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臆病者が自由を手に入れた話でも聞いてみないかい【二話】


蒸し暑い。


すっかり日は落ちたが、未だ気温は高いままだ。
じわじわと汗が首を伝う。

簡素な椅子に腰掛け、乾いた喉にオリオンビールを流し込む。
サクサクに揚げられた玉ねぎの串カツにソースを漬け、一口で放り込む。
玉ねぎの甘さとウスターソース、油を吸った衣がビールを誘う。


国際通り沿いに掛かった大きなアーケード入り口の看板。

平和通り商店街。

平和通りと名付けられた決して広くはない通りを奥まで歩くと、一際賑わっている場所がある。
そこはせんべろの店が多く建ち並ぶ。

せんべろとは1000円でドリンク三杯とつまみが付いてくるという、のんべえにはたまらないシステムだ。
沖縄のせんべろはつまみも多種多様で、本当に儲けているのか怪しい店もある。

天しーさー。
満席の店内、店先にも数席あるがやはり満席。
その店先で一人グラスを傾けていた。


観光客も多いが、仕事終わりの地元の人間もいるようだ。


心地よい酔いと背徳感を感じながら思う。
本当に仕事を辞めて良かったのか。
辞める準備も終え、これからの人生を生き抜く環境も整えた。
最早何も憂うことは無いはずだ。
だが、何か心が穏やかではない。

ザワザワした気持ちを抑える為、三杯目のビールを飲み干した。


ハシゴを考えていたが、思ったよりも疲労が蓄積していたようだ。
酔いが回っている。

まあ、この先いくらでも時間はあるんだ。
今日は大人しくホテルへ帰るとする。

明日はビーチにでも行こうか。

有名なそば屋を回ってみようか。

今は期待に胸を膨らませておこう。
せっかく思い描いた道を歩き始めたのだから。

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