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第36回 親の愛ある期待と応援・支援とは?“ピグマリオン効果”は真実か否か…前編

 お母さん、お父さん、あなたがお子さんに「勉強しなさい」と言うとき、一体どんな気持ちがその裏に隠されているのでしょうか?

もちろん、我が子への期待があるからこそ「勉強しなさい」と言うわけですが、その期待は、誰に対する、どんな期待なのかということが重要です。果たしてその期待は、お子さんの幸せな未来にかけた期待なのか、自分が果たせなかった夢をお子さんに投影し、実現してほしいと思ってかけている期待なのか、さらには親自身の劣等感や虚栄心から出る期待なのか、それは様々であると推測できます。

私個人の結論としては、環境も含め、今の自分自身の人生を受け入れることができている、心が平穏平和な親は、そうそう我が子を拷問のように勉強させたり、行動に対して過剰な指示命令はしないと考えています。ですので、私のところに「子どものことで悩んでいます」と言って来てくれる場合は、ほぼご自身の心の奥底に潜んでいる何かが原因となり、子どもさんに影響を与えていると考え、お話しさせていただきます。まずは、お母さんの心が幸せになること、これが私の思いであるからです。

症例①
私の人生はもっと幸せであったはず、そして私はもっとできたはず…
このお母さんの学歴は上の下、様々なことに高い能力を持っており器用で、外見も美しいため、自分には自信がある。しかし、自身の父の男尊女卑の価値観から希望する進学を許されず、学歴と経歴に不満があり、傲慢な男性への嫌悪感と対抗心もある。それが子どもに対する過度の期待となり、そこそこの成果や結果では満足できないため、子どもを褒め、認めてあげることができない。私の”もっとやりたかった!できたはず!”が、子どもへの”もっとやれる!できるはず!”にすり替わってしまっている。

症例②
自分の家庭環境や生育歴への不満から、子どもには地位と名誉を持たせたいと思っている…
このような価値観の場合、親のパーソナリティーによってはプラスに働くこともあるが、嫉妬心や対抗心、悪意が強い親の場合はこれがマイナスに働き、子どものパーソナリティーにも影響することが多々見られる。まさに”蛙の子は蛙”というあれである。そのような親の場合、子どもが高い学歴や華々しい経歴を持つことが、親である自分の評価であるかのように勘違いし、他人を見下す。そしてしだいに子どもは親の思考に染まり、周りからは”傲岸不遜”な親子というレッテルを貼られてしまっている。

症例③
自分の名前(社会的立場)を汚す、下げる子どもであってはならない…
親に社会的立場があり、家族、親戚も優秀であると周りに認識されている(勘違いしている場合もある=自意識過剰)。自分は成功者であるので、自分の考えは正しい、子どもは自分の思うように生きれば幸せになれると思っており、そうすることで、自分の立場や体裁を保つことができると信じている。子どもは自分がどうなりたいのかということを、自分で考えることができなくなっており、とにかく親の期待に応えることに全力を注いでいる。そのストレスと思われるが、会話の中で人の悪口を異常に言う。「バカ」の多用。

さてここで、今回のタイトルにある”ピグマリオン効果”についての説明をしてみましょう。

他者からの期待を受けることで、その期待に沿った成果や結果を出すことができるという心理効果のこと。アメリカの教育心理学者ロバート・ローゼンタールがネズミと人間で実験し、「教師期待効果」や「ローゼンタール効果」とも呼ばれています。

ピグマリオンとは、ギリシャ神話に登場するキプロス島の王様の名前で、このピグマリオンが自分の作った女性の彫刻に恋をしてしまい、その彫刻が人間になることを強く願い続け、神に頼んで人間にかえてもらったという神話に由来して名付けられました。

1963年、ローゼンタールとフォードが大学の心理実験で、学生たちにネズミを使った迷路実験をさせるのに、ネズミを渡す際に、これはよく訓練された利口なネズミ、これはまったくのろまなネズミと言って渡したところ、その二つのグループの間で実験結果に差異が見られた。前者のネズミを渡された学生たちはネズミをていねいに扱い、後者のネズミを渡された学生たちは非常にぞんざいに扱った。ローゼンタールはその両者のネズミへの期待度の違いが、実験結果に反映されたものと考え、これは教師と学生の間でもあり得るのではないかということで、次の実験を行った。

1964年、今度は教育現場での実験として、サンフランシスコの小学校で、「ハーバード式突発性学習能力予測テスト」と名づけた普通の知能テスト(ここが大切!)を行い、学級担任には、今後数か月の間に成績が伸びてくる学習者を割り出すための検査であると説明した。しかし、実際のところ検査には何の意味もなく、実験施行者は検査の結果と関係なく無作為に選ばれた児童の名簿を学級担任に見せて、この名簿に記載されている児童が、今後数か月間の間に成績の伸びる子ども達だと伝えた。その後、学級担任は、子ども達の成績が向上するという期待を込めて、その子ども達を見ていたが、確かに成績が向上していった。報告論文の主張では成績が向上した原因として、学級担任が子どもに対して期待のこもった眼差しを向けたこと、さらに子ども達も期待されていることを意識したため、成績が向上していったとされた。

後編に続く…