見出し画像

【P+Bインタビュー】TapNow開発者・野間悠磨さん(前編)「Z世代が選ぶSNSアプリ・TapNowの魅力とは?」

Twitterが突然仕様を変更したり「X」になったり、Metaが「Threads」をリリースして話題を呼んだり、かと思えばさまざまな新興SNSが台頭してきたり……今やSNSは群雄割拠の時代といっても過言ではありません。そんな中、日本発の新たなSNSとして世界中のZ世代から支持を集めている「TapNow(タップナウ)」をご存じでしょうか? これまで他のSNSが、世界中の人たちと繋がれることを謳って勢力を拡大してきたのに対し、TapNowは連絡先を知っている人同士でしか繋がれないクローズドなSNSとして注目されています。

今回は、TapNowを開発したスタートアップ、サンゴテクノロジーズ株式会社の代表取締役・野間悠磨さんにTapNowの特徴やZ世代に支持される理由などについてお話を伺いました。

前編ではTapNow開発の背景や狙い、また他のアプリとどのように違うのかについてお送りいたします。

野間悠磨(のま・ゆうま サンゴテクノロジーズ 代表取締役CEO。2020年にサンゴテクノロジーを創業、2022年4月にTapNow iOS版、8月にAndroid 版をリリースし本格的にサービス提供を開始。2023年2月に、SBIインベストメント、East Ventures、アドウェイズ・ベンチャーズを引受先とした第三者割当増資により、シードラウンドにて総額1億円の資金調達を実施)

TapNowの開発はネットワーク構造の発明

―まず野間さんの自己紹介と経歴を教えてください。

野間:2012年に新卒でデジタル系の広告代理店に営業職で入社しました。その後、トータルで6、7年間上海やベトナムのホーチミンに駐在し、事業開発やプロダクト開発、会社経営などに携わっていました。プロダクト開発では海外向けに自分たちで考えて作ったサービスをリリースしたのですが、実際やってみるとなかなか思い描いたような成功を収めることができず、悔しい思いを抱きながら日本に帰国しました。自分には何が足りなかったのかを考えた時、もう一度チャレンジするためには、サラリーマンとしてではなく自分自身でやらないと思い描いたプロダクトとしてのサクセスストーリーが作れないと思い、会社を設立して「TapNow」というSNSを開発しました。

―TapNowがどのようなSNSアプリか、あらためて説明していただけますか。

野間:TapNowは、スマートフォンのウィジェット機能を使って、撮影した写真を友達のホーム画面に気軽に送り合える次世代SNSアプリです。お互いの連絡先を知っている者同士でしか繋がれないという点が他のSNSとの大きな違いで、世界中の人とネットワークを築くのではなく親密な間柄の人たちと写真を送り合うことを楽しむSNSです。アプリを開かなくてもウィジェット上で写真が共有でき、送りたい人にだけシェアできる特別感が特徴です。

たとえば恋人や仲間同士で日常の出来事や面白い写真を共有するなど、大切な人との繋がりを感じることができます。2022年の4月にベータ版をリリースし、同時期にTikTokに動画を流したところ、それがバズって一気にユーザーが集まりました。

―TikTokで人気に火が付いたのですね。

野間:はい。シェアされることを意識してやってみたら、思った以上に再生数が伸びていきました。最初はiOSしかなく、機能面も絞っていたので「それなりにユーザーがいるな」という感覚だったのですが、8月になって十分検証した結果、しっかりユーザーが付いてきていることがわかりました。その人たちがなかなか離れず使ってくれていることもデータとして見えてきたので、Android版をリリースした辺りから急に海外を含めてユーザーが増えていきました。

―日本語以外でもリリースしていたのですか。

野間:もともとこのアプリは最初、日本語、英語、ベトナム語に対応していたのですが、こちらの意図とは何も関係なくTapNowを使ったブラジルのユーザーさんがTikTokでTapNowについて紹介した動画がきっかけで、ブラジルでユーザー数が一気に伸びました。

―ちなみに今ユーザーが1番多い国はどこですか。

野間:僕がマーケティングできるのは日本だけなので日本が1位になってはいますが、それ以外の国も順調に伸びています。日本の次がベトナム、ブラジル、メキシコ、アメリカ、となっています。

―では、TapNowのアイデアを思い付いたきっかけを教えてください。

野間:最初に作るきっかけになったのは妻との会話でした。家庭内でよく「こういうサービスがあったら面白いよね」という話を普段からするのですが、ある日妻と「昔はInstagramもTwitterも頻繁に投稿していたけれど、ここ最近はすっかり見る専門になっていて、なんでだろう」という話になったのです。たしかに僕も同じで、大学時代はよく投稿していたのですが、今は見る方ばかりです。「なぜ投稿しなくなったんだろう」という話をしている時に、自分のコミュニティがどんどん移り変わったり増えたりしているからではないか、と気づきました。

高校や大学の時は仲良い友達やサークルやバイト先の人ぐらいしかネットワークの中にいないので、たわいない写真でもアップできたのですが、社会人になると例えば上司や取引先の方も全てSNSの1つのネットワークの中に入っていて、投稿できる写真や内容を気にすることが出てきました。それが要因で僕たちは投稿していないのだから、同じような思いを持っている人たちは、多分世の中的に多いのではないか、と思ったのです。なので、TapNowを作るきっかけは「ネットワーク構造の発明をしよう」というところから始まっています。

―ネットワーク構造の発明とは?

野間:既存のSNSは、プラットフォームで繋がったフォロワーや友達が1つの大きなネットワークの輪の中に入ってしまうので、発信した内容は自分のフォロワー全員に見えるわけです。そうなると「この友達にはウケるけど、あの人には知られたくない」という感じで、内容に気を遣うことになります。

でも、本来のネットワークの形は、自分は1人でも、所属しているコミュニティによってキャラクターは本来違うはずなのですよね。実際にはそれぞれが閉ざされていて、閉ざされたコミュニティが複数存在している。そういったネットワーク構造をアプリケーションの中で、プラットフォームの中で作り上げていくことで常にインタラクティブに投稿し続けられれば、ストレスを感じないSNSになるのではないかと思ったのです。

―たしかに、作っているわけではなくてもそれぞれのコミュニティでの自分というのは、キャラクターやスタンスが少しずつ違うものですね。

野間:ただこれはすごく難しい話で。SNSでしっかり勝負していこうと思うと、マーケティングとしてはやはり若年層から支持される必要があります。しかし、Z世代の子たちに「我々のアプリはこういうネットワーク構造なのでぜひやってください」と言っても、小難しくて絶対試してもらえないでしょう。実際に試してもらえばその居心地の良さが伝わる自信があったので、Z世代の子たちがマーケティング目線でキャッチーに感じて、「なんか面白そうだからとりあえずやってみるか」と思ってくれる別の冠が必要でした。

その冠としてつけたのが、その当時グローバルで火がつき始めたソーシャルウィジェット。ホーム画面に写真が表示されるウィジェットに友達から送られてきた写真が表示されるという仕組みを導入しました。これであれば、ぱっと見てTikTokの動画であろうが、バナー広告であろうが、一目で新しいSNSだってわかってもらえると思ったのです。

―では、本来の狙いはネットワーク構造の発明で、ウィジェットで写真を送り合えるというのは目立つからという理由だったのですね。

野間:実はそうなのです。どんどん新しくユーザーが入ってくるのですが、いざ使ってみるとその居心地の良さに多分みんな気づいてくれていて、定着しています。フィードバックやTwitterなどでTapNowについて調べると、例えば「Instagramには投稿できないようなしょうもない写真をアップできる」という声も出てくるのですよ。「何が違うか説明できないけどInstagramのストーリーズとは全然違う」とか。そこは狙い通りやれたと思っています。

クローズドだから安心していろいろな写真を送り合える

―TapNowだと拡散されないので炎上を防げますよね。

野間:はい。それは高校生からも聞いたことがあります。Instagramのストーリーズは自分のフォロワーにしかシェアされてないといいつつも、スクショを撮られたら実際にはシェアされる可能性もあります。あとは、バイト先を背景にして写真を撮ると自分のバイトが特定される恐れがあるから投稿できないというのも聞いたことがあります。若い世代はデジタルでの距離感はとても近いのですが、身バレや炎上にはとてもデリケートです。その点で、絶対に拡散をしない関係性の友達同士としか繋がらないTapNowが一番気軽に写真を投稿できるのではないでしょうか。LINEで送り合うのと同じような距離感で、信用している友達にだけ、また彼氏彼女にだけ送っている。つまり安全性が高いと思って使ってくれているのかなと思います。

―なるほど。Instagramでは神経質になることも多くて、本当にはくつろげないと。

野間:その差はあると思いますが、別に僕たちはInstagramをリプレースしたいとは思っていません。TapNowがあるからInstagramをやめましたというのは絶対になくて、テーマによって使い分けているというのが実態だと思います。

―SNSを使い分けているということですか。

野間:はい。たとえばLINEにはInstagramの機能がほぼ全部ついているのですが、それでも多くの人がLINEもInstagramも両方使っていますよね。LINEでも写真を投稿することもできるし、タイムラインもあるし、ストーリーズのようなこともできる。機能だけで言えば別にインスタもLINEも同じなのですが、アプリを機能で選んでいるのではなく、テーマで使い分けているのだと思うのです。そう考えた時に、Instagramは写真映えするような、ちょっと本来の自分よりストレッチした自分を見せたい時。別にストレッチする必要もない相手同士で送り合うものであったらTapNowを使う、という感じなのかなと。

―ちなみにそれは世界的な傾向で、どの国でもやはり最もユーザー数が多いのはZ世代ですか。

野間:はい、99%がZ世代です。僕は今年34歳でミレニアル世代に入るのですが、同年代にTapNowを紹介してもあまり刺さらないのですよね。たしかに30超えた者同士でホーム画面でわいわい写真を送り合いたいかといわれると…(笑)。

―Z世代ならではの楽しみ方といえるかもしれませんね。

野間:そうですね。年齢が下がるにつれてデジタル上での距離感はどんどん縮まってきていると思います。(後編へ続く)

Z世代に支持されるTapNowの特徴とは

① 目指したのは、自分を軸にした複数のコミュニティとの関わりなどリアルに近いネットワーク構造の開発
② クローズドなSNSゆえの居心地の良さ、気兼ねなさからユーザーが定着している
③ Z世代はSNSを使い分けており、TapNowでは背伸びをしない等身大の写真を親しい仲間同士で送り合っている


SNSといえば世界中のどんな人とでも繋がれることが魅力の1つとされていましたが、それゆえに考え方の違う人を傷つけたり、何気ない投稿が思わぬ形で拡散されて炎上するといったことも絶えません。そういった事象を見続けてきたことで、信頼のできる友達とクローズドな環境でコミュニケーションを取れるアプリのニーズが高まるのは自然な流れといえるかもしれません。


後編では、Z世代のデジタル上での距離感について、そしてこれからのSNSに必須の要素などについてお話を伺います。

電通プロモーションプラスでは、Z世代をターゲットとしたプロモーションの企画・実施やZ世代との共創のサポートをおこなっております。お気軽にお問い合わせください。
お問合せ先はこちら


みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!