろされ、もとい、見守られながら、いい響きを聴く。最高です。
シャンデリアもゴージャスであります。照明もスキッとした現代風のデザインじゃなくて、こういう、こてこての「ザ・シャンデリア」みたいなのって、やっぱり雰囲気ありますよね。

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バルコニー席からは、審査員団の表情がすぐそばで観察(?)できます。
近っ!

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演奏と演奏の合間、アナウンスが入るまでは、このように会場内で写真を撮っても大丈夫なようです。私はプレスパスを意識的に首からよく見えるようにさげて、撮影するようにしています。
(アナウンス〜演奏中はもちろんNGね。カメラを向けていた人にはすかさずスタッフが駆け寄ります)。

上の座席に写って、休憩中の審査員席のお水を撮ってみました。会場内は暖房がよく効いていて、すこし暑いくらいです。客席にも大胆な肩出しドレスで演奏を楽しむ女性も多く、セーターにジャケットだとのぼせます(苦笑)。先生方、たくさんお水飲んでがんばっていただきたいですね。

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撮影はしていないけど、先生方は黒いファイルをそれぞれ手にもって登場します。どうやら小さな電卓も搭載(?)されているファイルです。点数の計算も煩雑で難しいのでしょうか。おつかれさまです。

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