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生成AIを活かして士業が活躍できる未来をつくりたい(前編)

行政書士としての経験を活かし士業向けの経営コンサルティングを行うかたわら、生成AI技術を活用した新しい業務形態への移行を支援している横須賀さん。
インタビュー前編では、「士業の持続可能な発展を支えたい」と語る横須賀さんに日頃の活動や生成AIが及ぼす士業への影響についてお話を伺いました。

横須賀 輝尚(よこすか てるひさ)氏
パワーコンテンツジャパン株式会社 代表取締役/WORKtheMAGICON行政書士事務所 代表
行政書士として事務所開設の経験を活かし、日本初の士業向けの経営スクール「経営天才塾」(現「LEGALBACKS」)を創設。その後、士業向けの弁護士顧問サービスである「LEGALMAGIC」を立ち上げるなどの専門性の高い士業向けサービスを提供し、コンテンツを通じて知識の普及と業界の発展に貢献している。

行政書士としての開業経験を活かして業界へ恩返しを​​

—横須賀さんのお仕事を教えてください。

横須賀さん:主に「LEGALBACKS」と「LEGALMAGIC」という二つの会員制サービスを行っています。その他にセミナーを開催したり、最近では、生成AI活用のための解説やプロンプト(ユーザーが入力する指示文)を提供したりと、様々なコンテンツを提供しています。

「LEGALBACKS」は士業の方向けの起業支援や経営コンサルティングを行う会員制サービスです。開設当初は「経営天才塾」という名前で運営していましたが、現在は「LEGALBACKS」と名前を変え、サービスとしては2024年で17年目をむかえました。

「LEGALMAGIC」は、士業の方向けの弁護士相談サービスです。社会保険労務士、行政書士、司法書士、税理士の皆さんは、ご専門分野の個別の法律には強いのですが、基礎法学の法律解釈が苦手な方もいらっしゃるので、イレギュラーな問題が起きたときに弁護士に相談できるようにしました。
 
—なぜ士業向けのサービスを展開しようと考えられたのでしょうか。
 
横須賀さん:自身が行政書士として独立し上手くいった方法を、何かしらの形で業界に恩返ししたいと考えたことがきっかけです。当時はまだ士業向けの営業や経営の指南書が世の中になかったので、私が伝えることで業界に貢献でできるのではないか、と考えました。

士業の仕事は8割、9割が受託型です。例えば、建設業許可*業務ならば、お客さんが”建設業許可取りたい”というニーズがないとそもそも仕事になりませんよね?同じく会社の設立手続きも、顧客が「会社をつくりたい」と言わなければ、受託することは不可能です。そういった事象が発生した後でしかニーズが発生しないため、こちらから事前に営業することが難しい仕事なんだ、と開業して気がつきました。

(*建設業法によって規定される、建設業を営む際に必要な許可のこと)

そこで、まずはニーズありきでなく、それ以外にお客さんが興味のありそうなもので顧客とつながるためにコンテンツを利用しようと、ブログの執筆から始めました。始めた頃は、ブログ(当時は楽天日記)ができたばかりで、個人で発信されている方があまりいませんでした。当時は、顔出しや実名で発信される方も少なかったこともあり、開始から半年ほどで資格カテゴリーでアクセス数が全国1位になったんです。
 
ブログの他にも、セミナーや勉強会、コーチングといったコンテンツを出していったことで、まず士業として認知してもらうことができ、結果として仕事を得られるという「資格起業家」というビジネスモデルを作っていきました。

また、セミナー活動をしつつ、本を書く機会にも恵まれて、実績を作ろうと27歳までに11冊の本を書きました。コンテンツを出せば出すほど士業の仕事が入ってきますから、そうやって営業のモデルを確立していきました。セミナーや本の執筆を行いながら、2005年により本格的にコンサルティング業に力入れようと、会員制サービスを行うパワーコンテンツジャパンという会社を作りました。

マーケティング戦略について講演する横須賀さん

生成AIの登場で「士業壊滅」の危機

— 本業以外には、どのような活動に取り組んでいらっしゃいますか。 
 
横須賀さん:AI時代における士業の進化と自立を促進するために、教育と啓蒙活動を行っています。具体的には、noteで告知をして、ZOOMを使った無料配信をしています。生成AIの登場は、士業のあらゆる業務がひっくり返る可能性のある大きな出来事だと思っていますが、士業の皆さんはまだ関心が低い分野です。今はようやく、皆さんの危機感が出てきたと感じています。

— AI技術の活用に関して活動をしようと思ったきっかけはありますか。
 
横須賀さん:2023年の初め、生成AIの話題が増え、私もその情報を見て自分で生成AIを触ってみました。そのとき「これは、ものすごいもの出てきた」と感じました。生成AIは士業への影響が本当に大きいはずだと確信し、「どこよりも早い士業のためのChatGPT解説」といったような配信を始めました。「士業壊滅」への危機感を訴えたコンテンツは新聞にも取り上げていただきました。これは伝えておかなかればいけないという思いが、当時から強かったですね。

士業が持続可能な経営をずっと続けていくためには、変わっていく世の中の情報を集めて、それを形にしてきっちり伝えていくことが大切です。自分たちがアップデートしていくことを考えなければいけません。ですから、私は、新しいことを学ぶ上で生成AIの専門家にもお金を払って勉強していますし、自分でも生成AIを使っています。

とはいえ、士業の皆さんが、目の前の仕事を置いて生成AIを自力で学ぶといったことは難しいと思います。ですから、私がいろいろな情報を集めて、生成AIのプロンプトも簡単にした上で伝えることで、皆さんが使いやすいような支援をしています。

生成AIについて配信セミナーを行う横須賀さん

生成AI時代は、実力差が如実に結果にあわられる

— 士業における生成AIの影響には、具体的にどのようなものがありますか。
 
横須賀さん:今後、大きく影響を受ける業務は、大きく分けて二つあります。

一つは相談業務です。チャット型の生成AIには手軽に相談ができますから、士業への相談業務がなくなるのではないかという恐れがあります。今はまだ生成AIの回答が一般論でしかありませんし、法務省も個別相談は禁止だと言っていますので影響は少ないかもしれません。しかし今後は、ちょっと士業の誰かにしてみようという相談業務の機会は減っていくでしょう。士業は相談業務が顧客の入口として機能しているので、それがなくなることは大きな問題です。

もう一つは書類作成業務ですね。書類作成もいずれ生成AIが代わりに行うだろうと言われています。

現状でいうと、相談業務に関しては、専門家向けの相談チャットが実用フェーズに入っています。要は、税理士や社労士などの士業自身が自分の調査時間を短縮するために使うという、専門家向けの用途での生成AIの使用です。例えば、「内縁の妻は扶養に入れますか」という問いも「事実婚」という言葉が出てこないと上手く調べられません。そのように知識のある専門家の利用用途としてはすでに実用的に使える状況です。ただいずれは、専門家以外の一般の人も生成AIに相談するだけで問題が解決できるという方向に向かうでしょう。

次に書類作成業務に関しては、実用フェーズはクリアし、テキストを主体とした書類作成の専門家向けサービスがどんどん出てきています。例えば「補助金エージェント」という生成AIサービスは、補助金の事業計画を数分で作ってくれます。サービスにヒアリングしたデータを入れると、100点満点中75点から80点くらいの出来で事業契約計画を作ってくれます。そういった専門家向けのものを使って業務効率化をはかる段階にあります。今後は、テキストが主体の就業規則や契約書などは、全部生成AIで作れるようになるでしょう。

— 今のところは、士業の業務効率を上げる用途が多いのですね?

横須賀さん:そうです。そして今後、士業の皆さんが直面する問題は、どこで対価をいただいていくかを考えなければなりません。
生成AIを利用することで業務効率は上がり、書類作成業務を無料で提供する士業が出てくるかもしらません。そうして価格崩壊が起きたり、あるいは、お客さんが生成AIのツールを入れてしまえば、士業に頼らずとも仕事が完結してしまうという未来も考えられます。 

そうなった場合、士業が対価をいただく道は、詰まるところコンサルティングの領域ではないかと思っています。コンサルティングが主軸となる場合、実力差が報酬の差となって、如実に現れるだろうと感じています。もちろん全ての業務が生成AIに代わることはありませんが、生成AIで失われる職業ランキングでは常にトップにランクインしていたのが士業という業態ですから、業務の転換を求められる時が迫っています。

士業は今後、「誰に頼むか?」がお客さんにとって重要な選定基準になってくるでしょう。そこで選ばれなければなりませんから、そのために専門家として、それぞれが独自のコンテンツを出して、気づいてもらうしかないわけです。そして、そういった情報発信をするときにも生成AIを使って効率的に仕事を進めていく努力も必要でしょう。でなければ、仕事が増える一方になってしまいますから、ぜひ上手く活用して欲しいです。

生成AIの影響は、士業の仕事を厳しくする面もありますが、ちゃんと使えば便利な面もあるわけです。例えば、先日、弊社の会員向けに”Kindle書籍の企画から構成案までが2,3分でできる”というプロンプトを作りました。30分もあれば実際に一冊書けるというプロンプトです。私たち自身が生成AIをきちんと知ることによって、生成AIの脅威もわかるし、自分たちもうまく情報発信ができます。技術はどんどん進化していて、この生成AI発達の流れには抗えないと思います。ですから、しっかり理解して積極的に使っていきましょうとお伝えしています。



インタビュー後編では、士業の持続可能な発展を支援する理由として「格好良く生きたい」と語る横須賀さんに、その思いの原点や士業があるべき理想の姿についてお話を伺いました。

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