人間は架空の動物だった

 雑に開かれたカーテンを見て私は思った。
「カーテンを束ねなければいけない」
“思った”と言うのは正確ではない。使命感に駆られた、と言う方が正確だと思う。カーテンが私に「束ねろ!」と命令した訳ではない。勿論、誰に命令されたわけでもない。ただただカーテンを見て、私が感じたのだ。
 ここで気づいた。これが妄想だと言う事に。カーテンは私の目の前に存在し、私はカーテンを見た。ただそれだけの事。なのに””何故か””私は「カーテンを束ねなければいけない」使命感に駆られた。現実だと思って見てた物の中に妄想が混ざっていたとだ。シマウマの群れの中に一匹だけ霊獣が存在してるのに気が付かなかった様な事だ。

 多くの人間関係の絡れも、この現実と妄想の曖昧さにあると思う。相手が言った内容以上の解釈をし、妄想し、喧嘩をする。
 今、目の前にいる人間は自分の妄想の中にだけ生きる架空の動物かもしれない。そして多くの場合、人はそれに気づけない。

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