見出し画像

農機具から精密機器の製造まで、時代のニーズを先取る「有限会社石田製作所」

本日は有限会社石田製作所三代目の石田康史さまにお話を伺いました。

創業して75年、弊社は祖父の代より井関農機社の協力工場として創業しました。

初期工場の壁面には井関協力工場の文字が

事業を継承した経緯

二代目の父からは継ぎなさいとは言われたことが一度も無く、「自分の好きな道に進めばいい」とずっと言われてきました。その為、三条の地元を離れ関東の企業で10年間営業職として会社勤務していました。
全く戻るつもりもなかったのですが、しばらくすると縁があって新潟配属になったのです。
会社でリーダー的な立場まで任されるようになったころ、結婚をきっかけに「将来的に両親の面倒はだれが見るのか?会社はだれが継ぐのだろう?」と将来的な事を妻とよく話すようになりました。

私は営業職の為、工場の勉強など全くしていませんでした。ですから工場で子供のころから遊んでいた兄貴的な存在の鈴木さん(現:常務兼工場長)が当然会社を継ぐんだろうなと思っていました。
しかし、以前から地元へ折に触れて戻るたびに鈴木さんから、「いつ戻って来るんだ」と半分冗談交じりにいつも声をかけてくれていた言葉をだんだん現実の事と意識するようになってきました。

そして2005年10月、祖父が創業し、父が継いできた石田製作所を継ぐ覚悟を決め、入社しました。

工場で働くようになってからも鈴木さんとは良い関係を築けており、私は外からの目線で外部に向けて自社の得意とする技術のPRや提案を行い、鈴木さんと互いに得意分野を生かしてゆく体制を取りました。
そして3年前に正式に石田製作所の三代目に就任しました。

私は高校時代から地元を離れていた為、この地で地域との関係性を築けていませんでした。そこで青年会議所や商工会に入会し、いろんな方とコミュニケーションを取るように心がけ、特に燕三条のものづくりの先輩方との交流や情報交換は自分にとっても会社にとっても本当に良い刺激を頂いております。

事業の柱

弊社は、将来の事業の5つの柱づくりを目指していまして、 そのすべてに業種をかぶらせないよう意識しています。

元々の生業は農機具部品の製造を受けていました。しかし一業者依存だと時代の流れや景気の動向に大きく左右されます。
そこで二つ目の事業体を形成するために富士通(FTEC)の精密板金加工の部品製造が始まったのです。
請け負った内容は銀行で使うATM機の部品製造ですが、100分の1mmの寸法精度を求められる超精密な加工が必要でした。弊社としてはあえて皆がやらない超精密な分野をうちでやろうという事に方向を転換していった、これが将来における新たな事業の柱づくりの始まりとなりました。
二本の柱が立つことで経営が安定してゆき、高品質なものづくりが少しずつ認められ、医療機器部品も手掛けるようになりました。

三つ目にアウトドア製品
以前からファンだったスノーピークの商品を製作することになりました。これまでの部品の下請け加工ではなく、パートナーとしてメーカーと一緒になって、設計段階から試作まで何度も試行錯誤しながら最終製品を作り上げてゆく過程は非常に大変ですが、弊社にとっても楽しくやりがいのある仕事です。

大人気商品となったスノーピーク製品

また、このスノーピーク製品を量産させていただく中で、曲げ加工のロボット化が本格スタートしました。製品を量産するニーズが高まり、24時間稼働可能な最新のロボットベンダーを導入致しました。
爆発的なキャンプブームが後押しとなり、コロナ禍においては大変助けられました。
古い倉庫を改築し、魅せられる工場とオフィスを造り、若い人たちにもこんな工場に働きたいと思ってもらえるように心がけています。

最新のロボットが24時間駆動している

現在、事業の四つ目の柱づくりとして航空機産業への参入を目指していますが、 そのためにJISQ9100 (航空宇宙・防衛産業に特化した品質マネジメントシステムに関する国際規格)の取得を進めています。 
航空部品は非常に繊細な加工と高度な 品質管理が求められます。 しっかりと体制を整え、 JISQ9100を取得し、 試作と量産加工を繰り返し 実績を積み重ねていけば、将来的に五つ目の柱として、 宇宙や防衛事業への展開も見えてくると期待しています。 

航空部品を手掛ける機械

このようにそれぞれ違った業種の得意先の売り上げをできる限り20%ずつに割合出来るよう意識し、時代や季節、ブーム、経済の動きに左右されない経営を目指してます。

製品のチェック機能

現在、工場では自動化を進めています。しかし、最新の機械を使用したとしても人間の手と目と経験が必要不可欠なのです。
製品の不備はないか、的確なツールや条件を設定してるか、材料ロットや気温・湿度によっても油の粘度や加工条件が変わってきます。
また、精密部品の検査の判断基準は、検査員の経験や性格に左右される部分がありますが、人間の目や アナログによる従来の検査だけでなく、 最新の三次元測定機や画像寸法測定器、そして材料や物質の元素を 分析できるデジタルマイクロスコープなどを最大限活用して検査を行っています。
近代の工場ではものを作る作業従業員というよりも、最新のデジタル機器・機械を使いこなすIT従業員が求められている時代へと変化してきています。

1/100ミリの検品を行う

苦労した時期

15年くらい前バブル崩壊し仕事が減った時に自社製品の開発に乗り出したことがありました。
女性向けの小さな製品ですが、弊社の技術の全てを投入し「技術の見える化」を目的として作った自社製品があります。 
現在は主として製造してないのですが、結果的に企業説明をするときに役立つのでこの商品を作ってよかったなと思っています。
特に女性の見学者に対しては効果高かったですし、BtoCの仕事は初めてだったので、直接お客様からお礼の 言葉やお手紙、メールを頂いた時は本当に嬉しくて、改めてしっかりとしたものづくりを頑張ろうという 元気が沸いてきました。

技術が集約されたオープナー

会社の方向性

情報の早さが増し、時代の流れをつかむことは、数年前とは大きく変化してきました。私達のような町工場も、2~3年前から準備して次の時代のニーズを掴んでゆかなければいけないと確信しています。
ベテランの職人が培ってきた技術を若い人材へ継承するため、 また働き方改革による残業規制にも対応し、 生産性を上げ賃金の向上をはかるためには、 今後、 もっと人間と協働ロボットの共存を推し進めていく 必要があると思っています。 また、若手社員によるインスタグラムでの情報発信などを通じて、外部(特に若い世代) に対して、 石田製作所の魅力を発信するのと同時に、 社員間のコミニュケーションと モチベーションの向上を心掛けて行きたいと思っています。
そういった投資は、まさに会社の変革期にあたります。

社員への対応

これまで、社長一任の部分が大きかった社員の評価とそれに伴う給与・賞与および各手当について、3年前に、評価基準と各手当を明確化しました。
資格取得の費用は全額会社が補助し、社員のスキルアップを 支援しています。
また、 退職金制度も新たに追加導入しました。
同時に年に一度、5月に2日間かけて全社員との 個別面談を、鈴木常務と実施するようにしました。
それぞれの仕事に対する目標や悩み、家族のことや健康の ことなど、社員一人ひとりとじっくり話をする機会ができたことで、より皆さんとコミニュケーションが図れる ようになったので、これからも是非継続していきたいと思っています。

一級技能検定を取得した種部さん

スタッフインタビュー

今回は石田製作所燕工場で勤めている菅原里菜さんにお話を伺いました。

ご両親は横浜から燕市に移住してきたそうです。(動画は画像をクリック)

https://youtu.be/qXn2DLb8y6I

今後の目標

ロボットに作業させることで、効率が上がりました。おかげで従業員には別の仕事を回せられるようになってきました。そして社員は体を休められるし家族との時間が増えたのではと思っています。

今後は次世代リーダーを育てられるよう、JISQ9100の品質マネジメントシステムを構築しながら、マニュアル作成、評価の仕組み、教育プログラムを見直し、次のステップアップを目指していきます。

5つの柱つくりを目標に、100年企業に向けて成長してゆきたいと思っています。

多くの金型をシステムで管理している

移住・定住・就職をサポートは、燕三条駅構内にある「こうばの窓口」にご相談ください。

サンクチュアリ株式会社では燕三条での暮らしを提案いたします


この記事が参加している募集

仕事について話そう

仕事のコツ

with 日本経済新聞

サポートいただけたら幸いです!ガンバリマス。