肩関節周囲炎に対する理学療法のポイント!肩甲胸郭関節の評価・治療について
どうも吉田です。
久々にリアルな臨床のお話をしますね!
というわけで肩関節周囲炎についての理学療法のポイントをお伝えします。
実際の症例さんも踏まえて説明していきます。
肩関節周囲炎の病態
そもそも論として肩関節周囲炎というのは広範囲な名称で「50歳くらいでおこる肩の痛みと可動域制限」とざっくりです。
ただ細かく肩の状態を評価して状態を見分けると腱板断裂,石灰沈着,上腕二頭筋長頭腱炎,腱板疎部損傷,不安定症など細かく分けることができます。(診断は医師の仕事なので、知識として他の病態の特徴は知っておきましょう!)
肩関節周囲炎の病態の特徴としては以下の通り
・関節滑膜の炎症肥厚があること
・関節包・腱板疎部・烏口上腕靱帯が線維化・肥厚
・関節包の容量が少ない
・肩甲下筋下滑液包の閉塞
・関節内癒着は観察されない
・肩峰下滑液包の血流増加
ですね。
今回は特に肩甲胸郭関節について話をしていきます。
まず予備知識として。
加齢による肩甲骨の変化
・加齢によって肩甲骨は上方回旋位になりやすい
・最大挙上においては肩甲骨後傾の可動性低下
が言われています。(20歳代と50歳代の肩甲骨の動きの比較から)↓
引用:J-stage「加齢による肩甲骨可動性の変化」
特に見逃しやすい・修正するのが難しい「肩甲骨の後傾制限」
肩甲骨上方回旋+肩甲骨の後傾=肩峰と上腕骨のスペースが狭小化してインピンジメントを起こしやすい状態ですね。
今回のクライアントさんも年齢的には50歳以上で肩甲骨のアライメントも上方回旋・肩甲骨の前傾(肩甲骨後傾の可動性低下)が特徴でした。
肩甲骨後傾はどうすれば獲得できるの?
肩を挙上する際に肩甲骨の後傾は必須です。ではどうすれば肩甲骨の後傾を獲得できるのか?
ポイントは
・小胸筋のリリース、原因により烏口腕筋のリリース
・胸椎の伸展の誘導(運動学習)
・肩甲骨後傾の誘導(運動学習)
・僧帽筋下部繊維筋力低下
・前鋸筋下部繊維筋力低下
が大切です。
徒手療法以外で修正するためには下記の動画に載せているエクササイズをよくやります。特に四つ這い姿勢は効果的(上腕骨の垂直の荷重圧を通して肩甲骨と胸椎の認知が行いやすい→誘導しやすい→学習しやすいから)
肩関節クライアントさんの理学療法評価
ざっくりと今回のクライアントさんの評価を伝えます↓
・肩関節全ての整形外科テスト(-)→器質的な問題は少なそう
・夜間痛(-)、安静時痛(-)、動作時痛(+)→肩屈曲・外転最終域、2nd外旋最終域→急性期の痛みではないのでリスクは少なく、動かしても良さそう
・あきらかな筋力低下なし→腱板断裂の疑いも少なそう。いわゆる僧帽筋下部、前鋸筋の筋力低下はあるが筋力の問題よりも可動域低下からくるものと推測。
・可動域制限あり(肩甲上腕関節2nd外旋、挙上・屈曲最終域、肩甲骨可動域制限)→機能的な問題あり
・アライメント→肩甲骨の前傾→機能的な問題あり
・Scapular assistance test(SAT)、Scapular retraction test(SRT)→痛みの軽減、可動域の改善あり
こんな感じです。上記の評価から。
器質的な問題ではなく機能的な問題であり、肩甲骨をアシストすると痛みが軽減することから治療方針を立てていきました。
肩関節クライアントさんの理学療法治療
今回のクライアントさんは主に肩甲胸郭関節を中心に施術→運動療法を実施しました。
1側臥位のポジショニング
2肩甲骨の評価、リリース
3肋骨と上肢機能
4鎖骨の評価
5運動療法
を順を追って説明します!
<1側臥位でのポジショニング>
基本的に肩関節疾患の方は側臥位(疾患側の肩を上に)から施術をします。
理由は
「痛みが出にくい・肩甲骨を操作しやすい、肩甲上腕関節後方組織の徒手療法がやりやすいから」です。
背臥位で肩関節の操作をする場合、肩甲骨が固定されてしまいがち。
背臥位のまま上腕骨を操作すると2ndポジションでの操作時にインピンジメントを起こしやすいです。(特に肩甲骨の後傾が制限されている場合)
横向きにすると肩関節がリラックスします。ただそのままだと肩関節が水平内転しすぎてしまうので抱き枕を抱えてもらいます。オススメのグッズはニトリのビーズクッション。形が自由に変わるので肩の状態にスポッとハマりリラックスした肩関節のポジションを作ることができます。
<2肩甲骨の評価とリリース>
次に肩甲骨の評価をします。
・挙上、下制
・上方回旋、下方回旋
・前傾、後傾
・内転、外転
全ての動きを他動的に評価します。
「え( ´∀`)そんなの当たり前じゃん!」
という人が多いですが、知っているのと臨床で評価・モビライゼーションするのは全く違います。
うまくいかない人の特徴は
・肩甲骨の動かし方が小さすぎる
・肩甲骨2Dで動かしている
ことが多い。なので大きく、かつ3Dで捉えて動かしましょう。
例としては
肩甲骨の上方回旋を誘導する単体のモビライゼーションではなく→肩甲骨上方回旋+後傾+内転のように複合的にモビライゼーションすることが大事です。
肩甲骨の動きの制限がある部位に関しては必ず制限を取り除きましょう。動画で説明しているのでぜひ見てみてください。これができると上腕骨の動く土台ができます!むしろこれができないと上腕骨の動きが変わりません。
<3肋骨と上肢機能の関係>
肩甲骨の次に肋骨を評価しましょう。
なぜ肋骨?
それは上肢の挙上角度によって肩甲骨の後傾と胸椎の伸展が必要→体幹の伸展時には肋骨の後方回旋が必要だからです。
ただ肋骨の評価は客観的なものがないので、主観的な評価になります。
吉田は側臥位で上肢挙上位の状態で肋骨を後方からモビライゼーションして動きを評価します。不足している場合はそのままモビライゼーションを行います。
<4鎖骨の評価>
肩甲骨の動きに影響を大きく与えるのは「鎖骨」です。
・肩鎖関節
・胸鎖関節
この2つの関節の動きが低下すると問題です。
ここでは鎖骨に付着する軟部組織を中心に考えましょう。
・大胸筋鎖骨部
・胸鎖乳突筋鎖骨頭
・三角筋前部線維
・鎖骨下筋
・僧帽筋上部
この5つの筋肉の硬さを触診で評価して、硬さがある場合+肩甲骨、鎖骨の動きに制限がある場合にリリースやストレッチを行いましょう。
鎖骨の動きが変わるだけで肩甲骨の動きもグンっとよくなります。
<5運動学習>
肩関節疾患においては特に
「腕の上げ方」
を忘れている場合が多いです。
自転車乗れる力はあるのに自転車乗れないのと全く同じです。
肩が上がる可動域があっても脳がその使い方を知らないってことですね。
いわゆる運動学習。
別にピラティスみたいに特別な運動を使わなくてもOK。
この方の場合は立位で
・上肢の向き(適度な外旋位置)
・親指の向き(天井を向かせる)
・肩甲骨面上を意識(臼蓋と上腕骨の向きが合う角度で)
・触覚で肩甲帯をサポート(中枢部の固定を学習)
を数回繰り返して。。
「あーこんな感じね。痛くない。上がる!」
って感じでうまくいきました。
というわけで今回のクライアントさんは肩甲上腕関節をほとんど操作しておりません。。。
なぜ可動域制限がある肩甲上腕関節から施術しないのか?
というのは若手セラピストの人は気になると思います。
吉田も1年目の頃は
・肩甲上腕関節の外旋制限がある→外旋のストレッチする→でも可動域はあまり変わらない
・肩甲上腕関節の内旋制限がある→内旋のストレッチする→でも可動域はあまり変わらない
という臨床を繰り返していました。
この臨床の失敗は「肩甲上腕関節と肩甲骨を分けて考えていたこと」です。
どの肩関節疾患においても肩甲上腕関節の後方と下方組織は固くなります。
この場合考えるべきことは2つ。
1本当に組織としてかたい
2肩甲骨が動くスペース・可動性がない→だから上腕骨が逸脱しないように肩の緊張を高めている→組織として硬くなる→この場合に緩めると肩の不安定性が増す
肩甲上腕関節が動かない理由の多くは土台の肩甲骨に問題があるということ。その土台から変えてあげないと上腕骨はリラックスして動けないってことです。
上腕骨を動かす方を優先するのか?(肩甲上腕関節のモビライゼーション)
臼蓋の面を向ける方を優先するのか?(肩甲骨のモビライゼーション)
という治療の選択肢になります。
これはリスクも考えて後者の肩甲骨のモビライゼーションを優先します。これをやる前に上腕骨を優先的に動かすと痛みや不安定性が増すのでオススメしません。
今回のクライアントさんも肩甲上腕関節はほとんと徒手療法を加えていません。ぜひ臨床の参考にしてみてください。
まとめ
・肩関節の病態について知る
・鑑別ができるように整形外科テスト、触診、データベースを勉強する
・肩甲胸郭関節の評価を丁寧に行う
・肩甲骨と上腕骨を相対的に考えて評価、治療する
を主に伝えました!
ぜひ参考にしてみてください。
もっと詳しい肩関節noteはこちらね↓
ではでは〜!!
ライタープロフィール
吉田直紀
理学療法士・ピラティスインストラクター!代々木でピラティスを指導。その他メディアとして月間10万PV「Reha Rock」、理学療法士のオンラインサロン「Free PT salon」を運営。Physio365編集長。
運営ブログ:Reha Rock
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