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臨床心理士・公認心理師が独断と偏見で司法試験のストレスについて語ってみた

はじめに

前回の弁護士ストレス発散方法ランキングに続いて、今週は司法試験で感じるストレスについて臨床心理士・公認心理師があれこれ話してみようと思います。

心理職的に言えば、司法試験がストレスであることは当たり前です。

あたり前田のクラッカーですね。

本日は以上!!


…あ、ごめんなさい。
…あ、訴えないで。。

試験日が延長された司法試験

令和2年度の司法試験は、元々5月13日から17日にかけて実施される予定だったのが、covid-19の影響で8月12日から16日に延期がされたようですね。

実は、心理業の国家資格の公認心理師の試験も6月21日から延期が発表されました。こちらは、まだ延期の日程が決まっておりません。

5月の試験に向けて勉強をされていた方も多いと思いますので、それが延期となってしまったことで、モチベーションの維持やペースを乱れてしまった方も少なくはないのではないでしょうか。

やらなくちゃいけないとは頭で分かりつつも、意欲や行動がついてこない場合もあるかと思います。

なかなか大変な中とは思いますが、そういう時は、ハードルをあげるよりは「確実に達成可能な目標を1日ごとに設定して、確実にこなすことを継続していく」ことをお勧めいたします。

とはいえ、ストレスが溜まっていて落ち着かない人もいると思いますので、今回は「試験×ストレス」について 触れていこうと思います。

ストレスをなくしたい

ストレスというと、ネガティブな印象を持ちがちですが、適度なストレスは緊張状態をもたらします。緊張感がないと、頑張れない時ってありませんか?

この図のように、高すぎず、低すぎない適度なストレスの時に、人は最適なパフォーマンスを発揮できるといわれます。これをヤーキーズ・ドットソンの法則といいます。

この法則によると、ストレスが低すぎるとやる気がなかなか出ずにパフォーマンスというのは、なかなかあがらないものといわれます。

私事ですが、私はついつい課題の提出などはギリギリにならないとスイッチが入らないタイプです。小学校の頃からそうなんですが、年々拍車がかかってきて、最終的には、ちょっとくらい遅れても…と、開き直るような領域に足を踏み入れ始めております(記事もギリギリで心優しいAmiのみなさんに助けられています)

このように、ギリギリまで動けないというのも、実は、ストレス状態に自分を追い込んでそこでエネルギーを一気に爆発させているとも言えるわけですね(ご迷惑をおかけしております


私の話はさておき、「ストレスは適度に必要」ということをまずは覚えておいてください。

ストレスっていいものなんですね

…と思うじゃないですか?

そうなんですけど、そうは問屋が卸さないわけです。

先ほど図を見ていただくとお分かりになると思いますが、ストレスが高すぎたり、その状態が続きすぎると、不安や緊張から気持ちが落ち着かなかったり、体調を崩してしまう場合もあります。

つまり、ストレスは低すぎても、高すぎてもダメなわけですね。

自分にとってどのくらいのストレスであれば、程よいのかというのを知っておくことも大事になってきます。

自分自身のストレスについて知ることや、ストレスの程度によって対処する(コーピング)ことを、セルフケアとかストレスマネジメントなんていうふうに呼びます(その話またいずれ)

目標はストレスにもなり、モチベーションにもなる

ドイツの心理学者である、Lewin.k(クルト・レヴィン)は、目標はストレスともなるがモチベーションや行動の原動力にもなるといっています。

したがって、司法試験があるというのは、ストレスではありますが、そのために勉強を頑張れる要因でもある、ただし、ストレスが高すぎると調子を崩すので要注意、となります。

そんなことはわかってたって?

ふふふ、では、みなさんはそんなストレスと本当に上手に付き合っていますか?

そうなんですよ、頭ではわかっていても、なかなか思うように行かないのがSU-TO-RE-SUです。

なので、今回みなさんからいただいたストレスを心理職目線で話してみようと思います(再掲)

司法試験を目指すみなさんのストレス 

みなさんからは、こんなストレスがあるということをお聞きしました。 

・模試の成績の確度が低い(成績が高くても、合格するわけではない。模試の成績と司法試験の合格・順位に関係性は低い)

・当日、どんな問題が出るか予測がつかない

・司法試験の勉強と、就活のための法科大学院の勉強の両立がしんどい

・就活で内定が出てしまっていることにより、過度なプレッシャーがかかる

・落ちたら1年間ニートになる(社会的肩書きがない)

・東大ロー生や予備試験合格者が周りに多く、その大多数が受かる(受かって当たり前という雰囲気)

・裁判官、検察官志望は順位が非常に大事と聞いている(受かるだけではないプレッシャー)注:Amiの一弁護士の見解:裁判官・検察官の採用に当たって司法試験合格の順位を見ますが順位だけではないと思います(例えば司法修習時の検察修習や起案等も評価されています)

・体調にも不調がくる(夜や明け方に目が覚める等)

・短答に落ちた瞬間に全ての努力が水泡になる

・2回目の時には、二度と落ちられないというプレッシャーがあった。それで胃腸の調子を崩してて(3ヶ月くらいずっとおなか壊してて、血も出てきたから大腸がんだと思ってた)、死ぬ前にひと花咲かそうと思って頑張ってた。

・ストレス解消で別のことするとそれもそれで罪悪感でストレスになってた

・常に勉強のことを考えないといけない気がした。

・成績自慢や人のことを見下しているアカウントが目にはいること(Twitter)

・ロースクールの人間関係の話がちょっと気になってしまうことで、勉強に取り掛かりづらくなった(頭に残って集中しづらい)(誰々が別れたとか)

・自分たちは成績がいいということを前提にした当然のハイレベルの話をされると、自分がバカだと思われていると認識してしまう。

・ゼミなどで議論すると、周りの議論がハイレベルに感じて、少しでもついていけていない感じを思えると、劣等感を感じる。

・内定をもらっている人、もうもらえる予定の人と話をしていると、司法試験の順位も考えたりと、将来の不安が大きくなるのが嫌。

・科目数が多く、勉強が間に合うか不安。

・周りの受験生のレベルが低いから、一人で頑張らないといけない孤独感

・周りに受験生がいないことなどで、司法試験の情報や就活の情報が入ってこない。

・社会人受験生については、これまでの地位を捨てて挑戦するので、失敗したときに不安がすごい

・社会人受験生は、受験のために収入が途絶え、これまでの貯蓄を消費して挑戦するので、先行きの不安がある。

・奨学金の返済(大学・大学院)で、結構な額になっているので、司法試験に失敗して法曹になれなかった場合の返済の不安。

・人間関係のトラブルに巻き込まれたり、勉強場所で保管していた私物(勉強道具等)が盗まれたりすることがあって、モチベ下がる

・毎日ローで勉強してて、ずっと変わらない毎日というのは嫌だった。家では勉強できないから、家→ローという変化をもたせてるつもりだった

・なんだかんだで時間が経つのは早くて、予定通りに進んでないことが多いから、かなりストレスだったな…

・ストレス:合格しないこと(司法試験複数回受験生)

・勉強を義務に感じて「やらなければならない」と常に思ってしまうこと

・人と話せないこと(言い換えると孤独感です。家にこもって勉強していたので)


いやあ…どれもうなずきすぎて、私の首がもげそうでした。もげたかもしれません。


どのストレスも「適度」なんて言っていいものではなく、みなさんこのストレスを抱えながら日々を過ごしてるんだなぁと思うと、頭が下がります。

その中でも、チョット待ってよ、と思ったものを話してみようと思います(再掲)


劣等感を覚えるストレス

・自分たちは成績がいいということを前提にした当然のハイレベルの話をされると、自分がバカだと思われていると認識してしまう
・ゼミなどで議論すると、周りの議論がハイレベルに感じて、少しでもついていけていない感じを思えると、劣等感を感じる

試験勉強については、周りにできている人がいると焦る気持ちは理解できます。

模試の結果などを見ると、ついつい自分の出来具合を周りと比較してしまうこともあるのではないかと思います。

やっぱり焦りは出ると思いますし、自分の不甲斐なさを感じることもあるのではないでしょうか。

しかし、司法試験は大学入試などとは違って点数が上位の方から順番に合格者が決まるものではなく、各科目の必要得点をとることだと思います。

自分がきちんと点数をとる、という意味では、周りと比較をするよりも、今日の自分より、明日の自分が少しでも知識が増えるようにしていくことの積み重ねではないかと思います。

そんなことはわかってたって?(パート2)

劣等感は、他人との比較の中で生じるものです。つまり、試験勉強をしているときに、劣等感を感じる人は、勉強以外に関しても、他人との比較の中で自分を捉えることが多くなっていませんか

周りと比較してしまうことをやめましょうというわけではありません。だって比較しちゃいますもの。人間だもの。

以前、考え方の癖について紹介をしましたが、劣等感を伴って物事を受け止める癖がある人は、そもそもストレスに感じやすい傾向があるかもしれません。

なので、他人の軸との比較にだけ意識を持っていくのではなく、自分を主軸とした物事の考え方も合わせもてると、自分の頑張りを認められるのではないかと考えます。

たまには立ち止まって、この1週間でどんな知識を得ることができたかなど、振り返ってみるのもいいかもしれませんね。

体調に不調が出るほどのストレス

・体調にも不調がくる(夜中や明け方に目が覚める等)

・2回目の時には、二度と落ちられないというプレッシャーがあった。それで胃腸の調子を崩してて(3ヶ月くらいずっとおなか壊してて、血も出てきたから大腸がんだと思ってた)、死ぬ前にひと花咲かそうと思って頑張ってた。 

ヤーキーズ・ドットソンの法則でもご説明した通り、体調不良や睡眠に影響が出ている状態は、ストレス度としてはやや高杉くんです。

体調が悪いと、そもそもの自分の実力が発揮しきれない可能性もありますので、体調不良が2週間以上続くようであれば、内科などを受診してみるのもひとつです。

特に、睡眠の乱れは「知識を記憶に残すこと」にも影響を与えます。

睡眠や気持ちの乱れ、緊張しすぎによる動機や過呼吸などがある場合は、一時的に心療内科の受診なども視野に入れてみてください。

ストレス解消をしないということ

・ストレス解消で別のことするとそれもそれで罪悪感でストレスになってた
・常に勉強のことを考えないといけない気がした。

司法試験のように難易度も高いようなものは、試験自体が与えるストレスが非常に強く、長期間の集中力が求められがちです。

そのため、ストイックにやり過ぎようとすると、かえってパフォーマンスが悪化する場合があります。

難易度が高いものもを目標とするような場合は、ストレスを下げるような調整もときに必要です。

頭で理解しつつも、罪悪感を抱いてしまうことはあるかもしれませんが、罪悪感でさらにストレスを高めてしまい、余計にパフォーマンスが下がって、頑張ろうと思ってストイックな目標を立てて、うまくいかなくて…と悪循環に陥ってしまうことも少なくありません。

なので、まずはいい循環を生み出すために、不要不急なストレスは解消したり休息をしたり自分のストレスを最適化するような意識もぜひ大事にして欲しいと思います。

もし、ストイックにやると決めた時には、期限を定めること、その後にきちんと休息を取ること、という2点を忘れないであげてください。


番外ストレス

・模試の成績の確度が低い(成績が高くても、合格するわけではない。模試の成績と司法試験の合格・順位に関係性は低い)

これは、ストレスでもあるかと思いますが、非常に現実検討がされている内容と思いました。
現実検討ができるからこそ、不安や焦りも感じるかもしれませんが、現実的な検討ができることは、その対策を立てることもできることにつながるので、この視点は案外重要ではないかと感じました。
 
・人間関係のトラブルに巻き込まれたり、勉強場所で保管していた私物(勉強道具等)が盗まれたりすることがあって、モチベ下がる

いや、そりゃ、モチベーション下がりますし、大変でしたね…。なぜか運命のイタズラのように、大変な出来事が重なってしまうこともときにあります。そんなときには、いつも以上に自分のことを労ってあげることを忘れないであげて下さい。

今は、人間関係が落ち着かれていることを切に願います。。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

Amiの記事にも登場するおなじみの(?)ウシ弁さんも、こんなストレス状況を切り抜けて弁護士になられたんですね。

これから司法試験を目指す方、また、その他の試験を目指す方にも通じるお話となったのではないでしょうか。

これから大事な時期となると思います。

自分のストレス状態を分析し、自分にとって高すぎず、低すぎないストレスはどの程度かを考え、ストレス状態を微調整しながら、8月の試験まで走り抜けてください。

夏(ストレス)を制するものだけが、
恋(司法試験)を制する
もう覚悟を決めちゃって

とTM.Revolutionが歌っていますね。
(奇しくもこの歌のタイトルHIGH PRESSUREでしたね)

プレッシャーを上手にコーピングして、あたり前田のクラッカーを食べて、
合格を当たり前にしていきましょう!!

ちなみに、第1回公認心理師試験の頃には、ブドウ糖入りのラムネ が一部Twitter上で流行っていたのをみたような気がします。

心理職も何かにすがりたくなるって感じですね。


(書き手:公認心理師・臨床心理士)


※困りごとには個人差もあります。困りごとをとらえる視点も様々であり、本記事はあくまで視点のひとつです。
ご自身のことで思い当たることがあったりする場合は、公認心理師や臨床心理士など心理の専門家の人に相談してみてください。なお、当団体が直接ご相談をお受けすることはできませんので、ご理解いただきますようよろしくお願いします。


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