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CPGへ働きかける ①

前回の記事で、脳卒中リハビリで重要な視点は「自動的に歩くシステム」に着目すること、すなわちCPG(Central Pattern Generator)に働きかけることであることを述べました。

今回はそのCPGに働きかけるために、わたしが普段意識していることを紹介したいと思います。

以前にも挙げたましたが、CPGを働かせるトリガーは以下になります。

① 上肢の後方への振り(back swing)
② ターミナル・スタンスでの股関節伸展
③ ターミナル・スタンスでの下腿三頭筋の伸張

このうち、ターミナルス・タンス(Tst)は非常に重要な意味を持っています。②③の要素を同時に担っているので当然ですよね。これを可能にするのがトレイリングリムといわれるポジションになります。

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トレイリングリムとは上の図のようにTstで股関節が伸展し、足関節が背屈することにより、下腿三頭筋が伸張される肢位のことをいいます。(振り出しの直前)

トレイリングリムをとることによって、下腿三頭筋が発揮する底屈モーメントは最大限となり、重心の前方推進力を生みだします。また股関節伸展により伸張された腸腰筋は、下肢が地面から離れると同時に伸張から解放され、下肢を振り出す大きな原動力となります。

歩行のバイオメカニクスでは一度は学習する部分ですが、このトレイリングリムがCPGを賦活させるトリガーとなっています。
すなわち、

Tstできちんと股関節伸展が出せるか。

CPGに働きかけようとする際に、まず最初に私が意識する点はここになります。もしできなければ、できない理由を考えていきます。

ではTstでの股関節の伸展に関わる要素とはなんでしょうか?

それは立脚中期(Mst)で重心を高く上げられているかどうかです。

立脚初期は重心は一番低い位置にあります。それを立脚中期で高くすることで、その後の立脚後期にて重心が下降し、重心の前方への推進力が加速されます。結果として立脚側の股関節が伸展していくことになります。

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そのためMstできちんと重心を持ち上げられなければ、その後のトレイリングリムにつながっていかないことになります。

ではMstで重心を上方に持ち上げる要素はなんでしょうか?

それは立脚初期であるイニシャルコンタクト(IC)~ローディングレスポンス(LR)にて前上方への加速度を得ることができているかどうかです。

これには踵接地の仕方や十分な荷重、ロッカーファンクションが重要となってきます。(長くなるので解説は別記事にて)

このように、CPGを働かせる要素が立脚後期から立脚中期、そして立脚初期へと歩行周期の流れと逆行しながら出てきます。

歩行は時間的・空間的に連続しているので当然なのですが、これではどこに的を絞ればいいのか悩ましいですよね。

その場合に私は、各歩行周期の難易度でアプローチを考えています。

立脚の後期・中期・初期の中で一番アプローチしやすいのは、中期(Mst)になります。
Mstで重要となるのは、下肢・体幹を鉛直方向に配列し、重心をその上に載せることにあります。

すなわち、立位での荷重練習がそのままMstの練習に応用できます。

後期や初期では、重心を移動しながら下肢・体幹のコントロールするというような難易度の高い練習になります。

わたしは、ある程度立位で麻痺側下肢のアライメントが整ってきたら、立脚初期から中期までのステップ練習。その後、立脚初期から後期までのステップ練習を行うというような流れで行うのがいいかと思っています。

次回からは各歩行周期のアプローチで意識していることを紹介できればと思います。

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