【P+Bインタビュー】僕と私と株式会社 代表 今瀧健登さん(前編)「ターゲットは自分や友人。同世代マーケティングの作り方」
自らもZ世代であり、「Z世代の企画屋」を名乗る今瀧健登さん。代表を務める僕と私と株式会社では、メンズも通えるネイルサロン「KANGOL NAIL」や、マッチングアプリ「タップル」の公式TikTok「おさ活」をはじめ、次々と若者に刺さる企画を生み出しています。
Z世代向けのヒットメーカーとして注目の今瀧さんに、Z世代のマーケティングやプロモーションはどうあるべきかについて、お聞きしました。
前編では、今瀧さんが感じているZ世代の傾向や、現在のSNS市場などの話をお届けします。
これまでのマーケティングが通用しない世代
―はじめに今瀧さんの経歴から教えてください。
今瀧:現在は僕と私と株式会社をメインに、Z世代向けのマーケティング・企画UXなどを行っています。大学在学中に小学校の非常勤講師となったり、一度起業もしたりして、経営コンサルティング会社に就職しました。同年に「僕と私と」を設立し、今に至ります。他に一般社団法人Z世代の代表、株式会社会花の共同代表も務めています。
―どういう経緯でZ世代に特化したマーケティングを始められたのですか?
今瀧:一言で言うと、自分がZ世代だったからです。当時は今ほどZ世代の注目度は高くありませんでしたが、ペルソナが自分や友人であるような、同世代に対するマーケティングをやりたいと思っていたんです。「同世代マーケティング」とも呼んでいます。
―今瀧さんが思われるZ世代とは?
今瀧:「自分らしさ」を重視した世代だなと思います。マーケター視点では、マーケティングが非常に難しい世代だと思っています。
―どういう部分が難しいと感じますか?
今瀧:あまり「Z世代はこうだ」と括ってしまうと、「いや自分は違う」と離れていく傾向にあります。また流行っているから良いわけではなく、流行っていても「自分はこれが好き」、という部分も大事にする傾向にあるなと。括りにくく、トレンドの移り変わりも早い。加えてテレビや雑誌をあまり見ない世代でもあるので、TikTokなどのマイナーなメディアのほうが効果が高い傾向もあります。知名度の低いブランドの商品でも、例えばTikTokで集中的にPRを仕掛けたら、テレビCMや雑誌広告を打っている大手ブランドの商品よりも若者には売れる、といった流れが実際に起こっています。これまでのマーケティングが通用しない点でも、難しい世代だと思いますね。
作る側もペルソナも同世代
―難しい世代でありながら、御社が若者に刺さる企画を生み出せるのはなぜでしょう。
今瀧:SNSを中心としたデジタルマーケティングを行う中で、おそらく他社と違う点の1つは、弊社のメンバーにインフルエンサーが多いこと。意図していたわけではないのですが、気がつけば約半数がTwitterやInstagram、TikTokのインフルエンサーでした。インフルエンサーの文化がない上の世代の方々が、SNSでどのようにバズらせるかを考えるのは、難しい部分があると思います。メディアの知識もあり自分たちでアウトプットもできる、再現性のあるメンバーが集まっていることが強みです。
2つ目は、明確なペルソナ設計ができる点です。ターゲットは基本的に僕自身や会社のメンバー、友人に設定しています。かつ、同世代へのヒアリングが容易にでき、もともとZ世代として直感的に身に付いている前提情報もあります。同世代や自分をターゲットに置くのは、非常にやりやすい部分ではありますね。
―なるほど。KPI設計はどのようにしていますか?
今瀧:サービスやクライアントによりますが、クライアントと擦り合わせながら、どの領域にするかを決め、過去の事例などから予算を算出してKPIを設計します。多い傾向では、UGC (User Generated Contents)といわれるユーザーから自然発生したコンテンツや、TikTokであれば視聴回数、その他にはフォロワー数などをKPIとしています。
―視聴回数やフォロワー数の数字もクライアントによって差がありますか?
今瀧:フォロワー数よりも、市場のポジショニングを考える方が多いですね。フォロワー何人と仮設定はしても、どちらかというと競合にどう打ち勝つかを考えます。というのは、1年の間にもSNSの環境がめまぐるしく変わるからです。特にInstagramでは、フォロワー1万人を達成する難易度が2、3年前と現在とでは全く異なり、難しくなっていると感じます。フォロワー数をKPIとするよりも、競合との比較で1.5倍速の伸び率、といった差を重視する方が多いかもしれません。
―数年前よりも難易度が上がる要因についてはどう考えていますか?
今瀧:Instagramについては、フィード投稿よりもストーリーズだけを使うようになってきた変化もありますし、市場自体が飽和しているとも感じます。YouTuberでも、これまで登録者が100万人いれば広く認知されていたのが、今では100万人でもあまり知られていない存在も出てきています。YouTubeも飽和している1つの目安ではないかと。TikTok上では、まだフォロワーが100万人いれば「見たことある」という状況です。YouTubeでいう5年前くらいの市場といえるので、今TikTokに参入するのは非常にありだと思います。5年後にはTikTokも、フォロワー1万人達成が難しくなる可能性はありますね。
クライアントにSNSを知ってもらう
―SNSでの認知から、すぐに購買につなげるのは難しい側面もありますが、その点はどうされていますか?
今瀧:クライアントに「価値観の見直し」と「連携」の重要性を伝える必要があると思っています。大企業であるほど、「TikTokとは?」から入り、社内審議を通すのが大変なケースも見られます。そもそもTikTokとはどういうものか、場合によっては講演や、隔週でレクチャーをさせていただくこともあります。TikTokは若い女の子が踊っているものというイメージは2、3年前の話だったり、実は日本では40代男性の利用者数が多いなど、上の世代の方が知らないことも多い。エビデンスを共有して、まずは価値観をしっかり変えることが大事だと思います。
それから連携。SNSが購買などのコンバージョン[柿本1] [SY2] を取りにくいとは決して思っていませんが、取りやすい投稿や媒体はあります。例えばTikTokは認知には非常に向いていますが、コンバージョンには向いていない。単発のプロモーションではなく、TwitterやInstagram、LINE、それにオフラインやその他の広告がクロスして、最終的にコンバージョンにつながる。クライアントワークでは、そうした連携の大切さもお伝えしています。
トレンドが移りやすく、「こういう世代」と括りにくい側面もあり、自身がZ世代の今瀧さんも難しさを感じるというZ世代のマーケティング。メディアの特性を生かしながら、Z世代のリアルな感覚に寄り添えるかどうかが、バズる企画となるかの鍵になりそうです。
後編では、今瀧さんが行っている効果検証の方法や、メッセージの伝え方など、Z世代向けマーケティングについてより深く探っていきます。
Z世代に刺さるSNSマーケティングのポイント
✔ フォロワー数よりも競合比較、市場のポジショニングを考える
✔ クライアント側のSNSの価値観を変える
✔ 複数メディアとの連携がコンバージョンにつながる
電通プロモーションプラスでは、Z世代をターゲットとしたプロモーションの企画・実施やZ世代との共創のサポートをおこなっております。お気軽にお問い合わせください。
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