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【スタートアップのエンジニア採用戦略】変化する人材市場に採用で勝ち抜くためのインサイト

エンジニア採用の激化は加速する一方です。特にスタートアップにとって、優秀なエンジニア人材の確保は事業成長の鍵となる重要な課題です。しかし従来の採用手法が通用しなくなりつつある今、新たな戦略が求められています。

そこで本記事では、ProfitMakersの取締役であり、人材採用で多数の実績がある高野の実体験を交えながら、スタートアップにおけるエンジニアの採用戦略に焦点を当てて解説します。

「これまで通りの採用活動」の限界から、SNSを活用した新しいアプローチ、さらにはお試し業務委託契約の増加まで、変化する採用市場の最新トレンドを徹底分析します。また、真の採用計画とは何か、どのようにして自社に最適な人材を見極めるのか、そして採用競争で優位に立つためのポイントについても詳しく触れていきます。ぜひ最後までご覧ください。

取締役・高野 志麗
IT/Web領域に特化した人材紹介を5年経験したのち、事業会社で採用人事を4年担当。マネージャーとして事業の成長を人材面から牽引した。その後ProfitMakersの取締役CHROに就任。HR事業「PROFIT」シリーズ立ち上げと自社の組織づくりや採用活動による事業拡大を担っている。

スタートアップにおける人材確保の難しさ

スタートアップの人材確保が難しいのは今も昔も変わりません。ただ、足元の中途採用に関しては、ここ1-2年で状況が大きく変化しています。以前は効果的だった採用手法が、今ではうまくいかなくなってきているのです。
例えば、ダイレクトリクルーティングが注目を集めた時期がありました。しかし、最近では状況が一変しています。なぜでしょうか?私は理由は大きく2つあると考えています。

・データベースの質の低下
求人媒体側の売上増加を目的としたスカウト数の大幅増加により、求職者が受け取るスカウト数が激増。その結果、スカウトの開封率は平均40-50%から10%程度まで低下しています。

・エージェントの参入
多くの求人サイトでエージェントも登録可能になり、求職者は事業会社だけでなくエージェントからもスカウトを受け取るようになりました。これによりユーザー体験が低下している媒体が増えています。

このように、ダイレクトリクルーティングですら望む人材に出会えなくなっている現状です。特に経営陣の知名度や影響力が大きくない企業では、特に採用に苦戦しています。こうなると当然、従来型人材エージェント自体の介在価値も大きく変化が求められますし、事業会社と同様にヘッドハンティングには苦戦していくと予想されます。

では、今後はどのような採用戦略が効果的なのでしょうか?

まずはYOUTRUSTやLinkedInなども含めたSNSの活用が重要であることが挙げられます。また、経営陣や社員個人のネットワークを活かしたリファラル採用が鍵となりそうです。個人的には、自身のSNSを活用してヘッドハンティングしているエージェントも、質の高い候補者を紹介してくださる傾向にあると感じています。

いずれにせよ、採用担当者だけが人材を確保していく時代は終わりつつあります。個人のネットワークや専門性を活かした、より戦略的な採用アプローチが求められているのです。

優秀なエンジニアを引き付けるための戦略

スタートアップが優秀なエンジニアを獲得するためには、プロダクト、給与、経営陣の思想/キャリアの3つが重要です。しかし当然これらを変えることは簡単ではありません。

そこで多くのスタートアップが注力すべきなのが、発信量を増やすことです。具体的にはエンジニアブログの開設、社員インタビュー記事の作成、そして開発環境や技術スタックの紹介などが挙げられます。他にもエンジニア向け採用資料を作成するのも効果的です。人手不足の昨今では既存の採用手法だけでは戦いづらくなっているので、最低でも受け皿となる採用ページを1ページ分だけ外注してでも作成し、いかに働くイメージを湧かせるかトライすることをおすすめします。

さらに、それらを用いたエージェントへの情報提供も重要です。採用ターゲットとなる人材に提供できる情報があればあるほど、企業の魅力や求人の特徴を詳細に説明し、その職位でのキャリアアップのポイントを明確に伝えられるようになります。ですから、エージェントが正確で魅力的な情報を持っていれば、適切な候補者とのマッチングの可能性が高まると考えられます。

もちろんそうした取り組みに効果があると信じられない経営陣もいらっしゃるでしょう。その場合は、数字とKPIでモニタリングすることで説得力を持たせることができます。効果測定の指標例は様々です。

  • 自然応募数の増加

  • 記事のPV数推移

  • スカウトメールの返信率の変化

  • 面接での志望度や第一志望率の変化

なお、これらのアプローチは半年以上の期間で実施し続ける必要があります。なぜなら記事を1本作成しただけでは応募数が爆発的に増えたり、すぐに効果が感じられたりするシーンは多くはないからです。一方で、短期的には急募ポジションに焦点を当て、そのターゲット層に魅力的な情報を可視化していく効果は複利的に働きます。このあたりをどのように経営層や採用を希望する部署の責任者と握れるかに採用責任者の手腕が問われます。

真の採用計画とはなにか

「採用計画は上流工程だ」なんて言葉をよく耳にしますが、その具体的な内容は多くの人にとって曖昧です。実際、何をもって採用計画を立てたと言えるのでしょうか。

例えば、単に「何月までにフィールドセールス1名」と決め、そのための施策を考えるだけで採用計画だと考える人もいます。しかし本来これだけでは不十分です。「なぜその人数が必要なのか」「部署移動などで補えないのか」などといった疑問に答えられなければ、真の採用計画とは言えません。

採用実務に詳しくない人を説得するには、数字が強力な武器となります。過去のデータを分析し、「これまではこうだったが、新しい方法ではこう変わる」といった具体的な予測を示すことが重要です。例えば、「現在は月10人の応募に10ヶ月かかっているが、新戦略で月33人の応募を3ヶ月で集める」といった具体的な数字とその施策案があれば、経営陣も納得して採用活動に着手できるでしょう。

つまり、採用計画とは単なる目標設定ではなく、現状分析、戦略立案、そして数値に基づく将来予測を含む総合的なプロセスです。私はこれらを踏まえて初めて、本当の意味で採用計画を立てたと言えると考えています。

さらに、採用計画を実行に移す際の重要なポイントがあります。特にエンジニア採用においては、多くのスタートアップやベンチャー企業を見てきた経験から、人事部門だけで採用を進めるのは適切ではないということです。むしろ、面接に人事だけが出席すると、求職者側が失望する可能性があります。「どうせ技術的なことは分からないだろう」「技術的な質問に答えられないだろう」といった印象を与えかねません。

ですから、効果的な採用プロセスを構築するには、母集団形成の段階からエンジニアを巻き込むことが重要です。早い段階からエンジニアの視点を取り入れ、技術的な深い議論ができる環境を整えることができれば、優秀な人材を引き付けると同時に、候補者の適切な評価も実現できます。

「お試し」の業務委託契約が増えている

では、スタートアップにおける業務委託人材の登用はどのような状況か整理してみましょう。一般的にエンジニアは、他職種と比べても副業/複業等の業務委託で登用できるケースが多い傾向にあります。最大の利点は、通常の転職プロセスは長いリードタイムを要しますが、業務委託では即戦力を最短翌日からでも投入できることです。

もちろんデメリットも無視できません。受け入れる側にとっては、期待したスキルとのミスマッチが起こり得ます。「残念ながらフィットしなかった」「思っていたスキルと違った」といった事態が発生する可能性があることは予め考慮する必要があります。

一方で、複業や転職を見据えた「お試し」的な業務委託の形態が増えています。3ヶ月から半年程度の期間で業務委託契約を結び、相性が良ければ正社員への登用/転職を検討するアプローチです。現在スタートアップに所属している人材にとっても複業のハードルを下げるよい傾向だと感じています。

ここで興味深いのは、人材紹介エージェントの姿勢の変化です。以前は業務委託での「お試し」を嫌がる傾向にありましたが、最近では複業を通じたお試し期間を肯定的に捉えるエージェントが増えています。これは、このアプローチが実際の転職成功につながるという経験が蓄積されてきたためかもしれません。

ただし、この業務委託転職の流れは、主にある程度の実力を持った即戦力人材に限られています。ポテンシャル採用を希望する人材には、依然としてこのような提案はあまりありません。投資界隈で近年話題にあがるようになった、NISAやiDecoの登場による貧富の格差拡大の話題と、キャリアの話題には一定の共通点があると感じています。時間という投資機会を早期に活かせた人々と、そうでない人々との間で差が広がっていく様子は、キャリア形成においても似たような現象が起きているように見えますですから、早い段階でスキルを獲得し、経験を積んだ人材と、そうでない人材との間で、機会の差が徐々に拡大している可能性があります。

製品開発サイクルや個人のキャリア観の変化は加速傾向にあります。追いつくためには、自己投資や学習、複業を通じたコアスキルの獲得など、積極的にチャンスをつかむ努力が必要です。しかし、これらを持ってしても「追いつける」と無責任に言うことはできません。変化の速度と個人の状況は千差万別ですし、全ての人が同じようにこの変化に適応できるわけではないからです。それでも私は、できる範囲で変化に対応する努力を続けることが、今後のキャリアにおいて重要になってくると確信しています。

採用競争を優位に乗り切るには

今後の採用競争で優位に立てるかどうかは、単純な技術力の高さだけでは決まりません。確かに事業や業務における最新技術の導入(例えばDeepLの使用など)は1つの指標となりますが、それ以上に重要なのは、自社の事業やサービスの特性に応じて必要な技術力を見極める能力です。

高い技術力が必要かどうかは、実は会社によって大きく異なります。重要なのは、自社の事業やサービスの特性を深く理解することです。これらの要素を客観的に整理できている会社は、採用市場において大きな強みが発揮できます。なぜなら、そのような会社は自社に本当に必要な人材像を明確に描くことができ、それに基づいて効果的な採用活動を展開できるからです。

つまり、今後の採用競争で勝ち抜くためには、自社の特性に合った「適切な技術力」を持つ人材を見極め、獲得する必要があります。そしてそのためには、自社の本当の人材ニーズを正確に把握する力が不可欠でしょう。

もし採用戦略の立案でお困りのことがあれば、ProfitMakersにご相談ください。

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