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真理は独占できません

四街道教会の2022年7月24日(日)主日礼拝における説教を公開します。聖書は以下の3箇所です。
旧約聖書:列王記上10章1〜13節
新約聖書:テモテへの手紙一3章14〜16節
新約聖書:マルコによる福音書8章22〜26節

礼拝動画を視聴したい方は下をクリックしてください。

本文:
 おはようございます。先週は夏休みをとって奄美大島にある離島・加計呂麻島に行ってきました。島での生活はテレビもなければ携帯電話も圏外でしたのでとてもゆったりと過ごすことができました。同時にふだんどれだけスマホを見る時間の多い生活を送っているかを思わされました。

 この間世間ではコロナの新規感染者数の増加もそうですがそれ以上にカルト教団の話題で持ちきりです。私たちの属する日本基督教団では7月14日にホームページにおいて「統一協会(世界平和統一家庭連合)に関するご相談について」というお知らせが出され、その後カルト問題連絡会から声明が出て被害者やその家族に対して相談窓口を案内しています。日本基督教団では30年以上前から統一協会からの脱会支援の活動をされているベテランの先生方が各地方におられ、この千葉にも専門の先生がいらっしゃいます。

 ここで個人名を出してしまうとその方や教会がカルトからの攻撃に遭ってしまいますので公表できませんが、日本基督教団のホームーページに案内されている最寄りの教区事務所に相談すれば実績のある専門の先生を紹介してくださいます。ですからご家族あるいはご友人の誰かが統一協会に入ったことがわかった場合、まずは最寄りの相談窓口に連絡してください。日本基督教団はカルト教団ではありませんので相談したからといって献金という名の法外な料金を請求することはありませんし、入信の強要やしつこい勧誘も一切致しませんのでどうぞ安心して相談いただけたらと思います。

 さて、キリスト教会は今日のテモテへの手紙が語るように真理という柱と土台に建てられた神の家です。だからこそ栄枯衰退する国家やカルト宗教とは異なり約2000年間も存在し続けています。しかしそれはキリスト教会だけがこの世界の真理を唯一握っているという意味では決してありません。真理とは普遍的で広いものです。キリスト教会は真理を独占しているのではなく非常に広大な真理という土地の一部に建てられた神の家です。

 ある寓話を紹介します。象のお話です。「ある村に初めて一頭のゾウが来ました。暗闇で六人の村人たちがゾウとはどんな生き物か知らずにそれを触り、手で触れたものがどのような姿のものであるかを表現しました。まずゾウの足を触った人は「これは柱のようです」と答えました。尾を触った人は「ロープのようです」、鼻を触った人は「木の枝のようです」、耳を触った人は「扇のようです」、腹を触った人は「壁のようです」、牙を触った人は「パイプのようです」、と答えました。六人はそれぞれに自分の意見が正しいことを主張しました。そこにたまたま通りがかった賢者が現れ、ひとつのことを理解するとき、多角的に見つめることが大切だと説いて六人をおさめた、というものです。」(小嶋リベカ『子どもとつむぐものがたり』日本キリスト教団出版局、2018年、111ページ。)

 ある日本の神学者は真理であるキリストの福音とは月のような球体であると表現しました。月は太陽の光が当たる角度によって満月にも見えれば三日月にも見えます。キリストの福音というのも一つの場所から、一つの教会からすべて見えるというのではなくて長老派からはこういう福音、メソジストからはこういう福音、組合派からはこういう福音が見える。そしてそれらをお互いに否定することなく受け入れ合うことでキリストの福音がより深く、立体的に見えてくると語りました。

 これはキリスト教の世界だけでなく世界の諸宗教との関係においてもいえるでしょう。イスラム教、仏教など世界の宗教の中にも真理という柱と土台の上に建てられている宗教があり、実際に諸宗教が真理のもとに協力して難民支援や生活困窮者の支援に当たっている現実があります。互いに真理という広大な土地の上に建っている宗教であることを理解し、それらの宗教が持つ教義のすり合わせといった机上の事柄ではなく具体的な現場における奉仕の実践という協力関係の中で互いの宗教から見える真理と出会い、より深く立体的に真理を理解するのです。

 私たちキリスト教会に知らされている偉大な真理の一つはテモテへの手紙に記されている「キリストは肉において現れ 霊において義とされ 天使たちにみられ 諸民族の間で宣べ伝えられ 世界中で信じられ 栄光のうちに上げられた」ことです。救い主を意味するキリストがイエスという肉体を伴った地上を生きて働かれた。このイエス・キリストの働きをよりどころとして私たちはこの世界において福音という真理の中を生きようとしています。キリストをよりどころとし、例えば本日の福音朗読にある視覚障がい者の目を癒すキリストに倣って社会福祉の分野にも出かけていき、キリストを宣べ伝えるのです。

 「神の家とは、真理の柱であり土台である生ける神の教会です。(テモテへの手紙一3章15節)」真理とは普遍的で独占できるものではありません。今日このことを何度も強調するのはカルト教団が真理は自分達だけが独占していると信者に教えるからです。自分達の教団だけが神から唯一の真理を授かっておりここに所属するものだけが救われる。だから脱会することは許されない。脱会したら地獄に落ちるぞ。そのような脅しをちらつかせて信者を洗脳し心理的に束縛します。キリスト教の長い歴史の中でも他の宗教に対してキリスト教だけが神から唯一の真理を授かっていると考えカルト化した時代がありました。その時代にどれだけキリスト教が他者を排除し傷つける罪と悪を犯したかは歴史が証明しているところです。

 キリスト教会は真理の全てではないということを歴史から真摯に向き合う必要があります。キリスト教は数ある真理の柱の一つであり、真理という広大な土地の一部に土台を持つ宗教です。そのことを覚えて驕り高ぶることなく謙虚に、肉となってこの世に現れ自分を無にされて世に仕えたキリストに倣って私たちもこの世界に仕えたいと思います。破壊的カルトの被害に遭われている方、そのご家族への支援が十分になされますように。そのために日本基督教団が用いられ、カルトからの脱会支援に尽力している弁護士会や他宗教の専門家と協力して世に仕えていくことができるように神の支えと助けを祈りましょう。

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キリスト教会の礼拝で行われている説教と呼ばれる聖書をテキストにしたメッセージを公開しています。

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