見出し画像

不動産ファンドの表と裏

前回書いたように、リーマンショックの際のようなマイナス方向の仕事があれば、それとは反対に、プラスの仕事も存在する。
要するに、市況がマイナスになっているということは、不動産が安くなってるということでもあるので、投資会社としては「買い」の動きも同時並行で行っていく。

僕も同時期に2つのプロジェクトを進めていた。
一方のプロジェクトでは「30億支払わない」と言い、もう一方のプロジェクトでは200億の買いを行う。

そこには、まったく別人格の自分が存在した。

これがファンドの面白いところでもある。


会社というくくりで物事をみず、一投資・一プロジェクトごとにみていく。
このプロジェクトとあのプロジェクトを、完全に別物として捉えている。

投資家のお金を運用することが会社の役目なので、投資されているお金、リターンのお金は、自社のお金ではなく投資家のお金なのだ。

しかしながら、相手の理解を得るのには苦労した。
当時の日本は、ファンドの考え方がまだ浸透していない時期でもあった。

30億支払わないと告げた相手企業から、
「いや、田中さん。
あなたは払えないって言ってるけど、この前のリリース情報で物流倉庫を買ったって出とるけど、どういうことか説明してくれ」
と言われた時は、さすがに困った。


僕自身はというと、運用側に回ったことで、不動産の奥深さと面白さがようやくわかってきた。
不動産業界に身を投じて十数年経って、やっとだ。


数字や分析についても、このUS系不動産投資会社でたくさんのことを学んだ。

市場で起きていることを数字に置き換えて分析すると、非常にわかりやすくなる。
これまで感覚値で捉えていたものを、可視化することができる。

今の価値はどれほどか。
将来の価値はどうなりそうか。
それは、なぜなのか。

分析が絶対に正しいとは言えないし、正解かどうかは誰にもわからない。
でも、客観的な指標にすることで見えてくるものが、そこにはたくさんある。
分析手法を知っていくことも、それを用いて分析していくことも、楽しさのひとつになった。


この領域を深めるため、僕はもう一度転職をする。
次に選んだのが、香港系不動産投資会社である。

「不動産以外の投資(債権投資)」と「英語」
このふたつを得るために転職した。

その会社は、以前のUS系不動産投資会社より投資規模の大きい会社だった。
分業制で、すべてが効率化されていた。
そのため前職に比べると、少し時間の余裕があった。

僕は空き時間を活用して、同僚と一緒にIT×不動産のサイトをつくろうと構想をしたりした。


この構想をきっかけに、人生が動き出すことになる。

次回につづく。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?