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ウェルビーイングと教育

 先日、ある学校を訪問したところ、重点目標の一つにウェルビーイング(wellbeing)が入っていた。すばらしいと思ったので、いつからそうなのか聞いたところ、校長先生から「1年前からです。うちの自治体では教育委員会が推進しているので。」という答えが返ってきた。

 ウェルビーイングとは、一時的な幸福(ハピネス)とは異なり、継続した状態である。日本語で言うと、「充実した生活」「充実した人生」と言えよう。では、子どものウェルビーイングはどのような視点から、その実現を図ることができるのだろうか。

 まず、教育の文脈におけるウェルビーイングは、Student Engagement and Wellbeingと捉えられるべきである。Engagementとは「夢中になって学びや探求や活動をする」という意味である。誰しも、好きな科目や興味があることは夢中になって学んだのではないか。「夢中、没頭」の手助けをすること、そのための基礎知識や背景的教養を学ぶこと、身体的・精神的な健康を維持・向上すること、いずれも教育における大事な役割である。

 次に、①社会情動的な学び(非認知能力の育成)(Social and Emotional Learning)、②エージェンシー(Agency)、③公正(Equity)が重要であると考えている。この点は、日本教育経営学会大会シンポジウム(日本教育経営学会 第63回大会 (google.com))で論究する予定である。

 最後に、①~③を実現するためには、「価値観、ビジョン、組織的実践」が求められる。その過程における「ガバナンス」と「知識」も必要である。「知識」とは、グローバルな知識を意味する。「分散リーダーシップ」は「サクセスフル・リーダーシップ」に進化するべきである。

 これらの基盤にあるのは、「ヒューマニティ」「道徳観」「倫理観」である。「法的なコンプライアンス」も重要だろう。ドイツの法学者イェーリングは「法律は最小限の道徳である」と述べた。法律を超えて自由にふるまうときの「あり方」が問われる。ちなみに「教師のふるまい」に関する研究はこの延長線上にあると思う。

 さて、このようなウェルビーイングに関する議論において、AIの進展はどのような意味を持つだろうか。最近、ChatGPTが話題になっている。(参考:Introducing ChatGPT (openai.com))GPTは、Generative Pretrained Transformer(生成的事前学習変革媒体)の略だという。ChatGPTは、人間尊重、格差縮小(情報格差の縮小を含む)の方向で活用されるべきである。ChatGPTとの向き合い方も児童生徒や学生に解説する必要がある。今後、AIと教育について改めて論じる予定である。

                     (©Dr Hiroshi Sato 2023)
 


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