見出し画像

コロナ状況下、教育機関の変化のあり方:ミネルバ大学が今再び注目される理由

今回は、創設者の植山の出身学校でもあるミネルバ大学での学びについて書かれた記事を紹介したいと思います。(大学生インターンのリオンさんが和訳してくれました!)

今なぜミネルバ大学なのか?
そこでの学びとはどのようなものなのか?
これからの時代に向けて、教育機関が求められる変化とは?

コロナウイルスの大流行により日常が大きく変化した今だからこそ、これからの未来について考える絶好の機会ではないでしょうか。


“Transforming Education for the 21st Century Beyond Technology”
https://blogs.iadb.org/educacion/en/transforming-education-for-the-21st-century-beyond-technology/?fbclid=IwAR38XcogRj0SngTmG94VQ5akWuEjOM0SkSwPzBhWphNFzkWexviINsKIjwM

今年1月~3月に世界中でコロナウィルスが大流行し、大学生の大半が講義を受けることが出来なくなっています。しかし、600人のミネルバ大学生は「いつも通り」です。

ミネルバ大学は、普段から全てのカリキュラムがオンラインで行われており、学生は春学期の間はサンフランシスコ、台北、ブエノスアイレス、ハイデラバード、秋学期からはソウル、ベルリン、ロンドンに滞在します。実践的な活動として、滞在先で地元コミュニティとプロジェクトを行います。学生同様、教授陣も各自のプラットフォームからアクティブラーニングで講義をするため、世界各地に散らばっています。

今回の突然の出来事に、他の大学は急ピッチで対策を進めましたが、やはり上手くいってるとはいえません。学校や大学は、これからもっとテクノロジーを日常的に取り入れ、いつでも柔軟に対応できるように体制を変えて行く必要があると言えるでしょう。
コロナウイルスの流行は、これからの予想不能で不確実な社会を、大学や学生たちがいかに生き抜いていくのかを考え直すチャンスです。

21世紀の教育

目覚ましいデジタルテクノロジーの進歩により世界が激変したことで、多くの高等教育機関はテクノロジーのスキルや、プログラミング、ロボット学などのカリキュラムを増やしています。しかし、最近のIBMの調査では、48カ国の企業のCEOの41%しか自社に21世紀で成功する才能やスキル(柔軟性や、適応性)を持つ社員がいない、と回答したことが分かっています。

批判的思考、創造的思考、コミュニケーション、協働ーーこれらが、将来必要な基本スキルであることは多くの人が納得するでしょう。非常に重要にも関わらず、人生を通していつでも使えるヒューマンスキルをカリキュラムとして取り入れている大学は数少なく、学生はこのスキルを行き当たりばったりで身につけている現状です。

画像1


21世紀型カリキュラムの原則

高等教育は何のためにあるのか、という議論はいまだに行われていますが、ある人は高等教育は単に卒業後に特定のキャリアを歩むためだけの準備機関だ、と言います。しかし、これでは視野が狭すぎるし、これからの予測不能な世の中ではたして役に立つでしょうか。また、別の人は、教育とは自らの知的好奇心を追求するものだ、と言います。

一方、ミネルバは、この二つとは異なり、2世紀以上前にベンジャミン・フランクリンとトーマス・ジェファーソンによって提唱された観点を受け継いでいます。これは、「実践的な」知恵が、国と人のために役立ち重要である点について語ったものですが、この200年間で言葉の意味するものが変わったとはいえ、ミネルバはこれらが21世紀でますます必要になってきていると信じています。

21世紀型スキルを学生に身につけてもらうため、ミネルバでは以下の原則に沿ってカリキュラムを作っています。

1、コンテンツを重視しない

・コンテンツははいたるところにあり、ほとんどの場合無料。そんな情報を生徒の頭の中に叩き込ませ、覚えさせる必要はない。
・学生自身ににほぼ全てのコンテンツを探してもらう“Flipped classroom approach”(反転学習)を導入。
・学生たちは、どこに必要な情報があり、それをどう評価し、どう使うか、というスキルを学ぶ。

2、学生は正しい情報を得たうえで自ら選択する

・多くの学生は卒業後の進路がはっきりと定まっていない。よって、出来るだけ最初に広い視野を養うよう、ミネルバでは全ての学生が1年次に同じ4つの基礎コースを学習し、2年次の中頃で専攻を選ぶ。
4つの基礎コースは、以下の通り。
(1)論理的分析:批判的思考の基礎
(2)実証的分析:創造的思考の基礎
(3)多様なコミュニケーションモデル:効果的なコミュニケーションの基礎
(4)複雑系システム:効果的なインタラクション(相互関係)の基礎

3、講義は行わず、全てアクティブラーニングで行う

・ステファン・コスリン教授いわく、先生1人対大人数の生徒の形式をとる一方向の講義は教える上では素晴らしいツールであるが、学生一人一人が学ぶ上ではひどいツールであるという。
・ミネルバでは全てのクラスが学生一人一人が自分の意見を言語化し議論するセミナーベース。
・教授の役割はファシリテーターであり、授業時間の15%の時間しか話さない。学生たち自らが議論を進めていく。

4、学生は世間から隔離された「キャンパスライフ」ではなく、実社会に混ざりながら生活すべきである

・生徒たちは本記事冒頭で挙げた7つの都市で、実践的なプログラムに参加する。
 ーコミュニティプロジェクトに参加
 ーローカルビジネスで働く
 ー政府機関で働く
 ー生徒主体のアクティビティ
・これらのプログラムには個人指導が組み込まれ、また学生たちはプロ意識、自己管理、社会的教養、自己責任、対人関係などの観点からフィードバックを得られる。
・このように世界規模で文化に浸る教育が可能になっているのは、授業がオンラインだからである。

5、実用的な知識を身につけるべきである

・学生は初年度からインターンシップを勧められ、そのための手厚いサポートを受けられる。
・インターンシップ受け入れ機関からのフィードバックは、非公式なものではあるが成績評価の一部である。


21世紀型スキルの習得

ミネルバが定義する21世紀型スキルは4つのコアスキルに分類されます。

(1)批判的思考
(2)創造的思考
(3)効果的な協働(コレボレーション)
(4)効果的な相互作用(インタラクション)

これらのコアスキルを教えるため、まずコアスキルを「思考習慣」と「基礎的概念」に分類されます。
認知能力などの「思考習慣」とは、普段何気なく考えて判断していること、「基礎的概念」とは広く使える基礎知識のことです。

4つの技能は、全て思考習慣と基礎的概念に分類することができます。

画像2

この手法はミネルバが、変化し続けるコンテクストよりも概念を重視し、学生にどのように21世紀型スキルを習得させるのかという、ほんの一例です。

自動化は、産業を崩壊し仕事を奪うと同時に、私たちが想像できないようなものを作り上げています。その中で学生たちは素早く柔軟に知識を生かすことが求められるでしょう。

このコロナ危機の状況下で、高等教育機関は予想不能な事態に、迅速に適応し対応出来ることは分かりました。今こそ、学生がこれからの予測不能かつ不確実な未来を歩んでいくため、現在のシステムを見直し、学んだことを生かせるシステムに再構築するチャンスです。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?