慢性疼痛に伴ううつ:ケタミンがなぜ有効か? TIAM1-介在シナプス可塑性機序

Ru, Q., Lu, Y., Saifullah, A.B., Blanco, F.A., Yao, C., Cata, J.P., Li, D.-P., Tolias, K.F., Li, L., 2022. TIAM1-mediated synaptic plasticity underlies comorbid depression–like and ketamine antidepressant–like actions in chronic pain. Journal of Clinical Investigation 132, e158545. https://doi.org/10.1172/JCI158545

非競合的N-methyl-d-aspartate受容体(NMDAR)拮抗薬であるケタミンは、痛みと共存する抑うつ症状の両方に有効な治療法として登場したが抗うつ作用の基礎となるメカニズムは完全には解明されていない。一方、                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Rho GTPases(Rac1、RhoAなど)は、樹状突起スパインの形態形成やシナプス可塑性において、基盤となるアクチン細胞骨格の構成を制御することで重要な役割を担ってる。Rho GTPasesの時空間的な制御は、GDP/GTP交換を促進することでRho GTPasesを活性化するグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)と、GTP加水分解を促進することでRho GTPasesを抑制するGTPase活性化タンパク質(GAP)によって行われている。Rac1 GEF T cell lymphoma invasion and metastasis 1 (Tiam1)が、シナプスNMDAR活性とRac1活性化および海馬ニューロンにおけるアクチン細胞骨格再構築を連関させる樹状突起スパインおよびシナプス形成の重要な制御因子であることが見いだされている。Tiam1はCaMKIIαと相互活性化シグナル複合体(RAKEC)を形成し、長期増強(LTP)時にCaMKIIαとRac1を安定的に活性化してスパインの形態を維持することも明らかにされた。本論文では、Tiam1がACCニューロンにおける不適応なシナプス可塑性の制御を通じて、慢性疼痛に共存するうつ病の病態生理に必須の因子であり、ケタミンがその標的となって持続的に抗うつ様作用をもたらすことを立証する論文。

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慢性疼痛はしばしばうつ病を引き起こし、患者の苦痛を増大させ、予後を悪化させる。前帯状皮質(ACC)の過活動が決定的に関与していると思われるが、慢性疼痛に共存する抑うつ症状の分子機構はまだ不明である。T cell lymphoma invasion and metastasis 1(Tiam1)は、 Rac1 guanine nucleotide exchange factor (GEF):Rac1グアニンヌクレオチド交換因子であり、脳の発達過程において樹状突起、スパイン、シナプスの発達を促進することが知られている。本論文では、Tiam1がアクチン細胞骨格の再編成とシナプスのN-methyl-d-aspartate receptor (NMDAR) の安定化を介してACCニューロンのシナプス構造および機能可塑性を制御していることを示す。このTiam1の協調的なシナプス可塑性がACC亢進を支え、慢性疼痛誘発性うつ病様行動を引き起こすと考えられる。特に、慢性疼痛やうつ病の治療薬として期待されているNMDAR拮抗薬である低用量ケタミンの投与は、ACCニューロンにおけるTiam1を介した不適応なシナプス可塑性を阻害することにより、慢性疼痛モデルマウスにおいて持続的に抗うつ様作用を引き起こすことが明らかとなった。本成果により、Tiam1が慢性疼痛によるうつ様行動の病態生理とケタミンの持続的な抗うつ様効果に重要な因子であることが明らかになった。

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前帯状皮質について教えて下さい

ChatGPT: 前帯状皮質 (Anterior Cingulate Cortex, ACC) は、脳内の中央帯状皮質に属する部分で、認知、感情、行動調節などの複合的な機能を担っています。前帯状皮質は、選択や判断、ストレスや痛みの受容などの心理的なプロセスに関連しています。

T cell lymphoma invasion and metastasis 1(Tiam1)について教えて下さい

ChatGTP: Tiam1 (T cell lymphoma invasion and metastasis 1) is a protein that plays a role in cell migration, invasion and proliferation. It has been implicated in the progression of several types of cancers, including lymphomas and carcinomas. The over-expression of Tiam1 has been associated with increased cell migration, invasion and resistance to chemotherapy, making it a potential target for cancer treatment.

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