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バルセロナ市内の町クラブで実際に見た本場のトレーニングメソッド

2024/2/28〜2024/3/4
私は約1週間バルセロナに滞在し、複数の町クラブを見て回りました。そこで実際に見たもの、指導者や保護者、選手に直接聞いたことをここに記したいと思います。私が見聞きしたものに限るため、バルセロナ内の全てのクラブに当てはまるわけではないことに留意してお読みください。


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ウォーミングアップ

フィジカルコーチによる指導が行われることが多かった。動的なストレッチ、筋に刺激を入れるトレーニング、ステップ、スプリントが行われることが多かった。あるU13年代のチームでは、練習前にグランド横でフィジカルトレーニングを行っていた。チューブや段差を利用したり、自重で腹筋やスクワットなどを行ったりしていた。コーチがフィジカルメニューを複数用意し、やり方を既にチームに共有済みのため、練習前は自分がやりたいメニューを各自取り組んでいた。とあるU19年代のチームでは、フィジカルコーチの指導のもと、円になって動的なストレッチを行っていたが、それに従う選手もいれば、好き勝手に動いている選手もいた。スペイン人って本当に自由だった。

トランジションを含む多彩なトレーニング

単純なシュートをした後に続けて裏抜けでシュートを打つ練習や、シュートを打った後に続けて守備を行う練習というような、タスクの連続したトレーニングが多く見られた。トランジションを含む多彩なトレーニングがよく見られた。日本で指導したことのある指導者に聞くと、日本人はトランジションが苦手だということを言っていた。攻守の切り替えや、シュートを打った後にもう一度ゴールに向かうというようなトレーニングは日本でももっとやるべきだと感じた。

ビルドアップ

トレーニングの後半にはビルドアップを練習することが多かった。試合を観に行った時も基本どのチームもGKからパスを繋いでいた。相手がバルサやエスパニョールとなると、前線に長いボールを入れる戦い方をしていた。バルサは、相手のプレスにどんなに嵌められてしまってもGKから繋ごうとしていた。ビルドアップに縛られているように見えた。

基礎練習

対面パスや投げてもらったボールを蹴って返す基礎練は見られなかった。基本的にグループでやるトレーニングだった。パスを出して連続して動くというようなトランジションを含むトレーニングがやはり多い印象を受けた。

フィジカルトレーニングについて

フィジカルコーチ

基本的にどのチームにもフィジカルコーチが在籍している。理学療法士は1人いたりいなかったりする。理学療法士の役割は治療をすることだった。フィジカルコーチはウォーミングアップを担当したり、怪我人の別メニューを担当したりしていた。

フィジカルスクール

フィジカルを鍛えるスクールがあり、そこに通う選手がいる。トップレベルの選手に限っては13,14歳の頃からパーソナルトレーナーを雇っていることもある。

長距離走

長距離走はやらない。1時間半程度しかない練習時間の中で長距離走に充てる時間はない。また、スペイン人に長距離走をやらせたところで真面目に走らないことは目に見えている(逆に、日本人は従順で真面目過ぎる)。指導者としてもサッカーを教える仕事なのに長距離走をやらせる考えはない。もし練習時間に長距離走をやらせたら、保護者や他の指導者から「なにやってんだ」と言われる想像ができる。

コーディネーショントレーニング

身体の協調性を高めるコーディネーショントレーニングは、バルセロナの指導者講習会でも教わる。身体を思ったように動かせるように幼少期からコーディネーショントレーニングに取り組んでいる。この辺りは日本でも取り組まれている。

フィジカルトレーニング頻度

U13のとあるチームでは練習前の週2回、U19のとあるチームではクラブにあるちょっとしたジムで各自週3回程度、フィジカルトレーニングを行っている。

メンタルトレーニングについて

スペイン人の特徴

思う通りに振る舞う、無邪気で明るい、メンタルの浮き沈みが激しい、というような特徴がある。

指導者のメンタル

指導者は、選手のために日々働いていても保護者に好き勝手文句を言われる。なぜあいつを使うのか、なぜフォーメーションを変えないのか、何回負けているんだなどなど。実は選手よりも指導者の方がメンタルのケアが必要になる。指導者は日々メンタルにストレスを抱えるし、指導者のメンタルは選手に伝播するからだ。この点についてバルセロナでは2つの取り組みがある。1つ目はメンタルトレーナーがクラブに関わっていることだ。メンタルトレーナーは指導者に対してケアをする。「君は保護者になんと言われるんだ?そうか、それは全部、試合に負けている事実があるだけという意味に変換できるだろう。たくさんの言葉が君にのしかかっているのではない。試合に負けているという事実を言われているだけだ。」このような言葉を通して指導者のものの考え方を支え、メンタルを安定させてくれる。2つ目の取り組みは、クラブコーディネーターの存在である。彼はクラブ全体の代表である。選手に指導をするわけではない。クラブの方針を決めたり、選手を獲得したり、環境を整備したりする。その仕事のひとつに保護者の対応がある。保護者と指導者の間にクラブコーディネーターが介在することで、彼らの衝突を防ぎ、お互いのストレスを緩衝してくれる。

ピリオダイゼーションについて

バルセロナはリーグ戦文化がある。どのカテゴリーも年間を通じて戦うリーグ戦がある。週3回の練習と土日どちらか試合というルーティンになっている。そのため、日々の練習は試合を頭に入れながら取り組む。翌日の朝に試合があるならその日の練習の強度を落としたり、週末の強豪との試合に向けて強度を上げたり、週末のスタメンで使う選手のコンビネーションを意識したトレーニングを行ったりする。チーム全員がその日に上手くなることと、週末の試合に勝つことのバランスを意識しながら、練習の内容や強度を調整している。

指導者ライセンスについて

スペインの指導者ライセンスはlevel1~3まである。level1を取得していないと第1監督にはなれない。level2までは数年で取得できる。第1監督での経験を積むとlevel3を取得する権利を得られる。level3を取得すればラ・リーガ1部でも指揮をとれる。そこからは実力至上主義になる。level3は日本のS級ライセンスに相当し、日本よりも最上級資格の取得が容易である。

最後までお読みいただきありがとうございました!

自己紹介

●氏名:島澤一杜(しまざわいっと)
●学歴:市立浦和高校→東京都立大学 卒業
●出身:福岡生まれ埼玉育ち
●好きなサッカーチーム:浦和レッズ、アビスパ、マンチェスターシティ
●最近ハマってること:太鼓の達人
●サッカー経歴
・沼影SSS→FC FESTA→内谷中サッカー部→市立浦和高校サッカー部→ランゲ浦池(埼玉県3部)
・クーバーコーチングサッカースクール浦和校卒
・浦和レッズjr.アカデミー選抜
・メトロポリタンリーグ(関東リーグ)出場
・高校サッカー選手権埼玉県ベスト8メンバー
・社会人サッカーチームランゲ浦池キャプテン
●Twitter: @it_rangeuraike


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