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枯草の根

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社会不適合でも頑張って生きてる、と証明するには文章を書くしかあるまい。そんなことを思いながら、書いているのです。
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#コラム

不可思議な心境

 最近、味わったことのない心境に、感情の大部分を支配されている。今まではこんなことはなかった、と、そう思っていたところで意味はない。今はその例外の中にいる。

 正直に言えば、戸惑っている。相手を戸惑わせている以上に。それでいて、楽しい。今までに味わったことのない感覚を、今味わえているということが、楽しい。今まで通りの感情ではない今の私の心が、楽しい。新鮮かつ、不可思議であるからだ。

 これは、

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前世

 初めて経験することでも懐かしく感じたり、恐怖を感じたりすることがあり、そこから「私の前世はもしかして」と想像することが出来る。

 私の場合、敬虔なロシア正教徒だったのではないか、と感じる。長らく悩まされた不眠症や、ストレスによる急な発熱の連続が、三月末にロシアに行ってからぴたりと止んだ。

 モスクワのウスペンスキー寺院に入り、イコンを見た時には人生で至上の感動を得た。

 他にも諸々。論理的

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恋のはなし

 恋をしたら、連絡を取り合ったりデートをしたりして仲を深めて、告白があって、付き合って。それからキスをしたりセックスをしたり。最終的には結婚して子を設けて……。

 「アタリマエの幸せ」がそこにある。

 では、「アタリマエの幸せ」を求めない者は幸せにはなれないだろうか。

 個人の理性では、「否」、然し、社会は「是」と答える。

日本社会の中では、その定形のみが「恋愛の幸福」なのだ。そこからはみ

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グラン・ギニョール

残酷描写は規制される。

その目的は、「教育上、よくない」と。

では、そのように「教育上よくない」ものを排除していった結果、何が起こったか。

それは芸術の圧倒的衰退と、内発的動機付けの頽廃、そして理不尽な非難轟々。

精神の内部でグラン・ギニョールは演じられる。表出できない、奥底の底で。

内出血を心に抱いて、目を閉じて鼻から腐敗を吸い、口から毒を吐く。

美しくないグラン・ギニョールには、価

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理解と不理解の溝は、言葉じゃあわからない。「私は君を理解しているよ」と言われても、口先だけ弄している、と疑念は晴れない。

また、態度で示されても、本当かどうかわからない。一時的な演技なら、その気になれば誰でも出来る。

それなら「理解しようと頑張ってくれている」状態が最上位なのではないか。現状では不理解であろうと、近づく可能性はあるし、可能無限的に理解に到ることも出来る。

その延長から、「あた

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責任感がある、とは

 責任感とは何か。就職活動のシーズンになるとよく考える。アピールで何度も聞く「私は責任感のある人間です」といった言葉。そう主張する根拠は「サークル内で幹部を務めていた」、「バイトリーダーを務めていた」、といった「人の上に立っていた」というものばかり。

 責任感があるとは、「人の上に立つ」ことを指すのだろうか。そうであれば、政治家や経営者、教師、グループのリーダーなどは責任感溢れる人間しかいないこ

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理想

 理想を語る時、二種類に大別される。

 ひとつは、相手を魅了する理想語り。もうひとつは、自身が魅了された理想がたり。

 

前者は「私もこの人に着いて行きたい」と思わせることが出来る。後者は「俺に着いてこい」と思っている。

内容の差は単純に、具体的かどうか。

「私はAという理想を抱いている。実際にBという行動をしてCという結果が出た。このまま進んで行けば辿り着けるはずだ」という論調と、

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小さな「Hanged Man」

 負のスパイラルに陥ることがある。何をしても上手く行かない。嫌なことばかり起こる。気分が落ち込んだまま、晴れない。そのような時に、どのように流れを断ち切るか。

 私は、心の中に小さな「Hanged Man」を住まわせることを心がけている。

 The Hanged Man はタロットカードの22大アルカナのひとつ。『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース』の、J・ガイルのスタンドでお馴

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寝つきの悪い私の睡眠導入

 どうも、寝つきが悪過ぎて何度も心療内科行ったにも関わらず、さっぱり改善されないСатошаです。

 かなりの確率でCatowaと表記されてしまうのですが、「カトワ」ではありませんよ。キリル文字です。「サトーシャ」って読むんです、これ。「エス、アー、テー、オー、シャー、アー」と打てば正しい表記で変換できますが、面倒であればコピペでどうぞ。

 本題。私、すごく寝つきが悪いです。不眠症、と言っても

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本分

 本分を全うせよ、というラテン語の諺がある。原語では「AGE QUOD AGIS」(アゲ・クオード・アギス)という。

 物事には本分……即ち、本来的に持っている性質、為すべきこと、が内在する。人間を含む生物の本分は、種の存続だ。では、モノの本分は何だろう。

 たとえば今いる部屋を見渡す。

 ドアの本分は何か。開いて招くこと……つまり「受容」だろうか。むしろ、外敵から「守る」ことか、不要な分子

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世間での認知度がおぞましいほど低いこと。直木賞で選ばれるような「大衆文学」はエンターテインメントなのでストーリーでドキドキさせたり感動させたりするのに対し、芥川賞で選ぶような「純文学」は、自己の内面をどのように表現するか、の芸術目的の執筆なので、オチがないのも当然だし起伏も不要。

言葉の誤用

言葉の誤用、というものはしばしば取り沙汰される。

たとえば「破天荒」。一般に使われてしまっている「言動が突飛だ。常識に囚われない」といった意味はなく、正しくは「前人未到の偉業」という意味を持つ。

たとえば「させていただく」。「する」の謙譲表現の中でも特に丁寧……のように思われているが実際は「相手の許可を得て、する」の謙譲表現であり、慇懃無礼かつ強要の姿勢を相手に示していることになる。用いるべき

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恩師の言葉より

 芸術とは、感情や心情、思想などの表現の多様性、其のものであると考える。概ね、芸術の生まれる動機は自己表現だろう。

 其れ故、芸術には「人間」と、「意志」と「現実」が必ず内包されている。

 とりわけ、文学では其れが顕著に見て取れると感じる。

 高校時代の恩師から賜り、今でも心に生き続ける言葉として、「文学は、人間の存在証明だ」というものがある。

 人間が、意志を持ち、現実を生きた証明として

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言葉の摩耗

 減らしたい言葉。「愛してる」と「死ね」。

 言葉には重みがある。そして、其れは摩耗する。「愛してる」と言い過ぎると、重みが磨り減って「いざ、という時」の言葉がなくなってしまう。「死ね」も同様だ。命を扱う言葉が軽いはずもないのに、いつの間にか、軽々しく口に出来る言葉になってしまった。そんなにも軽く「死ね」と言っていて、いつか心の底から憎い相手が出来た時、何と言うのだろう。

 重みを失わないよう

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