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精神保健福祉士におけるアセスメントとは何か(書き直しました)

どうも、あきです!

前回書いたアセスメントの記事を、改めて書き直してみました。
とはいえ、前回書いたものも一応備忘録的に残しておきたいと思います。
アセスメントについて知るきっかけの一つになったら幸いです。

アセスメントとは何なのか

私たち福祉専門職者、特に精神保健福祉士が使う「アセスメント」とはどのようなものでしょうか。

おそらく皆さんが普段、仕事で使っているアセスメントシートには、氏名・生年月日・住所・ADL・家族構成や障害の程度など、様々な情報を書く欄があるかと思います。(職場によってはインテークシートと表現しているところもあると思います)

また別の職種になりますが、看護師さんたちもアセスメントという言葉を使いますし、たとえばその際に血圧を記入したり問診した内容を記入したりして、カルテにまとめていると思います。
では、このような情報を集めたものがアセスメントになるのでしょうか?
それを次の項目で順に確認していきたいと思います。

アセスメントの手順

まず、アセスメントの手順を簡単に表記してみたいと思います。

①情報収集
②疑問を基に仮説を立てる
③仮説の検証(さらなる情報収集)
④原因・メカニズムの解釈・言語化
⑤プランニング

①情報収集

前提として、アセスメントには情報が必要となります。
アセスメントシートに記載しているような情報は、私たちがアセスメントをする為の「元ネタ」で、それそのものはアセスメントにはなりません。
アセスメントには情報が必要ですが、アセスメントと情報は異なります。
(この点はアセスメントに関する書籍でもごっちゃになっているところが多いように思います)
情報は客観的事実や他者が表現した事実の羅列であり、解釈や価値判断が含まれていません。(そして、含まれてはいけないものだと思います)

今回は架空の事例を通して情報とは何か、アセスメントはどのようなプロセスを辿るのかを確認していきたいと思います。

<事例>
Aさんは夫であるBさんと7歳になるお子さんの3人家族で賃貸住宅に暮らしています。
Bさんは深夜に酔っぱらって帰宅することが多く、酔った時には声が大きくなることから、騒音について近隣から苦情がきていることが大家さんの話からわかりました。
また、時には怒鳴り声が聞こえてくることもあり、近隣の方が通報して警察が来ることも珍しくはないことがわかりました。
近隣の人の話からはAさん達は外ですれ違っても挨拶を返してこなかったり人を避けている様子があることや、あまり洗濯物が外に出ていないこともあって、もしかしたらネグレクトをしているのではないかと心配に思っていることもわかりました。

さて、これらは全て情報です。
それも第三者が話している情報なので、登場人物三人についてはまだわかったようなわからないような、といった感じだと思います。
この情報を読んだ時に、あなたはどう思ったでしょうか。

情報を目の前にした時に心の中に生じた考えや疑問を「仮説」とここでは表現します。
そして、この仮説はそれぞれの専門性や個別性を基に立てられるものです。仮説を立てることで私たちは専門職者としてアセスメントのプロセスを進めることができます。

②疑問を基に仮説を立てる

先ほどの情報を見た時に、あなたの心の中には何が思い浮かんだでしょうか。
人によっては、お子さんの状況が気になったり、DVの心配をしたり、Bさんにアルコールの問題があるのではないかと考えたりしたのではないでしょうか。
私たちは情報を基にして無意識的に仮説を立て、その人や状況の解釈を行おうとします。
それが②の仮説を立てるです。この作業はほぼ無意識的に行われているものであり、所感や感情にも近いものかもしれません。

しかし、仮説はあくまで仮説であり、仮説を検証しないままアセスメントとして言語化してしまうと、「決めつけ」になったり、「予言」のような表現になってしまうことがあります。

人は与えられた役割を演じる傾向があります(役割期待・ピグマリオン効果等、様々な考え方があります)
私たちが仮説を検証しないまま、アセスメントとしてその人を表現することで、その人は「こういう人だ」という人間像を押し付けられてしまう危険性があります。
仮説検証なきアセスメントは、バイステックの原則における個別化の原則を無視した行為と言えるかもしれません。
私たちの心の中に生じた「仮説」は必ず検証される必要があります。それが、次の項目になります。

③仮説の検証(さらなる情報収集)

次のステップでは私たちが情報を目にした時に生じた仮説を検証する為に、さらなる情報収集を行います。
たとえば、先ほどの事例でお子さんの状況が気になるのであれば、学校での様子やお子さんの健康状態、お子さん自身の話、といった情報が集まることでお子さんの置かれている状況や認識がより深くわかるようになります。
人は自分の持った仮説に近しい情報ばかりが目に入ったり重要視するような傾向があり、こうした傾向を「確証バイアス」と言います。自身の仮説に囚われることなく、情報をさらに収集し、集まった情報を吟味する必要があります。

たとえば、学校に話を聞いたところ、お子さんは虐めとまではいかないがクラスの中では孤立気味にありお子さん自身も内向的なのか積極的でクラスメイトと仲良くしようとしている様子が見られないこと、前日と同じ服を着てくることもあり、担任としてはもしかしたら家庭環境が乱れている可能性もあると考えていることがわかりました。

また、Bさんに話を聞いたところ、仕事の付き合いで毎日のようにお酒を飲む必要があり飲んでいること、給料も薄給で生活が厳しく、本当はお酒も弱いので仕事を辞めたいと思っているそうですが、貯蓄ができていない状況であることや、お子さんの年齢を考えると辞めるに辞められないと考えていることがわかりました。また、もともとAさんには気分の不安定なところがあったそうですが、お子さんを出産してからは余裕のなさ状態に拍車がかかっているようにも感じていて、夜中に帰ってくると仕方ないと思いつつもしょっちゅう喧嘩になっているようでした。休日の日にはBさんが洗濯物を回したり家事をしているけれど、お休みの日の前日は特に飲まされることが多く、休みの日にも二日酔いで動けないことがあったり、平日や日中のお子さんのケアまでは手が回らないしする余裕もないことなどが、話を聞いてわかりました。

Aさんにも話を聞いたところ、お子さんを産んでから体調がすぐれず、最初は時間が経てばよくなると思っていたが次第に気持ちの落ち込みも強くなって、やろうと思っていた家事も思うようにできなくなってきたことがわかりました。もともと生理前には気分の波が強くなりやすく、死のうと考える時もあったけれどここ数年は以前と比べものにならないくらいその波も強く感じるようです。また、経済的な面で生活の不安があるなか、Bさんが仕事を辞めたいと言ってきたり夜中に酔っぱらって帰ってくることに腹が立ち、抑えきれなくて怒鳴り声を挙げたり、時にも物を投げたりすることもあるとAさんは話していました。また、そうしたなか夜にうまく寝付けない状態が続いていることもわかりました。

このようにして、さらに情報を集めていくことで当初聞いていた情報とはまた違った風景が見えてきたかもしれません。
もし、Bさんがアルコール依存症に陥っていないか心配に感じている時には、機会飲酒の他にも日常的にお酒を飲んでいるのかや、飲酒量、お酒によって社会生活や日常生活に支障が出ていないかを詳しく聞いていったり、AUDIT等のアセスメントツールを用いることで簡単なスクリーニングができると思います。

もし、仮説が違っていた時には、今まで得た情報を見直して、仮説を建て直す必要もあります。

こうして集めたを情報を基に、今起きていることに対する原因やメカニズムの解釈を試みることをアセスメントと言います。
仮説をたて情報を収集し、仮説を検証する、ここまで行って初めて、「アセスメント」の段階に入ることができます。

④原因・メカニズムの解釈・言語化

ここから先のプロセスには、専門職性や個別性が出てくると思います。
ご自身の生育歴や受けてきた教育、これまでの職場の色やご自身の役割など、様々な要因によって解釈は異なってくると思いますし、だからこそ、アセスメントは○×ゲームではなく、どれくらい誰が見ても(それはご本人たちが見ても)納得できる解釈や説明になっているか、が重要になってくると思います。

そして、あくまで持論になりますがアセスメントは「その時点におけるクライアントの状態像や起こっている現象に対する”一旦の”解釈」と言えると思います。
繰り返しになりますが、アセスメントは情報ではありません。
そして、解釈は、”決定”ではありません。
あくまでその時点におけるその人の状態像や全体の環境像を切り取って「私はこう考える」という主張がアセスメントであると私は考えています。

解釈は人によってグラデーションが出るものだと思います。
起こっている現象をミラーボールに例えるならば、どこから見た側面を説明しているか、によって、見えているものも説明する言葉も変わってきます。
起こっている現象は見る人によって角度も見え方も異なる。だからこそ、どうしてそういった考えに至ったのか、を言語化して説明する必要があります。

集めた情報を基に今回の事例の解釈を試みてみようと思います。
たとえば、Aさんの状態像についてアセスメントをするとしたら以下のようになると思います。

まず、AさんやBさんの話から、Aさんはもともと生理前の気分の変調や気持ちの不安定さを抱えていたようですが、お子さんが産まれてからは気持ちの落ち込みに拍車がかかり、ここ数年では睡眠に影響が出たり必要な家事ができないことがあったり、生活にも影響が出ているようでした。また、こうした状態に加え、希死念慮を強く感じていることからも、何らかの精神疾患を抱えている可能性が考えれます。

生活全体を見るとしたら以下のように表現できると思います。

お二人とも金銭的な面で生活に不安を抱えており、貯蓄ができていない状況もあるようです。Aさんの精神状態に加えて、Bさんも二日酔いで休日に動けなかったり深夜帰りが続いていて、余裕のない状態があるようでした。こうしたことからは、家庭全体として必要な家事や育児をする余力のない状態にあることが考えられ、もしかしたら、実際に金銭的に困窮した状態にあることも考えられます。

このアセスメントが正しいかは一旦置いておき、まずは、これまで出てきている「情報」と「アセスメント」が紐づかれているかを検証する必要があります。

アセスメントに出てきているのに情報を取得できていない場合、それはあくまで支援者の主観になってしまう為、アセスメントが単なる作文に感じられてしまう可能性もあります。
アセスメントは私たちが支援していく指針でもあり、当事者も含め他の専門職者も聞く可能性があるものなので、そこには一定の妥当性が担保されている必要があります。

その為、アセスメントは日常の支援とは別に必要な情報を取捨選択し言語化する特別な訓練が必要なものだと言えると思います。
逆に、情報に出てきたけれどアセスメントには入らない(今回はBさんが仕事を辞めたがっていることは除いています)ものはたくさんありますし、情報の羅列にならないようにいかに必要な情報を取捨選択していくかもポイントの一つになってくると思います。

⑤プランニング

最後に、アセスメントした内容を基にしてプランニングをします。
普段、福祉現場で働いている人たちは計画を立てることをよくやっていらっしゃると思いますので、この作業は慣れている方も多いかと思います。

プランニングの過程においても、情報・アセスメントに出てきていない内容がプランに含まれていないかは検証する必要があると思います。
「情報⇔アセスメント⇔プラン」は必ず一つのひもで繋がっているような形になる必要があります。

特に注意が必要なのは情報・アセスメントで出てこないことがプランに含まれている時には、そのプランは何に基づいて誰が望んで入っているのかを確認する必要があります。
ご本人が強く望んでいるから、というのもプランに追加する理由の一つになると思います。その場合には、「本人が強く望んでいる」という情報があり、「強く望んでいる理由はこういうことが考えられる」や「追加することで本人にこのような影響があると思われる」というアセスメントがあり、その為「本人が望んでいる~をする」というプランニングになると思います。(そして、こうした一連のプロセスはおそらく皆さんが無意識的に行っているものと考えられます)

また、さらに細かく言うと、前回のアセスメントの次に課題の精査という作業があり、その上でプランニングに入るものと考えられています。
ですが、ここでは一旦長くなるのでアセスメントと課題の精査を混ぜて書いています。
また、アセスメントの後にそれをご本人様にも共有した上でプランニングをしていくのですが、それも長くなるため今回は省略しています。

まとめ

今回のnoteで特に説明をしたかった点は「情報⇔アセスメント⇔プラン」がそれぞれ紐づいている必要があること、アセスメントに基づいてプランニングを行う必要があること、です。
今回は支援対象である方を明確にしていませんでしたが、本来的にはそれぞれの現場で支援の対象となる方が決まっており、その対象に合わせて情報収集やアセスメント・プランニングや支援を提供していくものと思います。
そういった意味で、今回の事例はよくわからないところも多かったと思いますが、アセスメントについて深めたい!学びたいと思っている方にとって、少しでも参考になったら幸いです。

もし、アセスメントによりご関心のある方は様々な方法がありますが、BPSモデルのアセスメントは様々な現場で応用しやすく活用しやすいモデルだと思いますので、ぜひ調べてみてください。

また、このnoteではこうして支援に関する情報も発信していけたらと思っていますので、引き続き、興味のある方はご閲覧いただけますと幸いです!

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